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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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12.北浦スタンピード④

 裸のままのアイアンビッチさんが俺を指さして歩いてくる。歩くたびにぶるんばるん揺れまくってて男どもの視線を独占しててすごい。


「お嬢、ちょっと待って!」

「お嬢、裸はやべーっす!」

「お嬢、上着を持ってきたぜ!」


 アイアンビッチさんの後を追ってきた男が3人。ホストみたいな恰好して赤青黄色の髪で、なんかすごい。


「上着など無用よ! 私の体が見苦しいとでもいうのかしら?」

「そんな、お嬢は世界一です!」

「俺のお嬢は宇宙一っす!」

「お嬢の体をほかの男に見せたくないんだ!」


 なんだこれ、キャバ嬢に群がる男3人って構図?


「あの3人はアイアンビッチの配偶者です」

「は? 逆ハーなの?」

「信号機の騎士と言われてますね。レベル20を超えたハンターなので強いは強いんです」


 京香さんが虚無の顔してる。


「私を誰だと思っているの? 日本で10人しかいないユニークスキル持ちのアイアンビューティーですわよ!」

 

 アイアンビッチってさんですよね、なんて口にはできない。 

 そういえば名前は知らない。


「上野 ちょう27歳。ユニークスキル【金剛体】を持つ。(小声で) 強くはないものの、魔物を倒しまくってスタンピード予防と魔石を供給してくれるのでギルド的にはありがたい存在です。ただ、肉弾戦をするために服が破けるのでレオタードか水着で戦い、ご自慢のFカップが大きくブルンバルンするので男性に人気が高いハンターです」


 京香先生から知恵袋入りました。


「私の前から去るなんて、いい度胸をしてますわね」


 アイアンビッチさんが俺の行く手をふさぐように仁王立ちする。すごいおっぱいだけど瀬奈さんには劣るな。でもさすがに全裸は視線を外さざるをえない。


「わたくしが美しすぎて直視ができないようね。それはそう、陰毛を含む一切のムダ毛を脱毛した輝くボディが眩しいのでしょう。そこの貧相な女を連れているくらいいですし」

「……なんだと?」


 聞き捨てならん。


「あら、あなたは貧相な女がお好みなのかしら?」

「よし、黙っとけ」


 問答無用で【説法】をかけた。ぐしゃっと崩れるアイアンビッチさん。こっちに股を開いて倒れたので見えてはいけないものが御開帳だが信号機が素早く上着をかけた。

 だがギルティなので許さん。でもおっぱいに貴賤はない。


「お嬢がすまない」

「これでもお嬢に悪気はないんす」

「申し訳ない」


 信号機君らがぺこぺこ謝ってきた。彼らも好きで伴侶になったんだろうけど、苦労してそうだな。それでもくっついていくんだからビッチさんには何かしらの魅力があるんだろうね。

 許さないけど、対応はしよう。

 京香さんを抱き寄せておく。


「俺に用事があったように見えたけど、何用ですか?」

「あぁ、俺はお嬢の伴侶のひとりで鶯谷というものだ。お嬢が声をかけたのは倒した魔物の魔石について話し合いがしたかったからなんだ」

「倒した魔物の魔石?」

「俺はお嬢の伴侶のひとりで田端っていうっす。スタンピードの時は乱戦になるんで倒した魔物の魔石の所有権は収まった後で関係したハンター間で話し合うんっす」

「あー、そうなんだ。自分が倒した分は自分で確保してるんで、それ以外は好きにしてください」

「ちょっと待ってくれ。俺はお嬢の伴侶のひとりで神田という。それはありがたいんだがそれをされるとお嬢がすねるんで、話し合いだけでもしてもらえないだろうか」


 信号機が代わる代わる話をしてきた。青黄赤の順番だ。信号機なら赤青黄色だろうに。

 時間を確認すれば、すでに21時を回っている。正直、帰りたい。


「お断りします。魔石はいりません。用事があれば本寺まで来てください」


 京香さん調べでは、入ダンジョンした未帰還ハンターは100人以上いるけど3階よりも先に行っているハンターもいることを考慮しても犠牲者は10名ほどになると予測。みなカエルに飲み込まれてしまって遺体も残らないだろうとのこと。魔石のお金は彼らの遺族とかに使ってほしい。


