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私的幽霊に対する原始的観察

 彼が私と出会ってから数日が経過した。

 彼には名前を付けなければならない。彼を呼ぶ時に、また特に彼の事を他の人に伝えるために名前が必要だと思った。

「市瀬、今日は研究室に行かないの?」

 そう言いながら彼はその顔を私に近づけてきた。顔を逆さまにして上から私の顔を覗きこんでくるのである。



 「彼」とは「彼」である。伝承などに出てくるような、むしろ今のご時世でもあらゆる作品に登場するような、人の形で幽霊のような形態をした『何か』である。

 私は彼を「幽霊」とは断言しない。幽霊というものの定義は広いが、彼の生態はその「幽霊」という定義から外れる程に特異である。しかし一方で所謂幽霊と似た点も多く見出す事ができる。

 幽霊を連想させる彼の性質とは、一つ目は彼の姿が半透明であること、二つ目は宙に浮かぶこと、三つ目は壁を透過することである。しかしそれ以上に、彼には世間一般的な幽霊の定義から外れる要素を抱えている。こちらの方は実例を挙げるのに事欠かない。

 まず最初に、彼は私にしか見えなく、彼の声は私にしか聞こえない。これらは私の側の問題が絡んできている可能性がある。この可能性を明らかにする為に後日心療内科にでも行ってみるつもりである。また、彼は物体に干渉する事ができる。視覚があるのか彼は色を感じる事ができるし、触覚により柔らかさや硬さなどを知ることができる。聴覚もあり、音を認識できるようだ。一方で、味覚はない。半透明であるが故か、食べるという行為を行うことができない。味覚が無いのにも関わらず、嗅覚は存在するようで、出店の匂いに誘われていつの間にか側に居なくなっていたりする。



 一体どのような現象が元となって、彼のようなものが存在しうるのか、それが私が今最も関心を寄せているものである。出来ることなら物理的な実験を彼に対して行い、その謎を解明したいものである。

 ともあれ、まずは彼に名前を付けることから。その後彼への物理的なアプローチを試みようと考えている。

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