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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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14.船橋騒乱①

 夏休みも残すところあと数日。宿題をすべて終えた智たちは学校が始まる前の最後の訓練として船橋ダンジョンに行く予定をしていた。本来であれば俺が付き添いで行くんだけど、幼稚園が夏休みを少し早く終わるのでその手伝いをしなきゃいけないんだ。


「え、守がいけないのー?」

「幼稚園が始まるんだよ」

「うーー、どうしよう、足立たちにはおっけーっていっちゃったよー」


 智もだけど四街道ちゃんと柏ちゃんも困ってる。あそこに行ってもレベルは上がらないけどチームワークを磨くにはちょうどいいんだって。


「うーん、ぶっちゃけ俺がいなくても危険はないんだろうけど、でもそれは怖い」


 悩む。行かせたい気持ちが強いけど、心配な気持ちも強い。絶対安全なんてダンジョンにはないんだ。


『俺が行こう』


 ちゃぶ台でみたらし団子にかぶりついてたショタ零士くんが立ち上がった。タレ口がでベタベタだ。

 精神までショタになってませんか?


「師匠がついてくれるんですか!?」


 四街道ちゃんが嬉しそうに叫んだ。


「零士さん、ダンジョンでその恰好(武者姿)は目立つんじゃ?」

『小さくなってキーホルダーくらいになって荷物にでも潜んでればわからんだろ』

「小さくかー」


 それもありかな。


「じゃあ師匠は弟子たるわたしが所持します!」


 四街道ちゃんがショタ零士君を抱き上げてウェットティッシュで口を拭いてる。四街道ちゃんは弟子を勘違いしてないかな。お世話係じゃないぞ?

 だけどそう話はまとまった。




 翌日の船橋ダンジョン。ダンジョン入り口の待合場所はハンターらが屯っている。その集団の中に美浦ら市船ハンターコースの3馬鹿も、そしてその先輩のチンピラどももいた。

 ブラックスワンという名の8人パーティで20歳から24歳の男性ハンターで構成されている。レベルは平均すると8に届かず、最高でもリーダーの利根が14と低い。まだ正式にハンターになっていない佐倉以下だった。

 彼らの主な目的はナンパとヤリモクでファッションハンターともいえた。


「昨日も空振りだったな」

「美浦、その子はいつくるんだ?」

「たぶん今日は、来ると思います」

「昨日もそういってたよなぁ?」


 どうやら何日も張っているらしいが空振りばかりのようで、大変機嫌が悪い。美浦もびくびくしている。

 かなり空気は悪い。

 だが、今は船橋ダンジョン全体が悪い空気で充満していた。



 鍛錬当日、寺から向かったのは桜前線の3人で、現地でポニーの4人と合流する手筈になっている。今日は守がいないので電車で向かった。武器類は専用の入れ物で運ぶことにしている。


『なあ四街道』


 ミニ零士はキーホルダーの大きさになって、四街道の胸ポケに入れられてた。武者ぬいぐるみ零士君となっている。

 今日の四街道は紺のスカートに紺のポロシャツと夏のJKのいでたちだ。ジャージには現地で着替える予定だ。


『この場所はどうかと思うぞ?』

「つーん」

『おい四街道!』

「弟子の名前は美奈子です」

『いや四街道だろ?』

「名前は美奈子、です」

『いや、寺だと四街道って』

「美奈子、です。美奈子って呼んでもらえたら返事をしまーす」

『なんなんだ……ったく』


 電車内なので小声で言い合っている。佐倉と柏が側に立ってガードしているので声が漏れることはない。佐倉は少し不安げな顔をしているが笑顔で隠すことにした。


 船橋ギルドに到着すると更衣室で着替えをしてダンジョン入り口へ向かう。船橋ダンジョン入り口にはハンターの姿はあるがジャージはほぼいない。みな宿題は無事に終えたようだ。

 「おーいこっちこっちー」と手招きするジャージの4人。ポニーの面々だ。


「おいっすー」

「おはよー」

「さーくらーちゃーん」


 佐倉が挨拶をしているとツインテールの品川にがしっと肩を組まれる。他の3人は佐倉を逃さないようにしっかり囲っている。


「おにーさんとランドデートしたんだってー?」

「帰ったのも夜遅かったとか?」

「で、おにーさんとは()()()の?」

「どうだった? やっぱ痛い?」


 質問攻めだ。すでに知っている四街道と柏はにやにやして眺めている。


「守とデートはしたけど、ど、どうでもいいでしょ?」


 佐倉は品川の腕を持ち上げてホールドから抜け出す。にやつくポニーの面々。


「おやー、呼び方が変わってますなー」

「親密度も大幅アップですなー」

()()()ね、あれは。間違いない」

「大人の階段を上がっちゃったのかー」


 「きゃー」と4人の黄色い声が響く。そんなダンジョン入り口にはジャージを着ていない美穂、神栖、鹿島の3バカがいた。


「ちっ、うるせーなーブスどもが」 

「でもやっと来たぜ」

「あいつがいねえけど、好都合だ。先輩に連絡するぞ」


 3バカはその場から静かに去っていった。

 そんな様子を、うまい棒をかじりつつ遠くから眺めている大多喜の姿は、誰も気が付いていなかった。


「よーし、今日もご安全に!」

「「「「「「ご安全に!」」」」」」

「増長しない!」

「「「「「「増長しない」」」」」」

「いくぞー!」

「「「「「「おー!」」」」」」


 7人は手をつなぎパーティ結成をするといつもの掛け声でダンジョンに入る。


「ん、ちょっと人が多くなってる?」


 佐倉は降りてすぐに違和感を覚えた。

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