52.ダンジョン踏破が流行り?①
4月の下旬。ゴールデンウィーク直前で世の中も浮わついてるように感じる。
そんな空気の中、四国を拠点とするクラン【ガシャ髑髏】が【道後温泉】ダンジョンの踏破を配信すると言い出した。
【道後温泉】ダンジョンは【いわき】【神西】ダンジョンと同じくゴブリン系のダンジョンでランクも1と確かに踏破はしやすそうに思える。
クラン【ガシャ髑髏】
構成人数23人
リーダー 松山 千春 23歳 LV15
サブ 宇和島 礼 23歳 LV14
サブ 今治 大樹 22歳 LV14
ってのが公式サイトにあった。一番レベルが高いのがリーダーの松山氏。
熟練度は4らしいので、まじめに活動はしてない感じ。まじめならあと3つくらいはレベルが高いんじゃないかってのが零士くんの評価。
「1年目でレベル8。2年目でレベル13ないし14、3年目でレベル16が理想だな。有益なスキルを得ていればもっと早いだろう」
零士くんの感覚だとこうらしい。レベル15からはなかなか上がらないので1年で2レベル上がれば上等なんだって。理想が高すぎやしません?
「すでにレベル27な俺は?」
「俺は常識内にいるやつしかわからん」
「ひどい!」
コントめいたことをやっている間にガシャ髑髏はダンジョン入り口で配信を開始した。
画面には黒髪イケメンが映ってる。アップでもイケメンってことは、相当なイケメンだ。
そのイケメン成分のごく一部でもいいから俺に欲しい。
『今から道後温泉ダンジョンを踏破してきます!』
『ポーションもたっぷり持ちました!』
『ランク1ダンジョンなんて楽勝だぜ!』
武器を持って意気揚々の若い男たち。24人でアタックするとしゃべっている。
——千春さんカッコいい!
——千春さんなら余裕でしょ!
——作務衣ばっかり目立つのはイヤ
——それな
リーダーはイケメンで人気があるからかコメントにも黄色い声が飛んでる。
『踏破したら入り口に出てくるはずなんで、カメラはここに固定で置いていきます!』
『楽しんでいってね!』
『すぐに出てくるぜ!』
ガシャ髑髏のメンバーがダンジョンの階段を下りていく。
——死ぬなよ
——期待してるぜ
——あれだけ多けりゃ楽勝だろ
——いてらー
——無謀じゃね?
全員が入ってしまった後は、ただダンジョンの階段付近が映されているだけだ。
——ひまだな
——マジでこのまま放置?
——しりとりでもするか?
——寝よ
放置らしい。
見続けるのは、俺と京香さん。零士くんは「3時間したら戻ってくる」と言ってダンジョンへ行っちゃった。
瀬奈さんは産婦人科で出産日の相談をしに行ってる。実はお腹にいるのが双子ちゃんなので帝王切開にするから日程が決められるんだって。病院の都合もあるからまずは可能日の確認だ。
智ら【桜前線】+京子ちゃんは勝浦ダンジョンへ遠征に行ってる。葉子ちゃん京子ちゃんの金髪コンビの仲が良いので智らと一緒に行動することが出てきた。京子ちゃんもマブ友人ができて楽しそうだし、母の涼子さんもほっとしたのか、表情もだいぶ明るい。
【Aチーム】は博多に遠征で、【ポニー】の4人もくっついていった。9人の大所帯だから安心かなって。
墓地ダンジョンは浦河姉弟もいるし師匠も俺もいるしで何とかなるでしょの心意気だ。
横道にそれすぎた。
「どれくらいで結果が出るかなぁ」
俺とか零士くんだったら30分あれば踏破できるけど、例えばAチームだと考えると2時間あれば踏破しちゃうんじゃないかな。
「なんとなく嫌な予感もします」
京香さんは不安げだ。ちゃらそうなハンターとはいえ、不幸は願ってない。全員無事に帰ってきてほしい。
「仕事しつつ見ていましょう」
「じゃあ俺は夕食の用意しながらだね」
ながら観戦してた。
彼らが出てきたのは、零士くんが戻ってくる前の約3時間後。地面が光って、空中からハンターがぼとぼと落ちてきた。ダンジョンの階段が見当たらないのでちゃんと踏破したようだ。
「あれ、少なくない?」
立っているか座りこんでるのが11人。血だらけの人もいるし、無傷な人はいない。
残りは横たわって動かない。いやな予感しかしないんだけど。
『踏破しました!』
カメラに向かって笑顔のリーダー。頬にも傷があって痛々しい。
——踏破きたぞ!
——礼さんは? どこ?
——ちょ、横になってるの、動かねーんだけど
——千春さんの顔が!
——もしかして死んでる?
——いやぁぁぁぁぁあああああ
『ダンジョンボスはハイオーガだったぜ!』
『映像も撮ってきた!』
『編集して公開します!』
——なんでダンジョンボスがわかるんだ?
——ガシャ髑髏に【鑑定】持ちはいないはずだけど
——連れて行ったのか?
——自殺行為だろ!
『えっと、何人か大けがしちゃて』
『……礼は死にました』
『いま起きてるのは無事です!』
ということは、残りは亡くなってるってこと?
——いやーーー
——モザイクかけろ!
——やめてぇぇ!
コメントが混乱してる。当たり前だ。
状況としては、リーダーは生きているがサブの宇和島が死亡。そのほか【鑑定】持ちも亡くなったらしい。大惨事だ。
『やりました!』
リーダーの松山は笑顔を絶やさない。仲間が死んだのに違和感しかない。
人間性がおかしくなってしまったのか、元からなのか。
理由は不明だけど、悲しい。
——戦えない【鑑定】持ちを連れていくからだろ!
——千春さん、なんで笑ってられるの!?
——もうやめてー!
——礼さん、うそだぁぁぁ!
見るに堪えなくて、視聴をやめた。
「これは……問題になりそうですね」
「踏破するのにも被害が多すぎるのと、あのリーダーはなんで笑ってられるのか、俺には理解できない」
「瞳孔の開きがおかしかったので、なにか薬物でも接種したのでしょうか?」
「ポーションはたっぷり持ったって最初に言ってたね……」
四国のクランがそんなに多くのポーションを入手できるのかな。ビッチさんが支店を開設するのは各地でポーションが足りないのが理由だったはず。そんな状況下で、四国のクランに大量にポーション?
そんなことができるのはうちくらいだけど。まさか。
「「デッセン&リーファーカンパニー」」
俺と京香さんの声が揃った。




