51.佐渡島ダンジョン踏破の影響⑤
上品に湯呑を置くビッチさん。美人さんだけど所作も美しい。
「おいしいお茶ですわね」
「秋田土産です」
秋田へ行った際にギルドで出されたお茶がおいしかったから通販で買ってるんだよ。
「【スライムゼリー】と【猛毒】については佐渡と同等かそれ以上の数量が納入可能です」
「ラビットフットの威力ですわね」
「検証中ですが、かなりのスコアを叩きだしそうです」
ラビットフットの検証は、鑑定では20%となっているからそれが本当なのかの検証だ。
うち、船橋、勝浦、日比谷の4つのダンジョンで検証してて、さらに言うと、うちは墓地、備後、神西、佐渡島で検証中だ。
おおむね20%に収束しつつあるって段階らしい。素晴らしい。
なお、ラビットテールは50%だ。
「【スライムゼリー】は用途が拡大してるようで、強く要望されましたわ」
「【スライムゼリー】は一番弱いブルースライムからのドロップ品なので、以前よりは増えるとは思いますが、ただ」
「ハンターが足りませんのね」
「おっしゃる通りです。当ギルドには守君を筆頭にハンターは14名しかおりません。全員がルーキーで、他の土地のダンジョンでいろいろな経験を積んでほしいという希望もあります」
「……うちが手伝うしかありませんが、うちも多いわけではありませんし」
「現在は浦河姉弟が手伝ってくれていますが、あのふたりも月末には帰るそうです」
「【猛毒】も麻酔としての需要がひっ迫してますわ」
「困りましたね」
うーん、人が足りない。猫の手でもカエルの手でも借りたいくらいだ。
「あたしたちも頑張って魔物を倒してるけどずっとダンジョンってわけにもいかないし」
智も美奈子ちゃんも葉子ちゃんも京子ちゃんも頑張ってくれてるんだ。うちには零士くんがいるから安易にハンターを増やせないんだよね。秘密を守れるくらい信用できるハンターならいいんだけど。
そういう意味では黄金騎士団でもちょっとねって感じなんだ。秘密を守れるのは那覇さんとその奥さんたちだけだし、彼らもスポンサーからの要求もあって忙しいだろうし。
ただ、零士くんもラビットテールを持ってるとドロップすることが分かったから、大暴れしてもらうか。
スラキンのスキル書の分身スキルが使えないかなぁ。
贅沢な悩みだよ。決定的な案がないままビッチさんは帰った。
では解決策を考えよう。
実は、ダンジョンマスターがダンジョンボスを使って魔物を倒すと一応はドロップ品が出るんだ。
これは、瀬奈さんが日比谷ダンジョンで試したからわかったんだけどね。ドロップする確率はハンターが倒した場合と変わりがなさそうだった。
「佐渡島ダンジョンは、スラキンちゃんが動けばそれだけでスライムを倒しますので楽ではあります。最下層から1階まで動かしてみましょう」
京香さんが佐渡島ダンジョン1階でラビットテールを手にしてスラキンちゃんを呼ぶ。ズゴゴゴとすごい振動が10分続いて、洞窟の先に透き通った紫のスラキンの一部が見えた。そのままヌヌヌっと迫ってきて、京香さんの目の前で止まった。
「ふむふむ、たくさんいたようですね」
京香さんがスラキンの一部をなでなでする。ぷよぷよしてて気持ちよさそうだけど、俺が触れようとすると激しく波打つんだよ。「マスター以外は触るな!」って感じだ。
「では出してください」
京香さんの指示で、紫の中からぺぺぺぺって吐き出されるドロップ品。液体のばかりで、樹脂めいた謎物質の容器ごと出てくる。ぼとぼとと積まれていくドロップ品。仕訳が大変だな。
「出し終えたらスラキンを戻しますので、収納をお願いします」
「あ、はい」
だよねー。
「ご苦労様でした」
スラキンが帰ったので山になってるドロップ品を回収。いや多いな。
【スライムゼリー】×721
【強酸】×327
【猛毒】×198
【火炎瓶】×78
【飛翔】の魔法書×5
【俊足の玉】×1
「あと、レベルが上がりました。もしかしたらスラキンちゃんが倒した魔物も私が倒したと認識されているのかもしれません」
「え」
「ちなみに16になって【臨機応変】というスキルを覚えました。えっへん!」
メイドさんがフンスと胸を張ってる。
とりあえず褒めよう。
「メイドさんがさらに有能になっていくね」
「【臨機応変】は、脳内にもう一人の私を作って、完全別思考で右手と左手で全く別な動きができるようになりました。ご飯を食べつつ右手でメールチェックと返信をしながら左手でドロップ品の入力作業ができます。ノートPCを増やしましょう!」
「増やすのは全然いいんだけど、無理しないでね?」
働きすぎはよくない。それなら人を増やす方向で行きたい。
働くならホワイトがいいよね。俺自身は割とブラックな気がするから余計なんだ。だって俺の代わりはいないんだもん。
ダンジョンボスが倒した魔物の経験値とドロップ品が入手可能、ということを瀬奈さんにも話をした。瀬奈さんもマスターだし、情報共有は必要だ。
「あらー、じゃーわたしもツンドラちゃんにボスエリアから来てもらえれば少しはドロップ品が入手できるかしらー?」
なんて言い出した。
日比谷は大空間だからツンドラちゃんが動いても魔物を倒すわけじゃない。でも倒しながら来てねって言えばそれなりに倒してきそうではある。
対抗心からか優しさからかはわからないけど、手伝ってくれるのは本当にうれしい。
「ツンドラちゃーん、魔物をたくさん倒しながら来てねー」
で、試した結果。
【リザードマンの槍×104】
【ヒールの魔法書×2】
【自己治癒のスキル書×2】
【炎の息吹のスキル書×10】
【ポーション×71】
【フリーズスパイラルのスキル書×1】
【ブルードラゴンの鱗×5キロ】
【竜骨×5】
【レッドドラゴンの鱗×5キロ】
【竜骨×5】
「やばいねこれ」
ハンターが魔物を倒さないでこれだもん。特にポーションがすごい。魔法書もだけどさ。
なお、ワイバーンは逃げちゃうから倒してないそう。頼んだらやれちゃいそうな感じ。
「人手不足の解消にはなるかしらねー」
「なりそうですが、そのぶん瀬奈さんと京香さんの負担が増えるのはよくないんですよ」
今は妊婦さんで、もう少ししたらお母さんよ?
赤ちゃんって2時間おきくらいで授乳が必要って聞くし。情報源は幼稚園のお母さんたちね。
「やっぱりハンターを勧誘する方向で行きたいなぁ」
いればいいけど。




