静けさと、緊迫。
あの場面のあの言葉で顔を上げれば、肯定していると同じ。
...今なら、冷静に判断できるのに。
医務室のベッドに横になって、今日、何度目かの溜息を零す。
一度決壊したが最後、なかなか涙の止まらない私を見て、希望先輩は、
食堂に伊藤さんを残して私を医務室へと連れてきた。
「暫くここで休んでなさい。私、自分の段取りをして、すぐ戻ってくるから。
ハルちゃん、伊藤君がいたら話せないみたいだし...ね?」
そう言って、私の返事も聴かず、希望先輩は自分の持ち場に戻っていった。
「...もぅ、何やってんだろ、私...。」
また、目頭がじんわりと温かくなり、息がグッと詰まる。
抑えようにも抑えられない涙。
いつから私は、こんなにも弱くなったんだろう?
チームのみんなに迷惑をかけて、先輩たちにも心配かけて...。
ベッドに横になってタオルケットを頭から被り込み、膝を抱えて丸くなった。
カラカラカラ...。
医務室の引き戸が静かに開けられる音が聞こえた。
「...ぅん?」
希望先輩が戻ってきたんだろうか?
すっぽりと包まった暖かなタオルケットの中でウトウトしかけていた意識を
戻そうとしていると、明らかに女性のものとは思えない大きな掌が、
壊れ物を扱うかのように優しく頭を撫でた。
「...すまない。」
タオルケット越しに聴こえたのは、早川課長の声だった。
私は身動ぎもせず、ギュッと目を瞑って、眠っている振りをした。
何故、私が、ココにいるのを、知っているの...?
纏わりついていた眠気は既にどこかに消え去り、タオルケットの中で、
私は身体が震えるのを抑えるのに必死だった。
しん、と物音一つしない医務室で、自分の心臓の鼓動だけが酷く響く。
本当は聴こえるはずのないその音が、課長の耳にも届きそうで怖かった。
課長はベッドの傍らで様子を見ていたようだったけれど、私が眠っていると思ったのか、
暫くすると医務室から出て行った。
緊張が緩んだとたん、嫌な疲れがドッと押し寄せる。
もぞもぞとタオルケットから抜け出たその瞬間、再び医務室の引き戸が、今度は
勢いよく開けられた。
「ハルちゃんっ!」
「せ、先輩?!」
引き戸を開けるや否や、希望先輩はベッドまで駆け寄り、私をムギュっと抱きしめた。
「今、早川がココから出てったけど、なんともない?大丈夫?!無事っ?!」
先輩はその腕に力を込め、私はその強さに苦笑すると同時にホッとした。
「ぅぐ...。さっきまでは大丈夫でしたけど、今は大丈夫じゃない...かも?」
冗談交じりにそう言うと、先輩の顔から一瞬にして血の気が引いた。
「え゛ぇっ?!...ダメ、やっぱり、敵討ち!早川に果たし状叩きつけて、
ケチョンケチョンに伸してやるっ!!」
先輩は、青い顔をしたかと思った次の瞬間、今度は真っ赤な顔をして拳を突き上げた。
その姿を見て、私はその先輩の右手を握り締め、慌ててなだめる。
「嘘です、嘘ですっ!なんともないです!!大丈夫ですぅっ!!!」
...あぁ、自業自得...。
姉御肌な希望さん。
皆から好かれている、ステキな“おねぇさん”です。
さっきまで予約済になってた第9話(この回)が突然消えてしまいました((゜m゜;)。
第10・11話の予約が済んだあとだったので、慌てて「割込み」で投稿。
第9話っ!何処へ行ってしまったのぅ~?(iДi)
...ということで、今日は、3話纏めてUPです。
学習能力、どっかに落としてきたのかも...。
拾われた方、おまわりさんに届けておいて下さいねっ!(o^-')b
(↑軽っっっっっ!!)
諒でした。