51.佐渡島ダンジョン踏破の影響⑥
ハンター不足の解消を悶々と考えてたら数日経過してた。もう4月も中旬を過ぎて世間の関心はゴールデンウィークに変わっていた。
話題が変わろうとも佐渡島の現状に変わりはない。ダンジョン批判の声はまだ多いし、メディアがそれを煽ってもいる。ギルドにクレームをつける人も出てきて、よくない空気だ。
うちは、地域に貢献してるし、今のところダンジョンで迷惑をかけていないので友好的だけど、他のギルドでは遠くからわざわざ文句を言いに来る人はいるらしい。船橋にも来たそうで、大多喜さんがぼやいてた。
なんで知ってるかっていうと、目の前にいるからさ。勝浦ギルドの足利さんもいるけど。
「では、第1回千葉ギルド会議を開催いたします」
京香さんが音頭を取った。
出席してるのは、船橋からは大多喜さんと八街さんというアラサーくらいの男性。勝浦からは足利さんと富岡さんという若い女性。うちは俺と京香さんだ。京香さん曰く、富岡さんは鑑定持ちだそうな。八街さんもそうなんだろうな。
会議開催。議題は今年の市船の実地教育プランについて。
基本は近い船橋だけど、勝浦にもいく。獄楽寺にも。
「うちもですか?」
「生徒からの要望が強いんだよ」
お目当てはいろいろだろうけど、活躍している先輩を見たいんだろうなぁ。
「5月の連休あとはどうだい?」
大多喜さんの提案だ。京香さんをちらっと見れば、小さく頷いた。よろしいらしい。
「うちは、特にないので大丈夫だと思いますよ。勝浦はいいんですか?」
うちよりも付き合いが長いだろう勝浦を差し置くのはちょっとね。
「勝浦は、気晴らしに海で泳げる夏の方がいいんじゃないかなぁ。逆に冬は寒いから避けた方がいいね」
足利さんが答えた。なるほど。確かに智たちも海で遊んだって言ってたし。
「春はうちで夏は勝浦で、船橋は都度って感じですかね」
「できれば夏の課題の手伝いもお願いしたいとこさ」
俺のまとめに大多喜さんが追加を押し付けてきた。もしや。
「付き添うハンターが足りないとか?」
「まさにそれさ。ハンターにとっちゃ手間なのに稼ぎはないからねぇ」
「うちもそれで困っていてねぇ」
大多喜さんと足利さんが俺を見てくる。
「押し付ける気満々ですね?」
ふたりとも目を逸らさないでください。
まぁ、ハンターの育成はうちも願うところなので受け入れるけどね。魔物と比較的安全に戦える回数が一番多いのはここだし。それはAチームとポニーが証明してくれてるしさ。
「付き添いのハンターの資格も大幅に緩和されてね、経験年数ではなくレベルになったのさ」
「レベル10を閾値に決まってねぇ」
なるほど。卒業したばかりだけどレベルが高いうちの子たちが目当てなんですね。彼らにもいい経験に、なるかな?
「ただ、受け入れるにあたっては、うちはそもそも寺でして、寮を作ったとはいえクラス全員の宿泊は厳しいんですよ。東金の宿泊施設を使えませんかね」
できれば地元の宿泊施設の協力を得たい。そうするとそこに金が落ちるんだ。地域も潤えばみんな幸せ。うちは赤字でもいいからさ。
「そう言うだろうと思ってさ、調べてあるんだろう?」
「もちろんです」
大多喜さんが元部下の京香さんに視線を送れば、即答した。
「東金駅の反対側に県立の宿泊施設がありますので、そこを利用すればよいかと思います。朝食夕食はそこで、昼食が当ギルドという分け方です」
「お昼だけなら何とでもなるかな」
夜はみんな食べるから量が必要なんだよ。高校生、しかも運動系の食欲をなめちゃダメ。Aチームで思い知ったよ。
「バス会社に依頼すれば往復のチャータもできますし。もしかしたら日比谷高校も利用するかもしれませんね」
「あ、そっちもか!」
あれ、もしかしたら全国のハンターコースの子らが来ちゃう流れ?
「モテル男は大変だねぇ」
大多喜さんにニヤリとされた。
そんな会議があった夜。夕食後の食堂で片づけをしていた。涼子さんと俺が主だけど智とか葉子ちゃんも手伝ってくれる。花嫁修業とか言ってるので、頑張ってほしい。
そんな和やかな時を楽しんでいたら、つけっぱなしのテレビで速報が流れた。
『今日の閣僚会議で、ダンジョン管轄が総務省から防衛省へ移管されることが決まりました。総務省は不服としています』
『政府内で意見の食い違いがあるようですね』
『先般、佐渡島で災害ともいえる被害を出したことが切っ掛けと思われます』
アナウンサーがそんなことを言っている。
「ずいぶん急だなぁ」
まぁ総務省があれじゃあダンジョン管理なんてできないよね。
『総務省内では反発が大きい模様です。街の声です』
『そうなんですねー。あまり興味がないので』
『ギルドの周りに軍人がうろうろするのは怖いです』
『総務省って何する省なんだろう?』
『政府っていつも行き当たりばったりですね』
街の声らしい。本当かなぁ。軍人て何よ軍人って。普通の人はそうは言わないでしょ。
「裏金ばかりの総務省から力で抑え込める防衛省へ管轄が変わったことはよいとは思いますが、真っ黒なギルド長が素直に言うことを聞くとは思えません」
テーブルを拭いていた京香さんが呆れてる。
『ずいぶん強引ですね』
『利権が絡んでいるのではないでしょうか。ダンジョンからのドロップ品の売り上げは、かなりの額になっていますし、大型の魔石発電所が稼働を始めますので、重要性は増すばかりです』
『総務省がかなり反発しているようですが』
『これも利権がらみでしょう』
『防衛省に変わって、きちんとダンジョンの管理ができるのでしょうか。不安が残ります』
アナウンサーは一方的に述べて次のニュースに移った。
「不安が残ります、という言い方は卑怯な言い方です。アナウンサーの感想でしかないのに、あたかもそれが総意であるように見せかけるプロパガンダの一種です。人間は一番最後に来た言葉が残る性質があります。最後に不安をあおる言葉で終わることで、視聴者の無意識下に不安の種をまいているのですね」
辛辣メイドさんの辛辣な意見だ。
「総務省よりは防衛省の方がまだ話ができそうなのが救いかな。もしかして、昼に出た付き添いハンターの条件緩和って、これに関係あるっぽい?」
「たぶんありますね」
いやん。うちを狙い撃ちって感じ。




