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1.ダンジョン発生⑤

 階段を降りると、1階と同じ景色が広がっていた。つまり、墓地だ。違うのは、墓石がやや大きくなっていることだった。

 墓石ってのは、だいたい背の高さくらいになんだけど、目に付く墓石たちは明らかに高い。2メートルはありそうだ。そしてその墓石の隙間から見える骨も背が高くなっていた。ゴブリン骨とは違うのかも。


「やることは変わらない。よりいっそうご安全にだな」


 竹ぼうきを握り締める。2階は階段の背後にも墓地が広がっている。ただ、土塀に囲まれた広さは1階と同じように感じる。階段の位置が墓地の真ん中にある。

 遭遇したのは単体の骨だ。コシャン、コシャンと石畳みの上を骨が歩いてくる。高さは俺くらい、つまり成人男性の平均程度だ。明らかに骨が太い。ゴブリン骨よりも重量があるのか、音も重い。額部分にはやはり角があり、これも大きい。人間の骨ではないのは明らかだ。


「だが、成仏してもらうぞ!」


 骨だけに。

 周囲を確認、他に骨は無し。ほうきを構え骨を待つ。リーチが長いからか、すぐに近くまで来た。俺を掴もうと腕を伸ばしてくる。


「えいやっ!」


 気合一発竹ぼうきを突き出すと、骨はほうきを掴もうとしてきた。だがそれは悪手だ。


「残念だけど、触れればいいのだ」


 竹ぼうきが骨に触れた瞬間、そいつの姿は消えた。


「ホブゴブリンスケルトン?」


 収納されたそいつは【収納:ホブゴブリンスケルトン×1】とあった。ゴブリン骨とは違うのか亜種なのか。名前に共通点があるけど大きさが違うから、ハツカネズミとドブネズミくらいの差はあるのかも。


「おっと、次が来たか」


 考え事をしてたら墓石の隙間から骨が見えた。こっちに近寄ってきてる。ホブゴブリン骨はやはり単体だ。単体は助かる。大きいから複数で来られるとちょっとコワイ。

 相手が単体のうちに【師走】スキルを試そう。足が速くなると言ってもどれほどなのか。

 ほうきを槍のように脇に抱えて走り出す。


「【師走】」


 一応叫んでみました。念じればいいだけなんだけど、ここには誰もいないし。

 グッと足を踏み込むと、身体が一気に加速する。10メートルを4歩で駆け、骨とすれ違いざまにほうきを当て収納してしまう。辻斬りだ。

 【ホブゴブリンスケルトン×2】となったので同じ種のようだ。

 こいつは大きいけどそこまで動きは早くない。掴もうとしてくるから、捕まったらゲームオーバーだろう。


「ゲームだと先に行くにつれて敵が強くなっていくけど、ダンジョンもそうなのかな」


 戻ったら色々調べないと。俺の命がかかってるんだし。


「ここも掃除しておかないとだめだよな」


 ということで2階を徘徊する。下へ行く階段があったけどスルーしてこの階の掃除を優先する。


「くそ、やっぱりか」


 ホブゴブリン骨とゴブリン骨の混群に遭遇した。デカいヤツ1体にチビが4体もいる。おまけにそいつらの後ろの遠くにも骨がいた。いきなりハードルが高すぎる! 


「動きは早くないから墓石を利用して各個撃破するべし」


 卑怯というなかれ。こっちは数で負けてるんだよ。

 墓石に身を隠しながら竹ぼうきを突き出して収納していく。骨の動きが遅いからできる戦法だ。

 【師走】で駆け寄ってはほうきを当てて収納して離れるというヒットアンドウェイ戦法も使った。

 30分くらいでホブゴブリン骨10体、ゴブリン骨33体を収納した。【師走】で走り回ったからか数が多いぞ。


「ってことは、昨日減らした数ってのは結構な数だったことになる。1階の骨が2階よりも少なかったし」


 昨日は125体もいたんだよな。

 コツコツ減らしてれば魔物があふれることはないかもしれない。ちょっと希望が持てたかも。

 地上に出て収納してたやつらを経験値と魔石にしてもレベルは上がらなかった。ゲームだとレベルが上がるにつれて上がりにくくなるから、そうなのかも。


現在の俺。

坂場守

レベル:5

スキル:【仏の懐】【師走】

熟練度:1


 これが頭に浮かぶから、いわゆるステータスってやつかもしれない。




 夕飯時、父さんとテレビのニュースを見てたら、緊急ニュースが入ってきた。


「たったいま入ったったニュースですが、青森の三沢空港ダンジョンでスタンピードが発生しました」


 アナウンサーの言葉に俺も父さんも飯を食う手が止まった。あまりにも今の自分たちに直結しそうだからだ。


「青森三沢ギルドのハンターと自衛隊が協力して鎮圧に動いており周辺に被害はないとのことですが、周辺の住民には避難指示が出ております」


 俺と父さんの視線があう。


「これがうちで起きたら、どうしようもないかも」

「守のスキルでどうにかならないか」

「日中で俺がすぐに気がつけば何とかなるかもだけど、いまみたいに夜とか夜中に起きたらどうしようもない」

「……そうか」


 父さんがテレビに視線を戻した。

 俺のスキルは確かにチートみたいな能力だけど、それは俺が動けていればの話で、例えば風呂に入ってる最中にスタンピードが起きてもすぐには対処できないし、すぐに対処しないと近所に魔物が向かっちゃう。


「繰り返します。青森の三沢空港ダンジョンでスタンピードが発生しましたが青森三沢ギルドのハンターと自衛隊が協力して鎮圧に動いており周辺に被害はありません。現地と中継が繋がりました」


 映像が切り替わり、ヘルメットをかぶった男性アナウンサーがマイクを持っている。背後には戦闘機らしきものも映っているので三沢基地なんだろう。警察官が黄色いテープで立ち入り禁止にしていたり、迷彩服の自衛隊員が剣を持ってたり、ハンターだろうプロテクターをつけた女性が斧を持ってたりと、だいぶカオスだ。


「えー、三沢空港です。現在、ダンジョン入り口はギルドが押さえており魔物は外に出ていないと報道各社に説明がありました」


 やっぱりダンジョンにはギルドがあって職員とかハンターなんかが常駐してるんだろうな。


「三沢空港ダンジョンはおもに獣型の魔物が出るダンジョンです、あ、担架でハンターが運ばれていきます!」

「そちらの被害状況などはわかりますか」

「警察からの発表では、内部にいたハンター12人が死傷とのことです」

「なにが起きたのでしょうか」

「警察の関係者からの情報では、地下3階に突然100体以上の魔物が出現したとのことです」

「ありがとうございました。先日にはヨーロッパのオランダ(正式名称はネザーランドです)で大規模スタンピードが起きたばかりです」


 アナウンサーはそう言ってしめ、普段のニュースへ戻っていった。俺と父さんは無言だ。


「スタンピードって、結構頻繁に起きるのか……」


 うちはどうなんだろう。今までの生活でダンジョンなんて意識したことがなかったから、さっぱりだ。


「とりあえず、毎日見回りするしかないだろう。父さんも色々調べてみるよ」


 不安しかないけど、その夜は早めに寝た。

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