Line 4 Ruin / Ryu☆
「……もしもし」
そっと発言する。
この小さな機械の向こう側にあなたがいると思うと、少しドキドキする。
向こうではどのくらいの時間が経ったのだろう。
今の私には話題を絞り出すことが出来そうもない。
ついつい黙りがちになってしまわないか、不安も割とある。
でも、やっぱり嬉しい。
こうしてあなたともう一度話せるなんて、思ってもいなかった。
諦めていた訳ではない。
ただ単に、そういうものなのだと理解したつもりだった。
以前の私ならまず間違いなく信じられないだろう。
だから私は、これは奇跡なんだと、そう思った。
「なんだ、泣いてるのか」
……馬鹿。
泣いてるのはあなたの方。
顔が見えなくたって声で分かる。
お互い様。
この奇跡はいつまで続くか分からない。
今のうちに沢山話そう。
けれどなかなか言葉が紡げない。
もどかしくてもじもじしてしまう。
彼もそれは同じようで、なんだか歯切れが悪い。
なんだか可笑しくなって、思わず笑ってしまった。
そしたら彼もつられて笑っていた。
言葉なんかいらないなんて言わないけれど、たまにはこういうのもいい。
泣いたり笑ったり。
悲しい訳でものなく、虚しい訳でもなく。
嬉しさと懐かしさが私たちに覆いかぶさるよう。
私はゆっくりと立ち上がると、今まで腰かけていた木を見上げた。
相変わらず灰色に染まっているけれど、なんとなく色味を帯びているように見える。
きっと私の心がそうさせているのだろう。
木漏れ日が私を射抜く。
眩しさに目を細めてはっと気が付く。
「ここはいつも気持ちのいい風が吹いてたよな」
機械越しに彼が言った言葉に、私は言葉を失った。
木が、ざわついている。
風に揺られた枝葉が揺れ、木漏れ日がゆらゆらと形を変える。
今まで一度もこんなことはなかった。
風なんて吹くはずがなかった。
日射しが眩しいなんて感じるはずがなかった。
「なぁ、見えるか」
「今年も桜が満開だぞ」
「……お花見、出来たな」
今あなたがどこを向いて立っているのか、私には分かる。
私は彼の傍らに立ち、街を見下ろした。
「……うん、ありがとう」
悠然と立つ木。
その木が立つ丘には、ただ桜色の風が吹くばかり。
いつしかそれも白く染まり、全ての境界は失われていった。
二人分の足跡を残して。




