CaptivAte ~裁き~ / DJ YOSHITAKA -其の参-
・・・っ、落ちる。
そう考える前に私は手を差し伸べ彼女に飛びついた。
恐らく意識を失ったのだろう。
ここ数日眠れていなかったのを私は今更思い出した。
いや、昨晩は寝たものだと勝手に思っていたのだ。
私の手が彼女の腕をギリギリ掴んだ。
動いたのは私の意識だけだった。
身体は未だに一歩も動けていない。
私は安堵したのだ。
彼女が失われるというのに。
安堵してしまったのだ。
その一瞬は彼女を引きずり降ろすのに十分な時間だった。
落ちる。
私の口から、ようやく雄たけびのような悲鳴が零れ落ちた。
―――――。
沈む。
私の身体は浮くことなく、海の底へと向かっていく。
私の意識はいつだってはっきりしていた。
ただ身体の自由が利かないだけ。
こんな風になってしまったのは、やはりあそこから連れ出されたからだろう。
あの人を責めるわけじゃない。
私がいけなかったのだ。
人を愛することなんて、許されるわけがないのに。
あぁ、どうか。
どうかあの人だけは許してください。
ただ純粋に、あの人は私を愛しただけなのです。
だからどうか・・・・・・。
夜が明けても彼女の身体は見つからなかった。
あれから船員を呼び出し、必死に姿を探したのだが見つからない。
船員は既に諦めムードで、今では私だけが彼女の影を追っている。
無理を言って救命ボートを降ろしてもらい、私一人で捜索を続ける。
手には発煙筒。
ここから少し離れたところに陸地があるらしく、しばらく見張っているからと言われて持たされた。
しかし私はこいつを使う気はさらさらなかった。
私のせいだ。
彼女が気を失うようになったのは、あそこから連れ出してからだった。
それまでは至って普通の女性だったのだ。
私は腕を伸ばす。
彼女がいる海に。
待っててくれ、今すぐ向かうから。
―――――。
ここからはよく空が見える。
正確には空模様と言うべきか。
海というプリズムを抜けて見える空は、まるで子供の落書き。
白い紙に青でべったりと絵の具を垂らしただけのような、そんな絵。
私はその絵を書いたのが誰かを知っている。
知っているからこそ恐れた。
だから、願った。
今の私にはそれしか出来ないから。
あの人を助けて。
ただそれだけを。
身が千切れそうな痛み。
意識を掠める苦しみ。
こんな思いを味わうのは私だけでいい。
この罪は、私だけが罰を受ければいい。
......




