15,ファイナルバトル!
壁に激突したコウタはヒットポイントのゲージが現れ、一気に150もポイントが減って、残りが40になってしまいました。もう1回でも何か攻撃を受けたらアウトです。客席からヒューヒュー!と興奮した口笛と歓声が上がりました。
「やっちゃえー! やっつけちゃえーー!」
黒バニーたちは手を振り上げて大興奮です。……日頃よっぽどストレスがたまっているのでしょうか?……
「危ない! コウタを守るんだ!」
マサキくんとイチロウ、コマツは慌ててコウタのところへ駆け寄ろうとしました。すると奥からフィールドの中に入ってつっきろうとしたマサキくんはモンスターの巨大な手にまともになぐられて吹っ飛ばされました。
「わああっ!!」
マサキくんは恐怖の悲鳴を上げて、ゲージが300も減ってしまいました。
モンスターはパンチをくり出しコウタを始末しようとしました。
「シールド!」
コウタを守ってイチロウとコマツが盾をかまえて防御しましたが、ドッカーンと跳ね飛ばされ、うわあと悲鳴を上げ、二人とも100ずつダメージを受けました。なんとかコウタを守りましたが、これでは三人ともやられてしまうのは時間の問題です。コウタは立ち上がり二人に言いました。
「オレはもう駄目だ。おまえら逃げて、あいつの攻略法を考えろ!」
「バーカ」
イチロウとコマツはコウタを振り返って笑いました。
「今のオレたちであのバケモノに勝てるかよ? あーあ、ちっくしょう、完全なデストラップだったな?」
「ひっきょーだよなー? あーあ、三人揃ってスタートからやり直しかよ。くっそー、腹立つなあ」
モンスターは完全に勝利を確信してキャーキャー歓声を上げるバニーのお姉さんたちにガッツポーズを取ってうおおーーっと吠えています。
マサキくんが三人のもとに駆けつけました。
「回復しなくちゃコウタくんが危ないね?」
「エナジーボールを出現させるためには敵に攻撃をクリーンヒットさせなきゃ駄目だろ? 下手にリーチの中に飛び込んでこっちがクリーンヒットされたら、ドラゴン帝王でもひん死のダメージを受けるぞ?」
それはさっきぶん殴られてマサキくんもよおく分かっていましたが、真剣な顔で三人に言いました。
「でも僕だってとてもあんな怪物に勝てないよ。みんなでいっしょに戦って、やられるんなら四人いっしょにスタートからやりなおそうよ?」
イチロウとコマツがうなずきました。
「そうだな。少しでもあいつにダメージを与えられそうなのはマサキだけだな。オレたちであいつの隙をつくって、マサキに攻撃を任せようぜ」
コウタもよし!とうなずきました。
「マサキ。あいつに死角はないぞ? ああいう奴は真っ正面からまっすぐ攻撃するんだ、かいしんの一撃がでやすいぞ? でかい顔して目と目の間があいてるから、大ジャンプして思いっきり剣を打ち込むんだ! マサキ。頼んだぜ!!」
マサキくんは緊張しながら力強くうなずきました。イチロウが言いました。
「おまえは後ろに回ってタイミングを待て。オレたちがチャンスを作ってやるから、見逃すなよ?」
マサキくんはうなずき、
「よし! レッツ・バトル!」
「オウッ!!!!」
と、かけ声を合わせると、マサキくんは壁沿いにモンスターの後ろに向かって走りました。ガッツポーズを取って吠えていたモンスターが気づいてマサキくんを追おうとしました。
「おまえの相手はオレだあ!」
イチロウが反対に走って
「ウォーターカッター!」
水の刃で攻撃しました。モンスターは怒ってイチロウに吠え立て、
「こっちも忘れんなよ、炎斬り!」
コウタも剣をふって炎を飛ばして攻撃しました。モンスターは怒り狂い、体を反らすと、
「カアッ!」
と、口から衝撃波を吐き出しました。そんな攻撃予想もしてなかったコウタはギクッとして逃げるのが遅れました。
「ダイハードブロック!」
コウタの前に飛び込んだコマツが全身を岩にして衝撃波を受けコウタを守りました。頑丈な土戦士の最大防御技も最強モンスターの攻撃をまともに受けて80のダメージを受けました。黒バニーたちはコウタをしとめ損なったモンスターにぶーぶーブーイングしました。コマツは歯を食いしばり、コウタを振り返って言いました。
「あんまり無茶すんなよ? 一人でも欠けたらオレたちの負けだ!」
「悪りい、油断した。サンキュー」
二人はニヤリと笑い、油断なくモンスターをにらみました。
「ウリャアッ!」
ジャンプしたイチロウがモンスターの肩に斬りかかりました。モンスターはよけることなく肩でタックルして振り下ろされた剣もろともイチロウを弾き飛ばしました。
「うわあああっ!」
イチロウは吹っ飛ばされて観客席のフェンスに激突しました。黒バニーたちは大興奮です。
「イチロウ!」
イチロウは一気に350のダメージを受けて残りヒットポイントが30になってしまいました。
「あいつも無茶しやがって…」
「いや、でも見ろ!」
斬られたモンスターの肩から小さな虹色の光のボールが現れてふわふわただよい出しました。
「エナジーボールが出た! 攻撃がきいたぞ!」
コウタとコマツは現れた希望の光に歓声を上げました。イチロウもグラウンドに下りるとイエイッ!と盾を立ててガッツポーズしました。しかし状況はもはやギリギリです。
「エナジーボールが出てもあいつのリーチ内じゃ取れないな。マサキに一発逆転を期待するしかねえな」
「最後の勝負だ、行くぜ!」
身軽なイチロウはフェンスに素早くよじ登り、力いっぱいの大ジャンプでモンスターの頭上をグラウンドの反対側へ飛びつつ、くるりと回転しながらウォーターカッターをくり出しました。モンスターがうるさく水の刃を振り払いつつイチロウを目で追うと、コマツの怪力で放り上げられたコウタがやはりモンスターの頭上を飛び越えつつ炎の剣で攻撃し、怒り狂ったモンスターが自分を追って吠えるのを確認し、
「マサキいっ! 今だあっ!」
叫びました。着地してくるコウタと入れ替えにマサキくんがまっすぐ思いきり大ジャンプし、コウタを追って振り返ったモンスターの真っ正面に迫り、
「うおおおおおおおっ!!!!」
思い切り大きな剣を振り下ろし、見事、モンスターの眉間に打ち込みました。
「ぎゃああああああっ!!!!」
モンスターは額を押さえて悲鳴を上げ、パアッと大きな虹の玉がいくつも散らばりました。
「エナジーボールだ!」
コウタはジャンプして体でボールを受け止め、一気にヒットポイントを全回復しました。イチロウもコマツもエナジーボールをつかまえて回復し、
「いっけーーーっ!」
全力でどとうの攻撃をしかけました。モンスターは攻撃を受けて暴れ回りましたが、ボンボン、エナジーボールを散らしました。
「マサキいーーっ!!!」
「うおおおおおおっ!!!!」
マサキくんはドラゴン大帝の最大必殺技ドラゴングランドクロスを放ちました。真っ白な十字の光線がモンスターの体をつらぬき、モンスターは仁王立ちすると、ドッカーーンッ!と虹色の大爆発を起こして消し飛んでしまいました。
経験値のゲージがぐるぐる回り、コウタ、イチロウ、コマツは、それぞれ炎、水、土のレベル99の最強戦士にレベルアップしました。
「やったーーーー!!!」
四人は駆け寄り、ハイタッチして大喜びしました。