天庭 -People of the star- / 閣下
リメイク元:音芸神話 ~The music myth Creation~
作者:DIT
http://estar.jp/.pc/_novel_view?w=7680838
雲一つない空。
そこには星々が常に輝き星を見下ろす。
噂の青い惑星とは異なり、広がるは砂の大地。
そこにも文明は生まれ、発展し、そして生きていた。
すぐ近くにいるようで、そこにいない。
そんな生き物たち。
青き星の影に位置するその星には、光からあぶれた意識や感情を受け止める存在がいる。
声が通りやすいようにと、真っ直ぐ頭頂から伸びる口。
物事を直視するかのような単眼。
およそ"人間"と呼ぶことの出来ないその姿。
けれども彼らは名乗る。
"星のひと"と。
ここは"星のひと"の楽園……なのだろうか。
おどろおどろしい雰囲気が漂う。
それでも彼らは口を歪めて笑うかのように過ごしていく。
口はあれど会話はなく、目はあれど何も見ず。
何のために器官が付いているのか彼ら自身にも分からない。
文化があるようでないような、"星のひと"の星。
それでも彼らにとって、ここが楽園であることは間違いない。
何故なら彼らはこの星しか知らないのだから。
…ガシャン。
何かが大地に転がる音。
硬く金属で出来た塊が、星に突如現れた。
一人の"星のひと"がそれに気付く。
こうして何かが転がってくるのは、何もこれが初めてではない。
これまでにも柔らかい金属の筒や、足の付いた木の板など様々なものが転がってきていた。
"星のひと"はそれらを拾い、時には分解し、時には並べてみたりとまるでおもちゃでも見つけたかのように遊ぶのだ。
おもちゃがどこからやってくるのかは分からない。
ただひとつ分かるのは、どれも薄汚れていて汚いということ。
"星のひと"らには何の関係もない。
遊べるものなら何でもいいのだ。
転がってきた塊に手を伸ばす。
よく見れば、塊からは尻尾が生えている。
おもむろに彼は尻尾を掴んでみたが、特に反応はない。
なんとなくどこかに差し込めそうな形状をしているが、それを差し込む場所はこの塊には見当たらなかった。
仕方がないので、彼は塊を抱えてみる。
このままどこかへ運んで分解でもするのだろうか。
「重たい」
少し重たいのかよたよたと彼が歩き始めた瞬間、これまで耳にしたこともないような音が飛び出した。
流石に彼も驚き、塊を落としてしまう。
――プツン。
短い音を発したきり、今度はしんと黙り込んでしまった。
彼は何が起きたのか分からなかった。
塊を叩いてみても蹴ってみても、先ほどの音は出てこない。
一体なんだったのだろう。
やはり分解するしかないのだろうか。
そう考えたのか、彼は再び塊を抱え込む。
「重たい」
抱え上げた瞬間、また音が飛び出した。
今度は落とさなかった。
彼は塊をぐるぐると回して、どこから音が出てきたのかを探った。
すると塊の一面がぼんやりと発光していることに気が付く。
どうやら音はこの光と共に発生したらしい。
今はヴーと低く唸るような音だけがずっと鳴っている。
もう一度先ほどの音を聞きたいのだが、どうしても出てこない。
彼は舐めるように揺れる光を見つめたり尻尾を触ったりしてみたが、やはりさっきの音は出てこなかった。
なんとなく苦しそうな音だったと、彼は冷静に分析する。
しかしそれ以上は何も分からない。
「分からない」
ようやく音が飛び出した。
先ほどとは少し感じの違う音だったが、同じ系統の音なのは分かった。
少し満足げに彼は頷くと、やっぱり分解するために再び塊を運び出した。
「面白い」
その矢先、音と共に塊が彼の腕から消えた。
いや、奪われた。
どうやら別の一人が音を聞きつけて興味を持ったらしい。
彼の腕から奪った塊をまじまじと眺めては、満足そうにほくそ笑む。
彼はこれまでに聞いた音と違う音に少し興奮を覚えながらも、もう一人に塊を奪われたことを不愉快に感じた。
「嫌」
そして今度は彼が塊を奪い取る。
同時にまた新しい音が飛び出してきた。
今度は強い感じを受ける音だった。
なんだか聞いていて心地の良い音ではなかった。
「ずるい」
また奪われる、と同時に新しい音。
もしかすると奪うごとに新しい音が飛び出すのでなはいだろうか。
なんとなくそう考えた彼は、再度もう一人から奪い返した。
「……」
しかし今度は何も出てこなかった。
「ずるい」
何度も奪われる。
新しい音も出てこない。
これ以上この塊には何もないのかもしれない。
段々と興醒めしてきた彼は、やはり分解すべくもう一人から塊を奪い返すとよたよたと歩き出した。
しつこく伸びるもう一人の腕。
奪われても進展はないと学んだ彼は、その腕を躱す。
それでもいつまでも伸びてくる腕に沸々とした何かを覚えた彼は、おもむろに塊を掲げた。
「うざい」
新しい音だ。
つい嬉しくなったのか、彼は塊を降ろし観察してみることにした。
「………い…た……い…」
途切れ途切れに何か音が聞こえた。
よく聞き取れなかった彼は、どんな音だったのか確認するために今と同じ動作を二度三度繰り返してみた。
「……」
しかし今度は何も聞こえない。
不思議に思った彼は塊を再度ぐるぐると調べる。
すると先ほどまではなかった、何かねっとりしたものが付着していることに気が付いた。
見慣れないもの。
そこではっと彼は気が付く。
ついさっきまで伸びてきていた腕が見当たらないことに。
辺りを見渡すが誰もいない。
とりあえず塊は確保出来たことは確かなようなので、彼は移動を再開することにした。
ねちょ。
それもまたすぐに中断されてしまう。
どうやら何かを踏んだらしい感触。
彼が足元を確認すると、そこにはもう一人が横たわっていた。
頭部からは何かねっとりしたものが溢れ出ている。
なんだか塊に付着していたものに似ている。
恐らくこの塊をぶつけてしまったのだろう。
もしかすると、この塊をぶつけるとさっきは聞き取れなかった音を聞けるのではないか。
考えるまでもなく彼は再度塊を振りかざし、もう一人目掛けて振り降ろした。
「……」
しかし塊からは何も聞こえない。
一人からは一度しか聞けないということだろうか。
試す価値があると判断した彼は、他の"星のひと"を探してよたよたと塊を抱き締めて歩き出した。
結局、彼はその音を聞くことは出来なかった。
全ての"星のひと"に試してみたが、やはり途切れ途切れだったり、そもそも音が出なかったりと聞き取れる音は出てこなかった。
たまに若干異なる音も聞こえてはいたが、その音も不安定で彼を満たすには至らなかった。
またもや湧いてきた沸々とした気分の中、まだもう一人試していない"星のひと"がいることに彼は気が付く。
早速彼は、塊を振りかざし……
――プツン。