「京香さん、帰りましょう」


 ダンジョンの入り口に向かって合掌。亡くなられた方が輪廻の輪に戻られることを祈って。







 小湊京香が帰宅したのは23時近くだった。湿気と汗でべとべとになっており、一刻も早く風呂できれいになりたかった。勝浦と佐倉は母屋で守の帰宅を待っていて不在だ。今頃は抱きついていることだろう。


「あのまま守君とホテルの風呂できれいになるというのも手でしたが、瀬奈先輩が先です」


 小湊さっと汗を流して湯船で膝を抱える。


「おっぱいの大きさが正義ではないけど、ああも強調されると堪えます」


 ブクブクブクブクと湯面に口を沈めながらぶちぶち文句を言う。


「守君が変態ではないのが救いですが智も大きいから私は不利です。負けるのは嫌」


 悶悶悶悶。いやな考えが渦巻いてしまう。


「いけませんね、もう出ましょう」


 小湊が出ると、リビングには勝浦と佐倉の姿があった。意外にもすぐに帰ってきたようだ。


「京香ちゃんお疲れ様。大変だったみたいねー」

「京香さんお疲れ様です」

「守君の力をもってすれば苦労はないのですがアイアンビッチがいたので」


 小湊が少し疲れた表情をみせた。


「守くんも疲れた顔で話してくれたわー。よりによってあの人がいるとはねー」

「裸で戦ってるって何考えてるのか理解できない」

「そのおかげで犠牲者が少なくて済んだ面もあった様です」


 彼女が単独でかき回した結果ハンターへの圧力が減っていたのだ。


「ですが、今回はとても良いものが手に入りました」


 小湊はショルダーバッグから性欲ポーションを出す。大きさ的にはごくごく小さいニトロ(緊急薬)ケースほどの瓶に赤い液体が揺れている。


「あら、性欲ポーション!」

「性、欲ゥゥ??」


 それを見た勝浦が喜色満面になり、佐倉は耳まで赤くする。


「12本あります。ひとりあたり3回分です」

「ままままずはわたしからでいいかしらー? エッチなことには一番慣れてるし私が一番年上だしやっぱりコーユーことは歳の順だと思うしー」


 急に早口になる勝浦。笑顔ではあるがどこかに焦りも見える。小湊はそんな勝浦を抱きしめた。


「瀬奈先輩。守君は裏切ったりはしませんよ」

「でででもわたしには体しかないから」

「守君はおっぱいは見るけど、ちゃんと()()()()を見てますから」

「うん、守おにーさんはちゃんと瀬奈()()()()()()を見てるよ」

「でも、わたしと付き合った男は最初は優しいけど結局はほかの女のとこに行ってしまうのよー。体だけなんていつかは飽きちゃうのよー」


 「どうせ男は見てくれで選ぶんだ!」と勝浦は駄々っ子になっている。

 恵体ゆえに自分に自信が持てないのだ。もっとも酒を好む勝浦にも原因はあるのだがそれはさておき。


「じゃあこうしませんか。それぞれ守君とデートしましょう」

「デート?」

「デデデデート!」

「はい。私たちは出し抜きを禁じるために個人でのデートを避けてきましたが、もう関係なくなりました。みんな平等に嫁ぐわけです。であるならば、より深く守君を知るためにも、私はふたりでゆっくり話をしたい」

「……そうねー。わたしも守くんとさしで飲んでみたかったしー」

「ああああたしは」

「智、遠慮はいりません。守君と遊びに行ってより彼を知るのは大切なことだと思います」

「はははずかしくって!」

「おや、それならばデートの機会を譲ってくれませんか?」

「それは嫌! あたしだってふたりで遊びに行きたい!」

「では早速そう動きましょう。まずは瀬奈先輩でいいですか?」

「わかった。がんばってくるわー!」


 そういうことになった。

 翌朝、守はそう聞いたのだった。

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