08,腹黒サンタ!
正木正直(まさきまさなお)くんはサンタクロースから預かった袋を交番に届けました。もちろん中身のでぃーえすもそのままです。
交番から出てきたマサキくんはとぼとぼ歩き、
「はあ〜〜〜〜〜〜〜…………」
と、すごくがっかりしたため息をつきました。
こっそり後を付けていた美月は意外な成りゆきにぼうぜんとしました。後ろで三太郎は「ちっ」と舌打ちしました。
「なんだよ、子どもらしくねーガキだなあ、バカ正直に交番に届けやがって、あの正直(しょうじき)太郎め。ネコババしたら家に乗り込んでいって子分にしてこき使ってやろうと思ったのによ、あーあ、嫌なガキだぜ」
それを聞いて美月はふんがいしました。
「なんてひどい人なの! あなたよくそれでサンタクロースを名乗れるわね!?」
三太郎はフン!と不機嫌にあごをそらして言いました。
「俺はサンタクロースじゃねえ、黒いサンタクロースだ」
「白でも黒でも、あんたなんかサンタクロース失格よ! サンタ事務局に訴えてやるんだから、この、サンタの面汚しの、極悪人!!」
美月は三太郎を怒りつつ、マサキ少年の後ろ姿を心配そうに見守りました。しょんぼりして、本当はすっごく自分の物にしたかったに違いありません。美月は胸が痛んで、キッと三太郎を見上げると言いました。
「あの子は正直にいいことをしたんだからご褒美をもらえるべきだわ!」
三太郎は平気な顔で憎らしく言いました。
「ああそうだな。じゃあクリスマスイブには赤いサンタがさぞかしすばらしいプレゼントをしてくれることだろうぜ。ま、俺の仕事じゃねえや」
美月はキイーーッと悔しがり、先を歩いていくマサキくんの後を追いました。三太郎が呼びかけました。
「おーい。あのガキは見込み違いだ。俺はいい子なんかにゃ用はねえぞー」
美月はくるっと振り返ると、アッカンベー!とやって、
「絶っっっ対、訴えてやるんだからあっ!」
と言ってマサキくんの後を追い続けました。三太郎はむっつりした顔で固いごわごわの髪の毛をかき、
「ええい、ちくしょう」
といまいましそうにのっしのっし後に続いて歩きました。
マサキくんは小学校の近くの児童館にやってきました。その入り口の階段で、中に入らずクラスの友だちが3人、でぃーえすを通信でつないでモンスター退治のアクションゲームを楽しんでいました。3人でチームを組んでモンスターをやっつけるのです。マサキくんがやってきたのに気づくと顔も上げずにゲームに熱中しながら一人が言いました。
「よう、ショウジキ。でぃーえすは買ってもらえそうか?」
マサキくんは少し離れてうらやましそうにながめながら言いました。
「分かんない。でも、うち貧乏だから……」
あっ、ちくしょう、こいつ手強いぞ、抜かるなよ?、とゲームに熱中しながら、友だちは思いだしたようにマサキくんに言いました。
「へーー…。じゃあおまえなんか仲間じゃねえや。気が散るからあっち行けよ……。あっ、くそ、このやろう!」
友だちはゲームに熱中し、マサキくんは寂しそうな顔で立ち去ろうとしましたが、やっぱりゲームが楽しそうで、いじいじと友だちが熱中する様子をながめていました。
美月はプンプン怒りました。
「あの子たちは友だちを仲間はずれにする悪い子たちだわ! 先生、おしおきステッキ貸して!」
「マジカルステッキだ。あれはおまえに渡すと危ねえからもう貸さん」
美月はムッとにらんで、
「サンタ事務局う〜〜」
と三太郎を脅迫しました。三太郎は嫌な顔をして、
「しょうがねえ悪たれ見習いだなあ」
とこぼしながら、黒いセールスカバンからシルバーブラックのでぃーえすゲーム機を取り出しました。
「ほらよ。これはゲームしかできねえが、使いようによっちゃじゅうぶんガキどもにおしおきできるぜ?」
美月はゲーム機を受け取りニンマリ三太郎みたいに笑いました。
美月は男の子たちのところへ歩いていき、
「君たちー、お姉さんも仲間に入れてよ?」
と、かっこいいシルバーブラックのゲーム機を見せました。ちょうどバトルを終えた男の子たちは美月のゲーム機に目を輝かせました。
「かっちょいー! そんなでぃーえす売ってたっけ?」
美月はフフンとあごをそらし、
「非売品の特別製よ」
と自慢しました。
「お姉さん強いよお〜? 対戦バトルしようよ? お姉さん一人で、そっちは三人がかりでいいよ? もしお姉さんに勝ったらこのゲーム機貸してあげる」
三人は顔を見合わせ、ニンマリしました。
「オレたちを舐めてもらっちゃこまるなあー? ま、いいぜ、軽ーく返り討ちにしてやるよ」
「よーし、バトル決定!」
美月と三人はでぃーえすをネットさせて自分の操るキャラクターを出現させました。男の子たちは美月の出現させたキャラクターを見て驚きました。
「ドラゴン大帝アルテミラじゃん!!?? こんなの自分のキャラにできるのかよお????」
驚いている三人に美月は得意になって自慢しました。
「秘密の裏技があるのよ。いいでしょお〜〜?」
美月はうらやましそうにのぞいているマサキくんをおいでおいでと手招きしました。
「お姉さんが三人をめちゃくちゃにやっつけるところをよく見てなさい」
三人はたいして大人でもない美月にお姉さんぶられて面白くなく、三人顔を見合わせてうなずき合い、顔をひきしめました。
「よしっ、バトルしようぜ!」