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04,見習いテスト!

 三太郎と美月が歩いていると友だちの分まで4つもランドセルを持たされている男の子がいました。ランドセルを持たせている男の子たちは「ほらほらしっかり歩けよ」とよたよた歩く体の小さな男の子を笑いながらはやしたてています。

「悪い子たちね!」

 美月は張り切ってステッキをかまえました。三太郎は

「ありゃあジャンケンでゲームをしてるんだろう?」

 と言いましたが、美月はジロッと三太郎をにらんで、今度はこっそり「えい!」と小さくステッキをふりました。ステッキの先から黒い星がビュンビュン飛んでいって4人の男の子たちの胸に命中していきました。するとエコバッグにいっぱい買い物をつめこんだお母さんたちがものすごい早足でやってきました。

「わっ、母ちゃん?!」

 あまりの勢いに気おされて棒立ちの男の子の頭を母ちゃんはポカリとなぐりました。

「こらっ! 友だちにランドセルなんて持たせて何やってるの!」

「イってーーー!」

 男の子は頭を押さえて母ちゃんに文句を言いました。

「ジャンケンで負けたからだよお〜。その前の電信柱まではオレが持ってたんだぜ!?」

「口答えするんじゃありません!」

 母ちゃんはまた男の子をポカリとなぐると、ランドセルを持たされている男の子のところにスタスタ歩いていき、

「オホホホ、ごめんなさいねえー?」

 とランドセルを1つ取ると自分の息子のところにスタスタ戻り、

「ほら、帰って宿題!」

 と、ランドセルを押し付け、耳を引っ張ってスタスタ早足で歩きました。他の3人の男の子たちも同様にお母さんたちからポカポカたたかれて「オホホホ」と受け取ったランドセルを押し付けられ、耳やえりくびを引っ張られて連れて行かれました。

「あっ! お、おい、母ちゃん、これオレのランドセルじゃないよお〜〜」

「ランドセルなんてみんなおんなじでしょう!」

「ぜんぜん違うよお〜〜!!!」

 男の子たちは悲鳴を上げながらものすごい勢いでお母さんたちに連れて行かれてしまいました。一人取り残されたランドセルを持たされていた男の子は、

「あ、これ僕のじゃない。お、おお〜〜い! 僕のランドセルう〜〜〜!!!」

 と、4人の誰かを追ってあわてて走っていきました。

 三太郎は線みたいな目を思いっきり細めて、美月はかわいい目を点にして見送りました。

「あ、あれ? 今のレベル1だった?」

「ああ。そのステッキは1回ごとにリセットされるからな」

「へ、へえー。じゃあレベル1であれくらいなわけね」

 と、美月は感心したふりをしてごまかしました。

「ま、じゃあ次の悪い子を探すか」

「そ、そうしましょう!」

 レッツゴー!と美月はステッキをふり上げて張り切って歩き出しました。


 歩いていくと商店街に入り、おもちゃ屋の前に男の子たちが集まって、今買ってきたカードバトルゲームのパックの中身を調べ、カードのトレーディングをしているようです。

「あっ! ガラモンのQバージョンじゃん! トレードしようぜ?!」

「う〜〜ん、やだ。おまえろくなの持ってねーじゃん」

「ほしい! 頼むよお〜、2枚!いや3枚でどうだ!?」

「やーだねー」

「ええ〜い、おのれえ〜〜」

 その子はどうしてもそのカードがほしくてあきらめきれないようで、もう1パックカードを買うため財布の中身を確かめましたが、どうやらおこづかいはすっかりなくなってしまったようで、すると男の子は仲間のうちのお金持ちっぽいトラッドな服の子に言いました。

「なあ、100円めぐんでくんない?」

 柱のかげからこっそり見ていた美月は張り切って言いました。

「カツアゲだわ! すっごく悪い子ね!」

 美月は今度は忘れずレベル2のボタンを押しました。ジャアーーン……と不気味にオルガンの音が鳴ります。美月は「えいっ!」とステッキをふりました。

 トラッドの男の子は

「それよりボクのメフィラス星人と君のセミニンジャ星人をトレードしないか?」

「あっ、メフィラスならオレほしい!」

「じゃ、ガラモンとメフィラスとセミニンジャをそれぞれトレードってことで、」

「トレード成立!」

 と、男の子たちは仲良く交渉成立したようですが、あららもう遅い、ステッキから発射された黒い星は100円をねだった男の子の胸に命中してしまいました。

 おもちゃ屋のとなりのお団子屋からみたらし団子をほおばりながら中年の男の人が現れました。

「あっ、先生!」

 思わず声を上げた男の子はしまった!と慌てて口を閉じましたがもう手遅れ。先生は生徒たちを見つけて、

「こらっ!」

 としかりました。

「学校の帰り道におもちゃ屋に入ってはいかんと指導してるだろう? これは全部ぼっしゅう!」

 男の子たちはみんな買ったばかりのカードを先生に全部取り上げられてしまいました。

「きったねーの、自分だって団子買い食いしてるくせにい〜〜」

「大人はいいんだ。これは明日、お母さんたちに取りに来てもらうからな」

「はあ〜〜〜〜〜〜い」

 男の子たちは思いっきり不満そうに返事し、団子をほおばり意気ようようと去っていく先生の背中を恨めしそうに見つめ、こっちを見ている変な黒い服のお姉ちゃんをジロッと見ました。美月は慌てて三太郎のかげに隠れました。

「ま、まあ、学校の帰り道におもちゃ屋に寄り道してたんだから悪い子たちよ……ね?……………」

 三太郎は呆れた様子で、

「ま、次行くか」

 と歩き出し、美月もちょこちょこ歩いて続きました。

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