timeⅡ
部屋に入ると、その人はすぐに見つけられた。……というか遮蔽物のない部屋に見つけたもクソも無くて、何もないだだっ広い部屋の真ん中にポツンと人が立っているような状態だったんだけど。
赤毛に緑の瞳、レノとは打って変わってすらりとした長身モデル体型。片眼鏡の奥の瞳はその色も相まって落ち着きを感じさせた。名前も知らない宰相は、こちらを認めてにこりと笑う。
「お待ちしておりました」
「……お初に、宰相閣下」
着ていた服の裾を軽く摘んで、おざなりに挨拶する。そんなあたしに赤毛宰相は苦笑していたけど、睨みつけないだけ良いと思ってもらいたい。
「いえ、実は…。お初に、ではないのですよ?新代様」
「え?」
召喚の際と昨日、私も同席しておりましたので、と言って、赤毛宰相はにこりと爽やかに笑う。
………あぁどうしよう、会って間もないけど、あたしこの人苦手。わざわざあたしが暴れ狂ったときと逃亡未遂のことを持ち出してくるなんて、どう考えても皮肉か嫌味でしょう。
「あぁ、自己紹介が遅くなりましたね。私、ウィリアム・シザーズと申します。この国の宰相をしておりますので、何かご不便があった際は私に」
「わざわざご丁寧にどうも、わたくし…―由羅・V・ベルフレインといいます。新代様ではなくて、出来れば本名の方で呼んでいただけますか?」
「ええもちろん。ユラ様、ですか…。素敵なお名前ですね」
「………。お褒めに与り光栄ですわ」
ぞわりと背中を駆け抜ける寒気を必死に無視してそう答える。
慇懃無礼、という言葉がこんなに似合う人は初めて見た。きっと普通の女性ならメロメロになるであろうイケメンスマイルも、あたしにとっては気持ちの悪いものでしかない。とにかくさっさと話をすませようと、あたしは口を開いた。
「まず、言葉についてですが」
「あぁ、お気付きでしたか」
気付くに決まってるでしょうと言いたくなるのを必死にこらえて、ええと小さく頷く。
「最初にこの国に来たときには確かに言葉が分からなかったのですが……。今日グリフィード氏とお話させて頂いたときには、通じていたのです」
これはどういうことでしょうかと尋ねると、赤毛宰相――シザーズは微かに意味ありげに口の端を上げた。なんだと言及する前に、彼はあたしの問いに答える。
「いえ、新代様が言葉が通じないというのは、歴史上類を見ないことでしたので……。その発想には至らず対処が遅れましたが、昨日言語自動翻訳の魔法を掛けさせていただきました」
「なるほど、そういうことでしたのね。―――……では、その魔法、近いうちに解いていただけます?」
「……え、」
一瞬考えるように俯いて、それから顔を上げ言い放つと、シザーズはポカンと口を開けて目を瞬かせていた。あまり突飛なことを言ったつもりもないあたしは、その顔を見て眉を寄せる。
「……理由をお聞きしても?」
「ええもちろん。――わたくし、例えその状況がどうあれ、他人に頼りきり、なんて耐えられないんですの。この世界の言葉も、まさか発音形態から違うなんてことはないのでしょう?それなら、自分で会得したいと思いまして。……ただ、今解いてしまうと会話に支障がありますから、近いうちに、と言いましたのよ」
「………」
「とんだ高飛車女だなァ」
黙り込むシザーズの代わりにそんな声が聞こえて、あたしはパチパチと瞬きをする。ぐるりと部屋を見渡すが自分とシザーズ以外の人影はなく首を傾げていると、シザーズのそばで何かが動いた気がして目線を戻した。
「……あら」
「こりゃまた随分な美人だが、高飛車なのはいけねェ。女は愛嬌だぜ、嬢ちゃん」
それにしても、これほどのべっぴんはドレーヌ以来かァ?と顎をさするのは……、謎の生物。全身真っ黒い服に皮っぽい翼、サイズは大体15㎝前後で見た目は普通に人間っぽく髭も生えていてたぶん男、割と気色悪い。それが、シザーズの脇でふわふわと浮いていた。
思わず凝視してしまうが、本人(?)もシザーズも気付いていないのか説明はない。戸惑っていると、ばっちり視線のあった謎の生き物が、お?と小さく言葉を発した。
