あの日、から。
2話連続投稿、いきます(`・ω・´)>。
宜しければお付き合いください...m(_ _)m。
あれから1ヶ月が過ぎた。
課長は、あれ以来、何も言ってこない。
それどころか、端にも近づかない。
テーブルに頬杖をつき、ほぅ、と小さな溜息をついた。
「ハルちゃん?溜息つくと、幸せが逃げてくのよ?」
暖かな陽射しのさす昼休みの社員食堂の隅っこで、一人ぼんやりと
していたところに、不意に背後から声がしたかと思うや否や、
抱きつかれた。
「うわぁあ!」
「何?!その色気の欠片もない反応...。」
「慎ちゃん、年頃の乙女に、それ言っちゃダメ。」
「藤澤さぁ、『慎ちゃん』はよそうや?」
「だぁって、名前が『慎之介』なんだから、慎ちゃんでしょぉ?」
振り返った私は、目の前で繰り広げられるキラキラコンビの口喧嘩に、
呆気にとられる。
「ん?ハルちゃん、お口、閉めよっか?」
「...すみません、希望先輩。」
空いていた隣の席に、企画課の希望先輩が座る。
伊藤さんは、私の前に陣取った。
「...で、その溜息の原因は何?おねぇさんに話してみなさい?」
少し背を反り、軽く握った右手でトンと胸を叩いて、希望先輩は私を見た。
少し栗色がかったふわふわの髪。クッキリ二重の深い茶色の瞳と
形の良い薔薇色の唇。中央には高すぎず低すぎもしない鼻。
えもいわれぬバランスで整えられたそれらは小さな顔に収められ、
初めて見る男性社員は必ずといっていい程骨抜きになると言う。
「慎ちゃんがね、心配らしくって。私に泣きついて来たのよねぇ〜。」
「藤澤ぁ、即刻『慎ちゃん』は止めろ。んで、オレは泣きついてなんかないぞ?」
ニコニコと笑いながら言う希望先輩をムッとした顔で睨む伊藤さん。
こちらも希望先輩に負けず劣らぬ美男子で、目尻が少し下がった
優しいその瞳に映された女性は甘い色の溜息をつくといった噂が、
かつて真しやかに流れていたらしい。
そういえば、2人とも早川課長とは大学からの親しい友人だと、
誰かから聞いたような気がする。
...話して、みようか...?
フッとそんな考えが頭を過ぎった。
黙ったままの私に、伊藤さんが小さな声でたずねる。
「...早川がらみか?」
私は、その声に、目を丸くして顔を見た。
「わっかりやすいのなぁ〜、ハルちゃんは。」
クツクツ笑いながら、伊藤さんは右手を伸ばし、1ヶ月前の課長のように
私の頭をクシャクシャと撫でた。
その仕草に、私は顔が熱くなるのを感じ、再び俯いてしまった。
「...ぬぅっ、許さんっ!私のかわいいハルちゃんに、一体何して
くれてんだか、あの馬鹿はっ!!」
地の底から響くような声の希望先輩の呟きに、ギョッとしてそちらを向く。
この会社で、あの課長を相手にこんなことを言う女性は、この人しかいない。
「大丈夫、おねぇちゃんが、仇をとってあげるからね?」
私の両手を自分のそれでそっと包み、優しい微笑を浮かべた希望先輩がいた。
「あ、あのっ!あの、敵討ちなんてっ!」
私は慌てて希望先輩の手を握り返した。
「敵討ちなんて物騒なこと...。」
そこまで言うと、あとは喉が詰まったかのように何も言えなくなって、
2人から視線をそらせた。
すると、右肩に暖かな手が添えられ、きゅっと優しく抱きしめられた。
「泣かないで?『仇をとる』なんて、ちょっとした冗談だから...。」
頭の上から希望先輩の穏やかな声が聴こえ、私の涙腺は、その言葉に反して、
涙が零れるのを留めることができなかった。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。
本日、新メンバー登場です!
このあと、『登場人物』に追加してまいります。
前回の伊藤さんの時は、うっかり追加忘れしてしまいましたが、
今度は大丈夫(なハズ...( ̄ー ̄;)←自信無)。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ご意見・ご感想、拍手、その他諸々、とっても嬉しいです。
ここまでお付き合いくださったあなた様に、最上級の感謝を込めて。
諒でした。