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音芸神話 - yukito's side story -  作者: 七海 雪兎
第三章 -expander-
20/69

CaptivAte ~裁き~ / DJ YOSHITAKA -其の参-

・・・っ、落ちる。

そう考える前に私は手を差し伸べ彼女に飛びついた。

恐らく意識を失ったのだろう。

ここ数日眠れていなかったのを私は今更思い出した。

いや、昨晩は寝たものだと勝手に思っていたのだ。

私の手が彼女の腕をギリギリ掴んだ。






動いたのは私の意識だけだった。

身体は未だに一歩も動けていない。

私は安堵したのだ。

彼女が失われるというのに。

安堵してしまったのだ。

その一瞬は彼女を引きずり降ろすのに十分な時間だった。




落ちる。




私の口から、ようやく雄たけびのような悲鳴が零れ落ちた。











―――――。




沈む。

私の身体は浮くことなく、海の底へと向かっていく。

私の意識はいつだってはっきりしていた。

ただ身体の自由が利かないだけ。

こんな風になってしまったのは、やはりあそこから連れ出されたからだろう。

あの人を責めるわけじゃない。

私がいけなかったのだ。

人を愛することなんて、許されるわけがないのに。

あぁ、どうか。

どうかあの人だけは許してください。

ただ純粋に、あの人は私を愛しただけなのです。

だからどうか・・・・・・。






夜が明けても彼女の身体は見つからなかった。

あれから船員を呼び出し、必死に姿を探したのだが見つからない。

船員は既に諦めムードで、今では私だけが彼女の影を追っている。

無理を言って救命ボートを降ろしてもらい、私一人で捜索を続ける。

手には発煙筒。

ここから少し離れたところに陸地があるらしく、しばらく見張っているからと言われて持たされた。

しかし私はこいつを使う気はさらさらなかった。

私のせいだ。

彼女が気を失うようになったのは、あそこから連れ出してからだった。

それまでは至って普通の女性だったのだ。

私は腕を伸ばす。

彼女がいる海に。


待っててくれ、今すぐ向かうから。






―――――。




ここからはよく空が見える。

正確には空模様と言うべきか。

海というプリズムを抜けて見える空は、まるで子供の落書き。

白い紙に青でべったりと絵の具を垂らしただけのような、そんな絵。

私はその絵を書いたのが誰かを知っている。

知っているからこそ恐れた。

だから、願った。

今の私にはそれしか出来ないから。


あの人を助けて。


ただそれだけを。

身が千切れそうな痛み。

意識を掠める苦しみ。

こんな思いを味わうのは私だけでいい。

この罪は、私だけが罰を受ければいい。




......


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