「おいおい、なんだ嬢ちゃん、俺が見えてんのか?―――って、うわ、あんたスゲェ魔力だな」
色んな意味で将来が楽しみだ、と上から下まで舐め回すようにあたしを見るそれを、よく分からないがとりあえず踏みつぶしておいた。……生きていると思う。たぶん。
「……夢魔が、見えている?」
ようやく復活したシザーズが、それだけ呟いて目を見開く。そうか、あの生き物は夢魔って言うわけね。
「あの黒い生き物のことかしら」
首を傾げると、シザーズはどちらかというとあたしに説明するというより独り言か譫言のようにぽつりと続けた。
「あれは、通常契約者か現魔王、または夢魔本人が自ら姿を表さない限り存在すら感知できないものなのですが……」
「――…俺はなんもしてねーぜェ?」
つかむしろされたんだっつーのォ!と、いつの間に靴の下から這い出たのか、夢魔は頬を膨らませた。特に可愛くはない。
「ぶ、く、ふははははは…!」
蔑んだ目で夢魔――クロスという名前らしい――を見ながら蹴り飛ばしていると、突然笑い声が上がってあたしとクロスは思わず固まった。びっくりして声を辿ると、もちろんその先には、
「え、と、あの……シザーズ、さん?」
「はははははは…。あ、ハァ、はい、なんでしょう」
涙を拭きながらこちらを見るシザーズに、なんと言うか、ドン引きする。突然笑い出すなんて、一応まともだと思っていたのだが頭は大丈夫だろうか。
「あぁそうでした、ユラ様」
「は、はい…?」
「先ほどは何故“グリフィード氏”とお呼びになっていたのですか?この部屋に来るまでは、名前で呼んでいらしたようですのに」
ニコニコしながら告げられた言葉に、二重の意味で口元が引きつる。それはつまり、ドアの前での会話が聞こえていたということで、その会話が聞こえていたということは、
「……盗み聞きとは良い趣味をしていらっしゃる」
「ありがとうございます」
誉めてない。
ひくつく口元を必死に押さえていたつもりだったけど、やっぱり隠しきれていなかったのか、ふっと笑われた。
「――私、訳あって生を簡単に諦める人間が大嫌いでして。あの様な嫌味な態度を取ってしまったのです。言い訳にもなりませんが、」
やはり、“殺されるかもしれない”と言ったことも、聞こえていたらしい。そう悟って一瞬身構えたが、すみませんでしたと謝られた。大の男に頭を下げて謝られれば、さすがに多少慌てる。……飽くまで多少、なんだけれど。
「そこまで気にしていませんから、どうか顔を上げて下さい」
「そこまで、ということは少しは気になされていたのですね」
「………」
そこを突っ込まれるとは思わなかった。けれどはっきりした物言いは先ほどよりねっとりした皮肉さがなく、よっぽどやりやすい。……それでも、性格が苦手であることには変わりないが。苦い顔をしていると、シザーズがまた耐えきれないというように噴き出した。
「ふ、あはははは!いやはや、本当にあなたは面白い方ですね。殺されるのではないかと言うのに先を見越していて、魔力が高いのに神からの加護が弱く言葉が通じない。矛盾だらけで、実に面白い」
ふふ、と笑うシザーズの笑顔の訳が分かってなんとなく、少しだけすっきりした。と同時に魔力だとか神だとか分からない単語が多すぎて、ここに来た本来の目的を思い出す。敬語はもうフランクなものでいいだろう。
「……本題に入りましょうか」
「あぁ、――そうでしたね」
呟いたシザーズの顔がキリリと引き締まる。真面目な表情をすると更にその端正な顔立ちが際立った。
「まず、ここが異世界だという話……、到底信じがたいことだとは思いますが、ご理解いただけましたか?」
その問いに小さく首肯すると、シザーズはそうですかと言って緩く息を吐いた。安堵の吐息か、落胆の吐息か。分からないけれどイマイチ良いものではないように感じた。
「何からお話するべきか……。とりあえず、あなたが何のためにこの世界へ呼ばれたのか、取り急ぎそれをご説明しましょう。あぁ、立ったままもなんですから、――こちらに」
