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CROSS Over CHANGE  作者: 牧野由佳
Part.1 Name
1/2

Over.0 Opening

王が貴族と統治されてきたブリジスト国――――

しかし今では王よりも貴族が中心となって、玉座に就く隙を狙っている……


「このままでは私は王として威厳を保つことも、国を貴族の魔の手から守ることが出来ぬ。どうすれば……」


王は悩み続けた……自分よりも政治を掌握している貴族を一掃するには、彼らの頂点に立つ脅威が必要になる。

そこで目をつけたのが国一の伝統を誇る上流貴族『クロウ家』だった。

貴族政治をしているのは、元は地方に土着していた中流貴族である。

そんな彼等と違い、上流貴族は王の味方もしなければ、政治に参加するわけでもない。

だからこそ……『クロウ家』に密命を下そうと、考えた。


――クロウ家本邸・裏庭園

廃墟とみえる館の裏にある真紅の薔薇が咲き乱れる裏庭園。

その真上に広がる星々の光が見当たらず、蒼白い上弦の月だけが浮かぶ漆黒の夜。

闇に同化した中年前の男が、不気味な笑みを月明りで辛うじて見える頬に浮かべる。


「――『クロス・オーバー・チェンジ』ですか……その密命、謹んでクロウ家がお引き受けしましょう」


男は王の代理人に跪いた。代理人もほっと安堵の息をつき、密命の羊皮紙を渡す。男はそれを受け取り、立った。

代理人が何かを男に呟こうとし、男の影を見つめながら瞬きした間の出来事だった。

――――――――――男の姿は既に、なかった。





――クロウ家・執務室

クロウ家の当主が仕事をする執務室にその部屋の主と、漆黒の闇を纏った不釣合いな少年がいた。


「来てくれたんだね インディー」


インディーと呼ばれた少年はゆっくり漆黒の瞳で当主を見つめた。些か当主に面影が重なる少年だった。


「当主が呼んだのですから……当然です」

「そんな堅苦しくならないでくれ。親子なんだから」

「……でも、今からのお話は親子としてはできないですよね?」

「……そうだね。大事な話だ。お前の成人の儀式での『誓約』にも関わることだから」

「…………」


当主は重い溜息を闇に零した。


「いいかい? 良くお聞き……『クロウ家』は王の密命をお引き受けすることになった」


少年は小首を傾げ、沈黙をまもる。


「そして、その密命に『クロウ家』の代表として実行するのは……インディー お前だよ」


インディーは小さく笑った。当主からは月明りで照らされている彼の片頬しか見えなかったが、確かに笑った。


「わかりました。僕が実行します。密命は?」

「『クロス・オーバー・チェンジ』だよ……」


当主はインディーに密命内容が記された羊皮紙を渡す。インディーは受け取り、内容を読み込み始めた。

それからゆっくり瞬きをした後、また小さく笑った。


「『不吉な子』と疎まれている僕にはピッタリですね」


当主は眉間に皺を寄せ、インディーの黒髪を梳きながら、親指の腹で漆黒の瞳を見せられないよう片目の瞼を閉じさせた。


「……明後日の成人の儀式での誓約を考えておきなさい」

「――――――はい」


二人は互いの漆黒の瞳を見つめ合い、そのまま闇に溶け合っていった――――――――――





 

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