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音芸神話 - yukito's side story -  作者: 七海 雪兎
第四章 -collapse-
28/69

perditus†paradisus / iconoclasm


全てがまるでスローモーションのよう。

崩れ落ちる瓦礫の雨。

私はそれを呆然と眺める。

奴らだ。

性懲りもなく、奴らが私たちの土地へと足を踏み入れたらしい。


ふざけるな。

そこは貴様ら人間風情が好きにしていい場所ではない。

なんて怒っている風に思ってみたり。


私は飛翔する。

幾重にも降り注ぐ天空の欠片を躱しながら。

高速で飛ぶのなんざ慣れている。

奴らを狩るのは別にいつものことだ。


土。

木。

煉瓦。

ガラス。

石。

そして銃弾。


なんて笑える。

そんな玩具で私たちと戦おうなど、笑わせるのもいい加減にしろ。


銃弾が頬を掠める。

少し出血したのがわかる。

それを一舐めしたところで、私はこの地へと帰還した。

なるほど、奴らの死体がたくさんある。

それ以上に存在するギラつく瞳が、私の体を貫く。

貴様らはここが「楽園」だと本当に信じて疑わないのだな。

いつ誰が書いたのかわからない文献に惑わされて、それで多くの命を失うのだから。


鐘の音が響く。

「遊んでやれ」

そういう指示だ。

全く今更な指示だ。

私の体は既に、銃弾の波の中だというのに。

メロディのように鳴り響く鐘の音と奴らの雄叫びと共に、私は再び宙を駆けた。


敵の数、無数。

味方の数、私のみ。

ははは、ハンデにしては軽すぎる。

格の違いっていうのを見せてやるよ。

って、それももう何度目かな。


前方から途切れることなく降り注ぐ雨。

私はその隙間を縫って進む。

1秒もいらない。

一歩も引かない奴らの先陣の息の根を、通り過ぎるついでに刈り取る。

そのまま敵中に突っ込むと、今度は槍でのお出迎え。

槍はリーチが長いから、近寄らせないように戦える。

うん、素晴らしいね。

でも、この密度で繰り出せる技は点のみ。

そんなの銃弾と何も変わらない。

速度なんて比べるまでもない。

どうせどっちも底辺の評価しか得られないんだから。

律儀に突き出された順番に槍をへし折る。

軽い軽い。

折れた部分もそれだけで凶器になりうるが、それは人間のお話。

私には関係ない。


周囲の槍はあらかた折り終えたので、辺りに散らばった槍の先端でサッカー遊び。

ゴールは頭?

お情けで体でも得点にしちゃおう。

そら1点。

もう1点。

そうやってどんどん加点していく。

50点数えた辺りでふと気が付いた。

そうか、相手の得点方法考えてなかったな。

まあいいか、丁度飽きたところだ。

次はどうやって狩ってやろうか。

思わず舌なめずりしてしまう。

既に戦意を失くした者が結構いるようだが知ったことではない。

私は狩りを続行することにした。






「楽園」

それは理想の世界。

誰もが苦しみを抱くことなく過ごせる世界。

「楽園」へ行った人間は二度と戻ってくることはないという。

そりゃそうだ、そんな素晴らしい所なら戻ろうなんて思うはずがない。

しかし遥か昔、戻ったことのある人間がいるらしい。

その人物は当時ただのお伽話とされていた「楽園」を現実にした。

そして話だけでは信じてもらえないをわかっていた彼は、「楽園」から木の実を持ち出していた。

名前もわからぬ木の実だが、不思議と食べてみたくなる魅力があったそうだ。

ところが彼は食べてはならぬと強く主張した。

再び「楽園」へと返すことを、向こうのモノと約束したからだ。



その約束が叶わなくなったのは、それからたったの数日後のことだ。

少しくらい齧ったって問題ないだろうと周囲の人々に言われ続けた彼は、誰かに渡すくらいならと自分でその実を齧ったのだ。

瞬間、彼の体が震える。

なんて美味しい木の実なんだろう。

美味という感情だけが彼を支配する。

それが全身から伝わったのか、周囲の人々はゴクリと唾を飲み込むと我も我もと木の実に飛びついた。

瞬く間に無くなる木の実。

口にした者は彼のように震え、出来なかった者はそれをじっと見つめる。

そして何を思ったか、一人が口にした者の腹を抉り出し始めた。

悶絶しながらも、それでもなお体を震わせる。

一人は腸を食いちぎり、同じように震える。

それを見た人々は、今度は腸の中にあるであろう木の実を求め始めた。

狂ったように。

お互いがお互いを食し、一体そこに何人いるのかわからない。

最後には泥のような血だまりがそこに出来上がっていた。


そんな様子を遠くから見ていた者たち。

木の実を欲しはすれど、彼らほど狂ってはいなかった。

あくまで冷静に。

「楽園」へ行けば、あの実が手に入る。

そう信じて「楽園」へと旅立っていった。




時同じくして、約束が守られなかったことを知った「楽園」のモノたち。

この「楽園」に多くの人間どもがやってくるのは目に見えている。

あの木の実を求めてやってくる。

もし奴らが木の実の誘惑に負けることなく約束を果たしていたら、ここは間違いなく「楽園」であっただろう。

しかし約束は破られた。

元々自分たちより下等な生き物だ。

例え娯楽の対象になろうと、友好な関係になろうとどうでもいい。

いずれにせよ、暇つぶしにはなるだろう。

あの木の実が遺伝子から抜けない内は、ね。


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