そう言って、シザーズが軽く指を鳴らすと、召使いが飛んでくる……訳ではなく、何もない空間からイスが二脚現れた。というか、多分どこかから呼び寄せたのだろうけど、速すぎて視認できなかった。そして何だか静かだと思ったら、クロスは黒い短剣になってシザーズの腰のベルトに刺さっていた。なんで分かったかというと、その短剣から出ていたオーラがクロスと同じだったからなんだけど。
「…………え?」
「どうかしましたか?」自分自身の思考に違和感を感じて呟くと、不思議そうに眉を寄せたシザーズがこちらを見ていた。若干心配そうな色が混じる声に気付いて何でもないと首を振り、大人しく進められたイスに座る。
昨日も色々と見たけれど、魔法っていうのは便利なものだ。まぁそれが魔法だともまだ説明はされていないが十中八九そうだろう。なんてファンタジー。
「さて―――この国の名は、ラムサ王国といいます」
今は、ね。と続いたシザーズの言葉に、首を傾げる。今はって、まるで少し前まではそうではなかったような言い様だけど、国の名前がそうそう変わることがあるだろうか。そんなあたしの疑問を感じ取ったように小さく首肯してから、シザーズは静かに続けた。
「我々の国は、王の代替わりと同時に、名を変えるのです。そのことは、諸外国にはあまり知れていない」
「……でも、毎回毎回国名が変わっていたら、気付かないはずはないでしょう?」
正直、理解に苦しむ。アメリカが毎度毎度リンカーンだのワシントンだの国名を変えるようなものだ、そんなことがあれば日本人だって何故だろうと追及する。異世界とはいえ、そうならないなんて、有り得るだろうか。そう話すと、シザーズはそれももっともだと苦笑した。
「ただその理由として、2つ上げられます。1つは、この国が他国との交流が少ない、半鎖国状態にあること。そしてもう1つは、我々の中での呼び名など関係なく………―――ほぼ統一的に、この国がマゾクリョウと呼ばれているからなのです」
「マゾク、リョウ?」
とは、なんだろうか。カタカナで認識された言葉が、頭の中でゆっくりと漢字変換されていく。リョウ、は領地の領、マゾク、は……。
「つまり、魔族領?」
「?はい」
発音的には同じ言葉を繰り返したあたしを、きょとんとした顔で見たシザーズが頷く。使い慣れていない言葉で、一回では理解できなかったから仕方がない。
「なるほどね……。じゃあその背中に生えてるものは、この世界の人間みんなに付いてるって訳じゃなかったの、ね…?」
投げ掛けたはずの言葉が、疑問符を付けて尻下がりに落ちていく。視線を向けた先のシザーズの背中には、レノと同じ翼は、存在していなかった。「なんで…?」
「あぁ、翼は平時は引っ込めているのですよ。特に別種族の賓客とお会いする場合、無礼に値しますから」
ちなみに出し入れ自由です、といって彼はあっけらかんと背中から大きな黒い翼を出して見せた。………なにそれ。
「この世界の住人が皆、人型でありながら、我々の様に翼があったり角が生えていたり、口から火が出たりするわけではありません。ですがそれは、今の話にはあまり関係がありませんね。………話を戻しましょう」
「……」
「この国が毎回国名を変えるのは、王国でありながら王家が存在しない―――世襲制ではないからなのです」
それは、つまり。
「……毎回あたしのように、異世界から……呼び出した人間を、王にしてるって、こと?」
苛立ちも露わに問い質すあたしを、シザーズが毅然とした、感情の読めない瞳で見つめる。
――…あぁ、悔しいくらい、いい目をしてる。きっとこの人は、あたしが何を言おうとも、決して揺るぎはしないのだろう。
「そういうことになります」
「別世界で暮らしていた人間を、拉致するみたいに召喚して?関係ない国の王座に座らせて?―――そうやって成り立ってきたのなら、この国は腐ってるわね」
