06,異議あーり!
三太郎は夜になるとリムジンホテルを空飛ぶオープンカーにトランスフォームさせて北極のサンタランドに戻り、美月を連れて事務局に行くと、
「こいつはサンタにゃ向いてねえ。黒サンタ見習い失格だ」
と、びっくりする美月を置き去りにしてさっさと出ていき、リムジンジェットカーに乗って飛び去ってしまいました。
さて数日後、三太郎はまた呼び出されてサンタ事務局にやってきました。
そこには白ひげのやせた優しそうな局長サンタと、プンプン怒った美月が待っていました。三太郎はまたうんざりした顔をしました。
局長サンタが言いました。
「こりゃ三太郎。先生の役目を放り出して生徒を置き去りにするとは何ごとだ」
三太郎は、
「ですから、こいつはサンタにゃ向いてねえと言ったでやんしょ?」
と言い訳しました。すると美月が
「わたしのどこが悪いって言うのよ!?」
とプンプン怒りました。局長サンタはまあまあと美月を落ち着かせ、三太郎に言いました。
「とまあ、このように美月くんから異議申し立てを受けてな、事務局員で協議の結果、異議を受け入れ、彼女を黒サンタ見習いに復帰させることに決定した」
三太郎はボソッと
「向いてねえと思うがなあー…」
と、文句を言いましたが、局長サンタに
「われらが聖サンタクロースも承知しておる」
と言われてむっつり黙りました。聖サンタクロースとはオリジナルの本物の本物のサンタクロースのことです。
「ではよろしく。二人とも仲良くな」
局長サンタはニコニコ手をふりましたが、今度は美月が不満を言いました。
「黒サンタって黒岩先生の他にもいるんでしょう? わたし、他の黒サンタの先生がいいです」
ツンとすまして言う美月に三太郎も
「おうおう、いいぜ、他の黒サンタに引き受けてもらいな」
と憎まれ口を言いました。局長サンタは三太郎を「これ!」としかり、美月にも言いました。
「こんなやつでもこいつは立派な黒いサンタクロースだ。三太郎先生がいやなら、君の異議申し立てを却下して、黒サンタ見習いを失格とする。それでもよいかな?」
美月は渋々
「はあ〜〜〜い」
と返事し、
「黒岩三太郎先生え、よろしくおねがいしまあーす」
と頭を下げました。
「あ〜あ…、しょうがねえなあー……」
思いっきり面倒くさそうに言う三太郎に美月はこっそり
「ちっ、」
と舌打ちしました。