表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
音芸神話 - yukito's side story -  作者: 七海 雪兎
第 章 -reconstruction-
49/69

person:Dream / Rabpit


コンサートが始まった。

緩やかな君の音色と、私の奏でるモノクロの旋律が交わる。

こうして二人で演奏できるのも、もうこれで最後。

だから私は指先に魂を込める。

想いを込める。


今までありがとう、と。


視界が滲む。

感覚が震える。

でも大丈夫、まだ大丈夫だから。

音色も旋律を信じている。

だからブレない。

私も自分のこの指を信じている。


楽譜は私の頭の中にある。

モノクロは私の手の中にある。

リズムは私の心の中にある。


観客がざわつくのが聞こえてくる。

きっと私はふらついているのだろう。

意識も朦朧としている。

でもまだ。

まだ倒れちゃいけない。

こうして君と奏でるのを、ずっと夢見続けてきたんだ。


まだ夢見心地でいさせてくれ。


音色はブレない。

だから旋律もブレない。

次第に雑踏も彼方へと消え、聞こえるのは二つの音だけ。

音のひとつひとつが輝き、私たちを包んでいく。

これは祝福だろうか。

幸福だろうか。


どちらでも構わない。


音が虹のように輝き、泡のようにはじけ、霧のように消えていく。

まるで夢のように。


私は夢を叶えることが出来た。

すぐにでも割れてしまいそうな夢。

この一瞬のために生きてきた。

だから私は満足だ。

君は、どうだろう。

君も満足だろうか。

君の夢は、叶っただろうか。


白く濁った視界の先で、君は涙していた。

目を閉じ、音色に魂を込めるように抱き締めていた。


君の未来に、私は行くことが出来ない。

思えば過去にも行くことは叶わなかった。

もっと君と話したかったな。

もっと、君と奏でたかったな。


モノクロに青い波紋が広がっていく。

私は君のように視界を閉ざし、ひたすらに全てを注いだ。


もうすぐだ。


もうすぐで終わる。

このコンサートも。

私も。

幼い頃から親友だったこのモノクロも。

君との演奏も。


夢も。


なにもかも。


後悔はあるだろうか。

未練はあるだろうか。


たくさんあるだろう。

でも、いいんだ。

私は満足したのだから。


ありがとう、こんな私の夢のために。


私の指が、最後の白に触れる。

この指が離れるその時まで、しっかりと君は奏でてくれるのだろう。

私はそんな君に拍手を送りたい。

そして手を繋いで、一緒に観客にお礼がしたい。

でもまだ離したくない。

まだ覚めないで欲しい。


最後の最後に欲が出てしまった私を、君は笑ってくれるだろうか。

馬鹿だなと、そう言ってくれるだろうか。


後ろ髪を引かれながらようやく指を離した時、そこにはもう誰もいなかった。


静かに一人分の拍手だけが、私を抱き締めてくれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