足を組み目を細めて卑屈に笑うあたしを、シザーズの嫌になるほど冷静な瞳がじっと見つめる。祖国を侮辱された怒りからか、太腿に乗せた手には僅かながら力が入っていた。
それでも、そう言われたって仕方のないくらいのことを、この国は、彼は、している。あたしには関係ないことで、過去にこの国に召喚された人間のことなんて考えるほどお人好しではないけれど、理不尽は生憎嫌いなのだ。そして、もちろんあたしも召喚された不幸な人間の一人で、彼らを糾弾する権利がある。夢を奪われた、強引にかどかわされた、なんて被害者面するのは嫌いだけれど、結果的にそういうことになるのなら、あたしは彼らを地獄におちてでも呪い殺すだろう。
「………理由は、あるのです」
長くなりますがと前置きして、了承を得るように目で尋ねてくるシザーズに先を促すと、彼は話し始めた。
「我々魔族は、元は人族と祖先を同じくする生き物でした。それが同時代に大量の突然変異を起こして生まれたのが魔族。……こちらの伝承では、そう伝えられています。魔力という概念……ユラ様のいらした世界では、存在しましたか?」
「………いいえ」
「そうですか、では…。そこからお話ししなくてはなりませんね。――魔力というのは、元々人にも備わった力でしたが、我々の祖先は、それらと比べ物にならない量の魔力を持っていました。少数派は、」
そこまで言って言葉を切って、宰相は小さく息をつくと、苦い顔をして囁くように続けた。
「……少数派は、淘汰される定めです。彼らはその力もあって次第に集落から疎外され、差別されて、彼ら自身で国をつくり生きていくことを余儀なくされました」
「彼らは常人よりずっと強い魔力を持っていたんでしょう?対抗することは出来なかったの?」
思わず疑問を口にすれば、穏やかな微笑みを向けられた。
「彼らは軒並み穏やかな気性のものたちばかりだったのです。ちょうど、偉大な芸術家や作家たちが、繊細であるのと同じように。大陸の奥へ奥へと追い詰められた彼らには、かつての同胞に刃を向けるなど思いもよらず、為すすべもなく思われました」
しかし、と彼は言う。
「そこから事態は急変します。彼らが逃げ込んだこの地に根差した神と精霊たちが、神に祈った彼らに救いの手を差し伸べたのです。異界から彼らの力を制御し率いることのできる存在を呼び寄せ、かつ彼らの国に長久の庇護を与えた―――そうして、この国の王家の制度は完成しました」
「…それは、結果に至った過程であって、理由ではないわよね?なぜ神が異界の人間をわざわざ召喚したのか…あたしが知りたいのはそこよ」
本題を分かってるの、と凄んで睨みつけてみせるけど、シザーズは翠の瞳を細めて愉しげに笑うだけだった。……確信犯、ね。
「えぇ、分かっていますよ。あまり詳しく話すと話が複雑化するので簡潔に話しますが、そうですね。………王というのは、当たり前ですがただ単に王であると宣言すればなれる訳ではありません。地域ごとの守護神からの洗礼を受けねばならないのです。」
中世ヨーロッパの戴冠式のようなものか。そういったものも、恐らく牧師とかを呼んで神に誓いを立てたりするものだろうし。
「全ての生物は神がお造りになりましたから、その体を構成する物質は神に起因します。故に、力と祝福を与えることが出来るのです」
「……へぇ」
なるほど、建国の歴史といい、神が実在するという世界観な訳だ。祝福だけなら妄想と鼻で笑えるけれど、力……つまり、明確に魔力、とやらが与えられるのならば、その見方は間違っていないのだろう。
まるで旧約聖書の世界。―――……まぁ、宗教なんてロクに勉強しちゃいないんだけれど。興味をそそられる事実に笑みを浮かべていると、シザーズはいつの間にか紅茶の入ったカップを持って優雅に飲んでいた。――……ホントになんなのこの人。
「………しかしですね、魔族というのは突然変異の一族、だと言いましたよね?」
「――…つまり、神の物質から変質しているということ?」
「さすが由羅様、頭の回転が速い」
驚いたように目を見張る………この赤毛、あたしをバカにしてるのかしら?
