52.ダンジョン踏破が流行り?④
その頃、ダンジョンへ向かったAチームと特戦群9人は、すでに中にいたポニーの4人と合流していた。
「あっちがランク1の【備後】と【神西】で、こっちがランク3の【日比谷】で、あれがランク2の【佐渡島】っす。墓地ダンジョンの階段は通路の先っす」
野田が一緒に来た自衛隊員に説明する。Aチームとポニーはそれぞれ武器を、隊員は刀を持っている。隊員の中で一番年嵩の男性が手を上げた。おそらくリーダーだろう。
「一番やばそうなのはどれだろうか」
「「「「墓地ダンジョンです」」」」
Aチームとポニーの答えは一致した。
「行けるところまで行きたいんだが」
「俺らが行けるのは5階までっすね」
「ただ、数分で撤退ですけど」
「では5階へ行こう」
2階3階とAチームが先導するが骨と戦うのは隊員だった。音もなく駆け寄り一刀で光にしていく。鮮やかな動作にAチームは「おー」と感嘆の声を上げた。
「動きに無駄がねえ」
「あの足運びはいいな」
「こんな感じか?」
「音は出るぞ?」
「靴を変えないとダメかもな」
ひそひそ話をしているが隊員たちにまるっと聞こえている。試行錯誤をしている若者を暖かく見守る目をしていた。
4階の階段を下りればワイトとスケルトンナイトが4体いた。
『ギィィィ!』
ワイトに先手を取られ【カース】を打たれた。全員の動きが緩慢になる。とどめとばかりにファイヤーボールが飛んでくる。
「太田頼む!」
「りょ!」
太田に指示した足立がファイヤーボールを放ち爆発させて相殺し、太田が放った矢がその爆風を貫いてワイトの頭部を粉砕した。
「「【キュア】!」」
渋谷が品川を、千葉が館山の【カース】を解除する。身軽になった品川と館山がダッシュしスケルトンナイトを撃破した。
この程度はもはや苦ではないのだ。
ワイトが倒され、【カース】が解除される。
「見事なもんだな」
「なるほど、これが獄楽寺のハンターか」
「新潟の三条司令が絶賛したのも頷ける」
「我々も魔法を覚えれば一皮むけそうだな」
今度は隊員がなにやら話をしていた。
「さて。これからが問題の5階です。ともかく魔物の数がハンパないです」
千葉が説明すると同時にAチームとポニーの顔が引き締まる。軽くなど考えてはいけない階だ。
「心得た」
隊員の顔にも緊張が走った。
5階へ降りた一行は地下墓地の通路を前に武器を構えて周囲に目を配る。
「ここからはレイスが出てくるんですけど、あいつら壁を抜けてくるんで」
「来た! 悟!」
「任せろ! 【闘刃】!」
市原が大剣を振るうと闘刃が飛び出し、レイスを両断した。
「ほう。飛び道具もあるのか」
「来たよ!」
足立が叫ぶ。
隊員が感心する間もなく、脇の通路からマミーがあふれてきた。包帯を巻いたミイラにも隊員はひるまず刀を構えた。
「こいつらは力でごり押ししかしてこないけど、無限に湧くんでやばそうなら撤退です!」
「了解! 強度チェックだ!」
「「「「ラー!」」」」
ゆっくり歩いてくるマミーに対して隊員はまず蹴りを入れマミーの体勢を崩し首をはねていく。だがマミーは止まらない。頭がなくても動くのだ。
「チッ、足を狙え!」
「「「「ラー!」」」」
低い姿勢で突っ込みマミーの直前でふわっと位置を変え、そのまま刀で足を斬り落とす。行動不能になったマミーには目もくれず、次のマミーに突っ込んでいった。
9人の隊員がばらばらに動いたり協力したりと変幻自在な動きをする。瞬間瞬間の判断が速い。
「やるなぁ」
「負けてらんないね!」
ハンター9人の闘志に火が付いた。
「太田、ワイトとレイスは頼む!」
「ま、まかせて!」
9+9による蹂躙が始まった。
通路奥から来るワイトは【カース】を打たれる前に太田が処理し、押し寄せるマミーは剣と刀を持った隊員とハンターが斬り捨てていく。ファイヤーボールを食らうがひるむことはない。
「すさまじい数だな!」
「ATM飛ばしてえ!」
「たのしーっす隊長!」
「そーっすよね!」
「だよねー!」
どっちも蛮族しかいないようだ。が、体力は有限だ。10分もすると息が乱れ、動きに精細さがなくなる。
「撤退した方がいいっす」
「確かにそうだな」
千葉が進言すれば隊員のリーダーも賛同する。部下の動きを見ての判断だろう。
「総員退却」
「最後にぶっ放して帰るぞ!」
「よっしゃ!」
隊員とポニーが階段を上る間にAチームの5人が殿で横に並んだ。武器を前に突き出す。
「「「「「【吹雪】!」」」」」
5重の猛吹雪がマミーを襲った。
「逃げるぞ!」
「てっしゅー!」
5人も階段を駆け上がっていった。
その後は各ダンジョンへ入っては魔物と戦闘を繰り返し、気が付けば夕方近くになっていた。急いで地上へ向かえば、本堂前で談笑している厳島大臣と住職である司を見つけた。
「お、帰ってきましたね」
「遅れて申し訳ありません」
大臣に見つかり、リーダーが敬礼をする。
「楽しんだようで何よりです。部下が戻ってきましたので我々はこの辺でお暇させていただきます。長々とすみませんな」
「いえいえ、こんな小さな寺にご足労いただきまして」
「用がある方が出向くものですのでね。では失礼いたします」
敬礼と合掌をかわし、防衛省一行は装甲車に乗り込んだ。
畑を突っ切る農道を走る車内で、後部座席に乗る厳島が前席にいるリーダーに声をかける。
「ダンジョンはどうだった?」
「は。各ダンジョンへ入り魔物と戦闘をしました。今の我々では対処不可なものもいましたが、隊員の育成ならば問題ないかと」
「ふむふむ。彼らはどうでしたか?」
「対人、対魔物と戦う相手が違うので比較はできませんが、高校卒業したばかりであの動きは脅威です。ダンジョンに対して真剣で、しかも我々を観察して自分たちも真似してみようという貪欲さもありました」
「さすがは獄楽寺のハンターかー。しかもあれ以上がいるのと、今日会った彼がさらに上だっていうし。どうなってるんだか、あそこは」
厳島がやれやれと肩をすくめる。
「アメリカが頼りにならないし、あそこを調略しないと我が国もやばそうだし。まじめにやるかなー。あ、コンビニに寄って。みんなのコーヒーとおやつを買おうよ」
厳島はふふんとご機嫌に鼻を鳴らした。




