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17,サンタクロース!

 美月は赤サンタさんからサンタクロースの秘密道具=無重力ブ−ツを落としてもらって、ソリまでジャンプしてサンタさんのとなりに乗せてもらいました。

「この辺りにサンタのおとずれる予定の子どもは他におらんからのう、地球に戻ってもかまわないかい?」

「どうぞ。北極のサンタランドまで連れていってください。事務局にわたしの先生の黒サンタのことを報告しなくちゃなりません! もう〜〜、ぜったい許さない! 訴えて、ぜったいサンタクロースの資格を取り上げてもらうんだから!」

 白ひげの赤サンタさんは「ほい!」と声をかけてトナカイたちを地球に向かわせました。

「なるほど、するとやはりお嬢ちゃんが黒岩三太郎の生徒の村上美月ちゃんじゃな?」

「はい。?」

 美月はなんで知っているのだろうと首をかしげました。サンタさんは優しい顔でニコニコ笑って言いました。

「それならサンタランドに行くのは夜が明けてからじゃな。村上美月くん。君は先生の採点の結果、黒サンタには不適格だと、黒サンタ見習いを失格になった」

 ええっ!?と美月は驚きました。

「先生の採点って、黒岩三太郎先生のですか?」

「そうだよ。彼が君の先生じゃろうが?」

「そんなのおかしいですう! あんな先生、でたらめです!!!!」

 サンタさんはほっほっほ、と笑いました。

「あんなやつでもあいつは立派な黒いサンタクロースじゃよ。ま、悪い子の親玉じゃからのう、やり口はろくでもないがのう」

 美月は納得がいかず不満です。

「どうしてそんな人がサンタになれるんです?」

 サンタさんは愉快そうに言いました。

「いろいろな人間がいた方が世の中楽しいじゃろう? いろいろな子どもたちがおるからのう、サンタもいろいろなサンタがおった方がいいんじゃよ」

「はあ………」

 美月はしぶしぶうなずいて、がっかりして言いました。

「それで、わたしは見習い失格になって、サンタにはなれないんですね?」

「いや。おまえさんは赤サンタ見習いになることになって事務局からわしのところに通達が来た。というわけで、美月くん、君にはさっそく赤いサンタクロースの仕事を手伝ってもらいますぞ?」

 サンタさんは香水瓶を取り出し、シュッと美月に噴きかけました。すると美月の黒い帽子とドレスが赤く変わりました。

「希望は黒サンタだったようじゃが、赤サンタでもいいかね?」

「はいっ! よろしくお願いします!赤サンタ先生!」

  美月はサンタクロースになれるのだと目をキラキラさせて喜びました。赤サンタさんはニコニコして言いました。

「うむ。よろしく頼むよ。これで赤サンタの仕事もなかなかハードで根性が必要だからのう。じゃが、サンタクロースに一番必要なことは……、美月くんは子どもは好きかな?」

「はいっ! 大好きですっ!」

 と、勢いで言ってから、美月はちょっと苦笑いを浮かべて言いました。

「やっぱり嫌いな悪い子もいますけど……」

 ほっほっほ、とサンタさんは笑いました。

「おそらく君が嫌いな悪い子のところには、赤いサンタも黒いサンタもおとずれることはないだろうから心配はいらんよ」

 美月は安心して、近づいてくる地球の真っ黒な陰の中の眠らない街の灯をながめて思いました。黒岩三太郎先生はとんでもない黒サンタでしたが、黒サンタ見習いもけっこう楽しかったな、と。そしてどうして自分は黒いサンタになりたかったのか考えましたが、なんだかもう忘れてしまいました。今はとても楽しい気分で、眠っている良い子の枕元にプレゼントを届けるのが楽しみです。サンタさんの後ろにはどっかと大きな白い袋が載っています。美月はとても楽しみなのですが、疲れて、眠くなってきてしまいました。うつらうつらとする美月にサンタさんは優しく言いました。

「しばらく眠るといい。君も、楽しいクリスマスの夢を見るといい」

 美月はニッコリ笑って目を閉じ、何か思いだしてクスクス笑い、眠りに落ちていきました。




 クリスマスイブが明け、クリスマスの朝になりました。

 マサキくんが目を覚ますと枕元に新品のでぃーえすの箱がモンスターバトルゲームのソフトとセットでありました。マサキくんは飛び起きて、箱をつかんでお父さんお母さんのところへ駆け込みました。

「お父さん! お母さん! プレゼントありがとう!」

 お父さんはお母さんと目で合図しあい、とぼけて言いました。

「さあなあ? お父さんとお母さんはおまえに図書カードを贈るつもりだったんだが……、どうやらサンタクロースが勝手にプレゼントを持ってきてしまったようだなあ?」

 マサキくんは嬉しくてたまらず、ニヤニヤ笑いをこぼしながら言いました。

「サンタクロースなんて本当はただでプレゼントなんてくれないんだよ。自分のサンタがいる子どもにはね」

 お父さんとお母さんはマサキくんのませた言い方に目を見合わせて笑いました。

「手洗いうがいして来なさい。ごはん食べるぞ」

「はい!」

 マサキくんは元気に返事して、だいじに自分のでぃーえすを部屋に持ち帰りました。マサキくんのでぃーえすはブラックでした。マサキくんはコウタたちと遊ぶのが楽しみでしょうがありませんでした。


 ……おわり。

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