卑弥呼 / 朱雀 VS 玄武
それはお告げだった。
「滅せよ」
ただその一言で私は全てを理解した。
私たちは滅ぶべき運命にあるのだと。
20XX年。
世界は未曾有の大災害に見舞われた。
空は陰り、時折走る稲妻が辺りを照らす。
うねる海原。
地震によって割れた道路。
嵐に巻き込まれて宙を舞う木の葉。
火山灰に沈んだ家屋。
ノイズしか映さないテレビの前で、私は震えながら救助を待っていた。
外は洪水で動けず、既に一階は浸水してしまった。
一体どうしてこんなことに・・・。
何が起こったのか思い出すことすら出来ないぐらい、一瞬の出来事だった。
とにかく、生きねば。
窓から灰色の空を眺めていると、一台のヘリが回っているのが見えた。
この強風でよく飛ぼうと思ったものだ。
恐らく長くは持たないだろう。
私は自分の居場所を知らせることなく目を伏せた。
どうせ死ぬんだ。
何をしようと無駄。
そう思い込もうとしても、生への執着は薄れない。
どうしてだろう。
こんな絶望の中で、自分はまだ生きたいと願っている。
種としての本能がそうさせているのだろうか。
・・・ザザッ。
不意にテレビのノイズがざわついた。
その音に驚いた私は、テレビを見つめる。
少しずつノイズが薄くなっていく。
どこかの局が息を吹き返したのだろうか。
映っていたのは避難所。
時計もテロップもなく、淡々とその様子を映していた。
・・・配給か何かだろうか。
みなパンや牛乳らしきものを持っている。
カメラが徐々に動く。
それと同時に音声がわずかに聞こえ始めた。
・・・・・・。
聞こえてきたのは怒鳴り声。
どうやら食料の奪い合いをしているようだ。
喧嘩の様子が映し出されると、私は思わずテレビから目を逸らした。
それは血。
網膜にこびり付くような赤。
見てしまった。
あれは明らかに死体だった。
奪い合いに負けた者なのか、配給者だったのかはわからない。
人の形をギリギリに保っていたのが余計に残酷だった。
・・・ザザッ。
再びノイズ。
頭が痛い。
テレビは目まぐるしく映す場面を変えている。
まるで廃墟のようなコンビニ。
こじ開けられたシャッター。
刃物。
赤いビニール袋。
ぐったりと横たわる人々。
燃える国旗。
見覚えのある肉片。
あらゆる国の現状を、テレビは映し出す。
あぁ、頭が痛い。
耳がガンガン鳴っている。
そしてテレビが私の後姿を映した瞬間、私は意識を失った。
・・・・・・ここは、どこ?
暗い。
かすかに木の香りがする。
辺りを見回そうとした瞬間、周囲に炎が灯った。
「よくぞ参られた」
女の、声。
それも老いた女性の声だ。
私は声の主を探す。
しかし見当たらない。
「我は日の御子なり。
我が遺志を継ぐ者よ。
汝、我に代わりて高天原を治めよ」
その瞬間私は悟った。
自分がやるべきことを。
自分があるべき所を。
目が覚めた時、私は空にいた。
そこからは世界を一望出来た。
風が私を撫でる。
さあ愚かなニンゲンよ。
我が国を汚した罪。
その身を以って償うがいい。




