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16,空飛ぶ!

 観客席の前に上がっていたさくが下りていき、黒バニーたちはスタンディングオベーションで四人のバトラーをたたえました。

 モンスターの現れたグラウンドから台にのって銀色の翼のついたモーターボートがせり上がってきました。

『バトル勝利おめでとうございます!!!! 賞品のスーパージェットフライヤーです! これで月の裏側のゴールまで一っ飛び! おめでとうございましたあ、拍手うーー!!!!!』

 黒バニーのお姉さんたちはせいいっぱい大きな拍手で四人を祝福し、四人はニヤニヤ照れながらボートに乗り込みました。

 ボートは四人乗りでした。

 歩いてきた美月にマサキくんは言いました。

「美月さんも乗りなよ? 詰めればだいじょうぶだよ」

 『あっあーー』と意地悪なアナウンスが言いました。

『ボートの定員は四人までです。人数をオーバーしますとバランスを崩して墜落、爆発、死亡事故の起こる危険がたいへん高いですのでお気をつけくださあ〜い』

 美月は肩をすくめました。

「だってさ。あなたたちが勝ち取った賞品ですもの、どうぞ、四人でゴールしなさい」

「でも……」

「いいのいいの。わたしなんかあんたたちのすることに文句を言っていただけだから」

「たしかにな」

 と、コウタたちが笑いました。

「でもさあ……、本当にいいのか?」

「いいよ、平気だよ」

 美月は周りを見渡して言いました。

「仲間がこれだけいるんだもの、わたしはサンタクロースなのよ?」

「黒サンタの見習いだろう?」

 美月がむっつりして男の子たちは笑いました。

「それじゃあ念のため」

 マサキくんは左腕に装着したでぃーえすのパワーをオフにしました。するとドラゴン大帝のコスチュームが消えて元のパジャマ姿に戻りました。

「これ、返すよ」

 マサキくんからでぃーえすを受け取り、美月は言いました。

「別に持っていってもいいのに」

 マサキくんは首をふりました。

「もうたっぷり楽しんだよ。ゴールしたら、きっとこの夢は覚めちゃうんでしょ? どうせ本当の世界には持っていけないから……」

 コウタたちがマサキの肩をたたいて言いました。

「しょうがねえなあ、オレたちのでぃーえすを順番に貸してやるよ」

「そうそう、おまえはもうオレたちチームの一員だからな」

「またいっしょに組んでモンスター相手にバトルしようぜ?」

「うんっ! ありがとう!」

 マサキくんはニッコリ笑ってうなずきました。


 コウタがハンドルを握りましたがどうやら完全な自動運転らしく、「GO!」のボタンを押すとボートはふわりと浮き上がりました。

「バイバー……」

 マサキくんが手をふる間もなく、ボートは後ろのジェットエンジンから炎を噴き出してバビューーン………と、あっという間に空の向こうへ飛んでいってしまいました。

「さーて終わった終わった」

「帰ろうっと」

 観客の黒バニーのお姉さんたちは続々席を立ち、あちこちに開いている出口に入っていきました。

「あっ、ねえーちょっとー、待ってよおーー!」

 美月は大声で呼びかけて壁に駆け寄りましたが、ぴょんぴょん飛んでも壁の上まで頭は届かず、入り口の通路に戻っても誰もスタジアムから出てくる様子はなく、取り囲む通路をぐるぐる歩きましたが中へ入る入り口はどこにも見つかりません。一周してスタジアムに戻ってくると、中はがらんとして、あれだけいたバニーお姉さんたちがもうだれ一人残っていません。

「そんなあ……………」

 美月はひとりぽっち立ち尽くしてぼう然としました。


 美月はとぼとぼ迷路を歩きました。でぃーえすのレーダーを頼りに歩きましたが、広場に出てもモンスターは出てくることなく、美月はでぃーえすステーションでセーブだけして、お菓子を食べて休憩して、またとぼとぼ歩き出しました。こんなことなら無理してでも空飛ぶボートに乗せてもらうんだったと思いました。歩いても歩いても迷路は果てしなく、意地悪に行き止まりもあって、やっぱりふつうに歩いていたらゴールにたどり着くまで100年かかるんじゃないかと思いました。きっとぜんぶ黒岩三太郎は計画していたに違いありません。まさかと思いましたが本当に誰も自分をさがしに来てくれなかったらどうしようと思いました。いろいろケンカをしましたが、そんなに三太郎は自分が嫌いなんだろうかと美月は思いました。

「うっ、うっ、………………うええ〜〜〜〜〜ん………、ええ〜〜〜〜ん……………」

 かわいそうに、美月はとうとう泣き出してしまいました。泣きながらひとり歩き続けました。

「ええ〜〜〜ん、ええ〜〜〜ん……」

 すると、頭の上から、シャンシャンシャンシャンシャン、と、鈴の束が鳴る音が聞こえてきました。美月がぐすんぐすんと泣きながら見上げると、7頭のトナカイに引かれた空飛ぶソリが下りてきて、美月の頭の上の少し先に止まりました。そりから赤い帽子をかぶった白ひげのサンタがふりかえって言いました。

「おや。子どもの泣き声がするから来てみれば、お嬢ちゃんは黒サンタかい?」

 美月は腹立たしくて思わず大きな声で言いました。

「黒サンタなんて大嫌い! わたしはサンタ見習いです!」

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