re:meme / Zektbach
最初、そいつはただ蠢くだけのものだった。
名はなく、姿もなく、意思もなく。
何に干渉することもなく、何かに影響されることもなく。
そこにあるだけの存在。
何色にも染まるし、何色も持ち合わせてはいない。
とても曖昧で、それでいてしっかりと輪郭は持っている。
いつしかそれは、私だった。
名もあり、姿もあり、意思もある。
何かに干渉し、何かに影響される。
そこにある存在。
何色に染まることもないし、私という色を持ち合わせている。
とてもはっきりしていて、だけれどその輪郭は曖昧。
いつしかそれが、私だった。
初めて自覚したのは、恐らく産み落とされてから。
それ以前に私はなく、そいつがそこにはいた。
何も私が特別な存在だと、そう言いたい訳ではない。
君も。
君もそうだったのだ。
思い出せるだろうか。
深い海の底で、ただじっとしていた時のことを。
私は、覚えている。
もしかしたら私は君だったかもしれない。
もしかしたら君は私だったかもしれない。
私たちはそんな存在だったのだ。
さあところで、私が君に語った物語は覚えているだろうか。
これからも君は長い旅を続けるのだろう。
そして新たな出会いと別れを繰り返し、様々な言葉を交わすのだろう。
その時どうか、ひとつまみでもいい。
彼らを思い浮かべてやってくれ。
何もその口から語らなくったっていい。
君が彼らに感じた何かを、今度は君が伝えるのだ。
遺伝子に寄り添って、意識と共に眠るそいつを。
君が今まで築いた、そしてこれから築くであろう繋がり。
その繋がりの向こう側。
いつしかそこに、そいつは到達するのだ。
そして再び君の元へ、私の元へと返ってくる。
私はそれを楽しみにしている。
同時に、期待している。
私には解き明かせなかった、そいつの正体。
全てのモノの根源、原初。
それが明らかになる、と。
なに、君に託すわけじゃない。
遠い未来のどこかで、きっと私が明らかにする。
だから、それまで預かっておいてくれ。
そいつを。
もう行くんだろう?
すまなかったな、引き止めて。
君が再び私の元を訪れる時を、楽しみしているよ。
それではまたいつか、どこかで。