「まァまァそうカリカリすんなってェ」
「折るわよ」
「すんませんでした悪気はなかったんです」
身震いするようにカタカタと震えた黒い短剣ににっこり微笑んで見せてから視線をシザーズの顔に戻すと、またしても穏やかに紅茶のカップを傾けていた。
「つまり、神の祝福を微妙に受け入れられない体に、変質してしまっているという訳です」
だからわざわざ、祝福を受け入れられて、かつしがらみのない別世界の人間を呼び出している、と。
「――…ちょっと待って」
「なんでしょう?」
「まず、祝福は受けられず庇護は受けられる理由は?それから、別世界の人間なら尚更相性が合致しない可能性は高いわよね?」
別世界の人間はそれぞれの神が作り出していると仮定するなら、だが。
「庇護は表面にオーラを纏わせるようなもので、まぁ早い話がまじないをかけるようなものです。それに構成物質は関係ありません。祝福は、体内に力を注入し分け与えるものなのです。異世界の神が創りし民と我らの神の相性が合致しない可能性は、――そこの鏡が答えです」
「……鏡?」
スッと白く細い指が指し示す先を振り返れば、そこには巨大な――優に10m四方はあろうかという――鏡があった。思い返してみれば、あたしが召喚された場所の目の前にあったものだ。
「それは、願いの鏡。その鏡に願うと、神と精霊たちに届き、王に適したものを導いてくれるという訳です」
「随分、万能ね」
溜め息をつく。シザーズはもうこれ以上詳しいことを話すつもりはないのかリラックスモードで紅茶を飲んでいるし、全く――どういうつもりなのかしら。
「この情報で納得しろ、と」
「曲解すれば、そういうことになりますかね。―――でもまぁ、」
呆れるあたしを、翡翠のような翠の瞳が射る。陶器のカップを掲げたままふわりと笑ったシザーズは、文句なしに美しかった。
「百聞は一見にしかず、と言いますから――口で説明するより、とりあえずこの国を見ていただこうかと思っております」
「また逃げ出すかも知れないわよ?」
腹立ち紛れに放った一言は、では両手足縛った状態で回って頂きましょうかという笑顔のシザーズの追撃に弾かれた。
冗談に聞こえないのが怖い。
「冗談です」
「………」
「護衛にレノイ・グリフィードをつけますから、どうぞ存分にお楽しみ下さい」
含むような笑みに何か企んでいるなと思うけど、こればかりはいってみなければ分からないし、気にしても始まらない。
「……―――当分は、」
逆らわないでいて上げるわ、と言えば、さすがに苦笑まじりの表情を返された。自分でも無いなとは思う。だけど、自分が絶対的に不利な状況だからこそ―――強がらなければ、やってられない。
「我々も、王にならないからといってすぐさま処刑するような、野蛮な真似はいたしませんよ」
嫌みっぽい笑顔は―――妙に誰かと被って、やっぱり苦手だとあたしは顔をしかめた。