表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

01,サンタクロース候補生!

 黒くてでかくて角張っていてこわ〜い顔をした謎の黒いセールスマン、黒岩三太郎(くろいわさんたろう)の正体は、ぶっちゃけちゃうと、黒いサンタクロースなのでありました。

 サンタクロースと言えば赤いコートを着た白ひげ、大きなお腹をした、優しいおじいさんがパッと思い浮かぶでしょうが、それはよい子のための「赤いサンタクロース」。

 実はサンタには「黒いサンタクロース」もいて、彼らは悪い子専門のこわ〜いサンタクロースたちなのでした。

 さて、「サンタクロースたち」と言うと、サンタクロースが何人もいるみたいですが、その通り、サンタクロースは実は何人もいるのです。12月になって街に出てみればあちこちに赤い服を着たサンタさんがいっぱいいますものね。いえいえ、彼らはおもちゃ屋さんやケーキ屋さんに雇われたアルバイトのお兄さんだったりするのがたいていですが、実は、彼らにまぎれてこっそり本物のサンタクロースがいるのかもしれませんよ?

 ま、それでもふつう見かけるのは赤いサンタさんですね? 黒いサンタはめったに見ることはありません。それもそのはず、彼らは赤いサンタの影に隠れてこっそり活動する「裏サンタ」たちなので、黒い服を着ていても一見サンタとは思えないかっこうをしているのです。だいたい、例えば日本の黒サンタである黒岩三太郎など、固い針金みたいな黒髪をして、定規で線を引いたみたいな目をして、見るからに凶悪そうなロシアのマフィアみたいな顔と体つきをしているのですから、よい子は一目見ただけで泣き出してしまいそうです。こんなのが裏の黒サンタとはいえ「サンタクロース」を名乗っているのですから笑っちゃいます。

 さあて黒岩三太郎は今、北極のサンタランドの事務局に呼び出されて来ています。このサンタランドには世界でただ一人の「オリジナルのサンタクロース」が住んでいて、オリジナルのサンタクロースはとてもお年なので世界中を飛び回る厳しいサンタの仕事はとてもたいへんなので、サンタの仕事をするサンタクロース公認の「本物のサンタクロース」たちがたくさんいて、彼らはクリスマスの夜までの間、1年中せっせとここサンタランドの工場で子どもたちのプレゼントを作っているのです。

 さてさて線を引っ張ったこわい顔の三太郎は仏頂面をして、せっせとそろそろ近くなってきたクリスマスのプレゼント作りに忙しい赤サンタたちなど見向きもせずに、呼び出されたサンタ事務局の部屋へ入っていきました。


「このクソ忙しい時に俺を呼び出すとはなんの用だ?」

 三太郎は不機嫌な重い声で白ひげのやせたおじいさんサンタに言いました。このおじいさんはサンタの仕事全体を取り仕切る事務局のえら〜いサンタさんですが、このようにやせたサンタクロースもいるのです。優しいおじいさんサンタはでかい三太郎の無礼な口の聞き方にもニコニコして、一人の女の子を紹介しました。

「こちらはサンタクロース候補生で、黒いサンタクロースになることを希望している村上美月(むらかみみつき)さん。君の見習いに付いてもらうから、よろしく頼みますよ」

「黒サンタの見習いだあ〜あ〜?」

 三太郎は思いっきり渋い顔で紹介された村上美月さんをにらむように見下ろしました。

 村上美月さんは見たところ中学校の……1年生くらいのスマートな女の子でした。サンタクロースは普通の人間に比べてうんと長生きですが、それでもこうして年を取りますので、時々こうして新しいサンタクロースになってくれる若い人をスカウトするのです。どういう人がサンタクロース候補に選ばれるかは……秘密です。美月さんは白い服とスカートをはいて、ものおじせずにニッコリ、スカートのはしをつまんで、

「村上美月です。ミッキーって呼んでください」

 とあいさつしました。三太郎はぶっきらぼうに

「呼ばねえよ」

 と言いました。

「まったく、めんどくせーなー」

 三太郎はお行儀悪くボリボリ頭をかいて、嫌そうな顔で事務局の長官さんを見ました。おじいさんサンタはニコニコして

「三太郎くん。よろしく、おねがいしましたよ?」

 と念押ししました。

「へえ〜〜い」

 三太郎は仕方なく嫌々返事をしました。

「それでは美月さん。こちらの黒いサンタクロース、黒岩三太郎くんがあなたの先生になりますから、よおく黒サンタのお仕事を習ってください」

「はい!」

 美月さんは嬉しそうに元気よく返事をしました。

「黒岩先生。よろしくお願いします!」

 元気におじぎをされて三太郎は

「ま、頑張ってくれや」

 とめんどうくさそうに言いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