13,勇者!
「うわあっ!」
ドッカーン!とよろい獣の大きな固いこぶしにパンチされてコウタは壁にたたきつけられました。ショックの割りには痛くありませんが、ダメージを受けると視界の上にゲージが現れて残りヒットポイントが表示されました。イチロウもコマツも次々ふっとばされてダメージを受けました。
「だめだあ、やっぱレベルが違いすぎる!」
「ちっくしょう、悔しいぜ」
「退却だあ!」
三人は元の通路に逃げ帰りました。よろい獣ジライアンが激しく炎を吐き出しました。
「うわああっ」
三人はダメージを受けて急激にヒットポイントが下がっていきました。
「きゃあっ!」
通路で見ていた美月はモンスターの炎をまともに浴びて悲鳴を上げましたが、
「あら? ぜんぜん熱くない」
3D映画で目の前に炎が迫ってきたようなもので、触ってもぜんぜん平気です。
「あはははは、なーんだ、バトルゲームに参加してない人はぜんぜん関係ないんだ?」
美月は炎を浴びてすっかり体が重くなってへばっている三人を見て大笑いしました。
「ほらほら頑張れ戦士たちい! だらしないぞお?」
美月は笑いながらマサキくんに言いました。
「ほらあ、君もかっこわるい戦士たちを応援してあげなよお?」
マサキくんは両方の拳を握りしめて
「がんばれえっ!」
と大声を上げました。そして、
「ああ悔しいなあ、僕もモンスターとバトルしたいなあ」
と本当に悔しそうに言いました。すると、空でキラッと星が光って何かヒューンと落ちてきて、コツンと美月の帽子の頭をたたきました。
「イッターイ! 何よこれ?」
帽子をクッションにして着地したのはシルバーブラック仕様のでぃーえすでした。それを見つけてマサキくんは、
「貸して!」
とうばい取るようにし、ゲーム機を開き、パワーをオンにしました。
「あった!」
叫ぶとボタンをタッチし、すると、ビュワワワワンン……、と効果音が鳴り響き、マサキくんのパジャマ姿が黄金に輝くと、なんと、かっこいいドラゴン大帝アルテミランのコスチュームに変身しました。
ドラゴン大帝のマサキくんは大きな剣をビュン!とふるい、大きくジャンプしてよろい獣に斬りつけました。虹色の火花がスパークし、よろい獣は悲鳴を上げて後退しました。
「すっげーー、かっちょいいーー」
ゲームマニアの三人は悔しいのも忘れてドラゴン大帝のかっこよさに目をキラキラさせました。その三人の前に青い光の玉が現れました。
「ラッキー、エナジーボールだ!」
三人が光の玉をつかむとヒットポイントのゲージが満タンになりました。
「よっしゃー! オレたちもリベンジだぜ!」
復活したコウタたちは強力な味方を得てすっかり元気になり、再びバトルを挑んでいきました。
「炎斬り!」
「ウォーターカッター!」
「岩石アターック!」
それぞれ必殺技でよろい獣を攻撃し、
「怒りの鉄十字!」
マサキくんがとどめを刺し、
「ギャオーーーーッ」
よろい獣はだんまつまの叫びを上げてドッカーン!と大爆発しました。
もうもうとした煙の中でピカッと光り、お菓子の木とでぃーえすステーションが現れました。
コウタたちの前に経験値のゲージが現れ、ぐんぐんグラフが上がりました。
「やった、一気にレベル8だ!」
コウタたち三人は大喜びで盛り上がりました。でもマサキくんの目の前には何も現れません。
「僕はなんにも出ないよ?」
「あったりめーじゃん」
コウタたちが笑いながら言いました。
「ドラゴン大帝なんて最強レベル99の最強キャラじゃん? それ以上強くなるわけねーだろ?」
「ああ、そうか」
マサキくんも笑いましたが、ちょっとつまらなそうでした。
「おまえいいなあ、ずるいな、かっこよすぎじゃん?」
コウタたちはマサキくんを取り囲んで笑いながらうらやましそうにしました。
「よし! ドラゴン大帝が味方ならオレたちは無敵だぜ! 行こうぜマサキ!」
「お…、オー!」
男の子たちは元気に拳をふりあげ新しく出現した通路に走っていきました。
「ったくもー、ガキどもが」
美月はお菓子の木から適当にお菓子をもぎとって
「待ちなさいよー!」
と男の子たちを追いかけました。