告白は、前触れもなく。
信じらんない!信じらんない!!信じらんない!!!
なんで、私、課長にキスされなきゃならないのっ?!
私の目はあまりの驚きに開いたまま。
それに気づいた課長が、苦笑いしながら、私に言った。
「春陽...目ぇ、閉じてくんない?」
「ほぇ...?」
今、春陽って言った?
何で?何で??何で?!
『エンドー』じゃないの?なんで『ハルヒ』なの?!
「今、『何でなの?!』って思ってるだろ?」
慌てふためいて必要以上の瞬きをする私に、さっきとは
打って変わって、いつもの余裕綽々な課長が言った。
「ホント、かわいーのな?」
ずっと同じ体勢のままクツクツ笑う課長に、私はなんだか
腹が立ってきた。
「いっ...一体何なんですかっ?!ご用って、何なんですかっ?!
それと、いい加減、手、離してくださいっ!」
思わず、感情のままに、上司に怒鳴ってしまった...。
その声の大きさに、キョトンとする課長。
その姿を見て、自分のしでかしたことに気づき、青くなる私。
「嫌だ。」
課長は、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべ、私を見下ろす。
その視線に嫌な予感を覚えて、私は視線を逸らすべく俯いた。
背筋に冷たいものを感じる。
俯いたためにあらわになったうなじに、課長の熱い息がかかる。
「...好きだ、春陽。」
耳元で、囁かれた言葉。
低音の甘いその響きは、私の不必要に心臓を踊らせ、そして、
脳内混乱に拍車をかけた。
え?何?今このヒト、何を言ったの?
体中が震えだす。...なんだか、スゴク怖い。
「な...なに言ってんですか、課長?」
カタカタ震えながら、恐る恐る顔を上げると、その瞳に
怪しげな光を宿らせ、課長はもう一度ニヤリと笑う。
「あれ?聴こえなかった?...それとも、別の言い方した方がイイ?」
その表情を見て、全身の毛が逆立つような感覚に陥る。
後ろが壁で逃げられないのに、後ずさりをしたくなる。
「...俺のオンナになれ、春陽。」
課長は、再び私の耳元で囁き、首筋に口づけをして、私を解放した。
とたん、私は、ヘナヘナと力なくへたり込む。
「落ち着いたら戻れ。」
課長はそう言って、打合せ室から出て行った。
そうして、夕焼けで満ちた打合せ室には、私ひとりが残された...。
敢えて避けていた課長に『好きだ』と言われてしまった春陽ちゃん。
パニクるし、体は震えだすし...さぁ、どうしましょう?
...取り敢えず、職権乱用とセクハラで、訴えちゃいましょうかね?
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
諒でした。