表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蟲夢  作者: めけめけ
終章
21/23

夜の蜂

「アナフィラキシーショック?」

「たしか、有名なアメリカのミュージシャンなんかも、それが原因で死んだって……」

「あぁ、ジェフ・ポーカロ、TOTOのドラマーだろう?」

「へぇ、詳しいんだ」

「あの頃、はやってたからなぁ」

「その、アナフィラキシーショックとかいう病気が?」

「違う違う、TOTOっていうバンドがさぁ。でも、まぁ、そう言う意味じゃ、あいつも本望だったのかな?」

「なんで?」

「憧れのミュージシャンと同じ死に方がってこと」

「そのアナフィラキシーショックって、だからなんだよ」

「アレルギーだよ」

「アレルギーで人が死ぬのか?」

「これだから独り者は……、いいか。アナフィラキシーショックっていうのは、体の免疫機能が体内に入った異物に対して過剰に反応して、そのぉ……なんだ」

「ショック死」

「そう、そのショック死ってやつ。ようは、抗体を作ろうと細胞が激しく反応して、呼吸困難とかになって、ひどいときは死に至るってやつ」

「確か、ジェフ・ポーカロは農薬か何かに反応したって、話だっけ」


 葬儀には思いのほか多くの参列者が集まった。それはある『偶然』が引き起こしたともいえる。或いは死を予感した行動であったのか。その男は死ぬ前に、小学校の同級生の下を訪ね歩いたのだという。


 春、母校が取り壊されることを知ったその男は、一月ほどかけて、当時の同級生で連絡がつくものに片っ端に電話をしたという。特にその男と仲がよかった、S夫、U治、G朗もすでにこの世にいないということも、人々の関心を引いた。


「で、なんのアレルギーだったわけ」

「最初、農薬かと……。なんでもあいつのアパートで毛虫が大発生して、その農薬が原因かと思われたらしいんだけど、いろいろ調べたら、蜂に刺された跡が見つかったとか」

「蜂? こんな街中でスズメバチか?」

「いや、それがおかしな話でさ。蜂って夜中には活動しないものなんだけど、家の中に何匹がアシナガバチが紛れ込んで、それに刺されたっていうんだけど、そんなことあるのかね」

「へぇ、不思議なこともあるもんだね」

「あるもんだなぁ」


 不思議なことはあるものなのだ。



 おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