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プロローグ

「ハァ、ハァ、ハァ……!」

 荒い呼吸と悲鳴が、崩れかけた街路に響く。

 逃げ惑う住民の背後には、黒く蠢く影――魂食。

 小型、中型が溢れ、通りという通りを埋め尽くしていた。

「パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!」

「くそっ! 切りがねー!」

 銃を撃ちながら、男は怒鳴る。

 撃ち抜かれた魂食は霧散するが、その隙間を埋めるように次が迫る。

「そっちじゃねー!」

 避難誘導の声。

 直後、別方向から銃声が重なる。

「パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!」

 武装した男たちが次々と魂食を消していく。

 それでも数は減らない。黒い波は、じわじわと街を呑み込んでいく。

「あっ……あっあっ……」

 ひとりの住民が立ち止まった。

 身体から黒い霧が滲み出す。

 魂が軋み、悲鳴とも呻きともつかない声が漏れる。

「くそっ! こいつもかよっ!」

「パンッ」

 乾いた銃声。

 だが間に合わない。

 住人だった魂は、黒へと崩れ、“魂食”へと変わった。

 誰もが理解する。

 次は俺か?

 私か?

 隣の奴か?

 みんなが――?

「ここは……終わりかよ?」

 銃を構えた男が呟く。

 背には大剣とランチャー。腰には剣。

 全身を武器で固めながらも、その瞳には無力の色が滲んでいた。

「神の使者は、もう消えたのか……?」

 空を仰ぐ。

 地上の惨劇とは裏腹に、澄み切った青空が広がっている。

 だが、そこにカラスの姿はない。

 救いは来ない。

 建物が崩れ、生きていた魂が次々と呑まれていく。

 黒い影は街を覆い、触れた魂を削り取っていく。

 やがて――

 何の前触れもなく、魂食は霧のように掻き消え始めた。

 ひとつ、またひとつと、跡形もなく無へ還る。

 銃声も、悲鳴も、足音も消えた。

 静寂。

 魂食がすべて無に還った時、そこに残っていたのは瓦礫と沈黙だけだった。

 一つの街が――壊滅していた。

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