51.佐渡島ダンジョン踏破の影響④
朝、食堂で佐渡島関連のニュースを見てる。ダンジョンがなくなったので佐渡島ギルドは解体され、佐渡島では住民の意見が割れているんだとか。
『ダンジョンは危ないって、いつも思ってました!』
『なくなってすっきりです!』
『ダンジョンから入手できてた品々がなくなったら、島の産業はどうなるのか』
『ハンターがいなくなると売り上げも落ちるねぇ』
『自衛隊がダンジョンを管理すればいいんじゃない?』
地元民の声らしい。
「メディア側の仕込みもあるので、話半分で聞くのが正しいでしょう」
辛辣メイドさんによる評価だ。
とはいえ、困っている人がいるのは間違いない。それは、ダンジョンを否定する人も含めてだ。
ダンジョンがあるからフンダララって人は暇つぶしの矛先を失ったので、その無駄な労力がどこへ行くのかわからん。迷惑な話だね。
「ネットはもっと過激になってるわねー」
瀬奈さんによると、ネットではギルドの責任だとする声がある一方、そもそもの総務省にやる気がないのが原因だとする意見も。外国に比べてダンジョンの管理が甘い、ハンターが弱いせいだと言いたい放題の意見もある。
「スタンピードは起きなきゃわからん。後手に回るのは仕方がねえんだが、それもハンターが強ければ防げるものは多い」
「今回みたいにどうやって倒せばいいのかってダンジョンボスだと苦しいね」
正直、俺だから何とかなったって面はあるんだ。墓地ダンジョンでも手こずってたし。
「まぁな。だが、佐渡では配信出来たことでスタンピードの発生原因が判明した。これだけが原因かはわからねえけどな」
ダンジョンボスが上がってきたことで魔物が押し出されてるってやつね。これが正しいのかは不明だけど、原因のひとつではあるのは間違いない。
『ダンジョンなんてつぶせばいいんですよ! ギルドの、ひいては国の怠慢です!』
『ハンターもだらしないですよね』
『金儲けに走ったらおしまいですよー』
コメンテイターだか知らないけど、画面の中で吠えてる人達がいる。それに「そうですよ!」と同調するアナウンサー。台本があるんだろうけど、ちょっと怖い。
なんというか、輪廻で行く先のひとつ【餓鬼道】を見ている気分だ。
餓鬼ってのは『自分さえよければ他人はどうなっても構わない』と考えてる人が堕ちた後の姿で、そんな自分勝手な人が転生する先が餓鬼道だ。人間に欲はつきものなんだけど、欲深すぎてはだめですよってことさ。
「ダンジョンをつぶすイコール踏破するってことは、どっかにそのダンジョンができるってことでしょ? 無責任だなぁ」
「メディアなんてそんなものです。怒りと焦りをあおるのが目的な組織ですから」
「害しかないじゃん」
「天気予報だけは有用です」
京香さんが目玉焼きをはむっとした。涼子さんと相談して今朝は堅めの目玉焼きにした。半熟もいいけどね。
「京子が小さいころに報道関係の男と付き合ったことがあるけど、まぁ上から目線がひどかったねぇ」
涼子さんがぼやいた。なんでそんな男?と思ったけど、お金かなぁ。
「かーちゃんそうなのか?」
「京子は地味でも誠実な人を選ぶんだよ?」
「地味かー」
「なんだかんだで誠実なのが一番さ」
しれっと俺を見ないでください。智の目が怖いんで。
「ハンターだって頑張ってるぜ?」
「佐渡で亡くなったハンターだって真っ先に飛び込んだって聞いたぞ?」
「不真面目なのは一部じゃん」
現地に行ったAチームは不満たらたらだ。
彼らは阿賀野ギルド長とも話をしてて、いろいろ聞いたんだよ。酷な体験をさせてしまったけど、得るものがあったのが救いだ。それに、遠回しに自分たちが不真面目だって言われてるようなもんだし。
「そういえばクラン【ガシャ髑髏】がダンジョンを踏破するって配信してたね」
臼さんが食パンにバターを塗りながらつぶやいた。彼は『朝はパン派』だ。
「言ってたな。あいつら、平均レベルが12だったか」
「ランク1ダンジョンならギリギリかもって感じだけど、彼ら不真面目ハンターだからなー。無謀なチャレンジが増えそうで、配信をしてる俺としても業界が荒れそうで怖いよ」
浦河姉弟もそんなことを言う。
【ガシャ髑髏】ってのは四国のクランで人数は24人と多いらしい。平均年齢も22歳と若くて、だからレベルも高くはない。おまけに配信のためのファッションハンターと言われてて、お行儀もよくないらしい。
最近はうちの配信に負けてて、なんとか盛り返したいんだとか。俺が踏破してるから当てつけだろうかね。
鍛えて自分らが強くなればいいんじゃ?と思う俺は間違ってるのかなぁ。
「お前らならできるだろうが、つまらん欲に流されるなよ?」
零士くんがAチームとポニーを見渡す。
有名になってちやほやされたい。承認欲求が強いと嵌まり込んでしまうんだろう。
9人揃って「しません」と言い切ってたのでまあ大丈夫かな。
数日後、寺にはビッチさんと浦和ちゃんが来た。暖かくはなったけど防寒対策はばっちりで、首にはマフラー、お腹にもマフラーをしてる。
「父の手編みでしてよ」
苦笑いしてるけど、嬉しさが隠しきれてない。
父からのプレゼントがうれしいビッチさんと孫が楽しみなお父さん。幸せそうで何より。
「今日は何がもらえるんっすか?」
「浦和、はしたないですわ」
「浦和ちゃんには桜餅、どぞー」
桧山茶と桜餅を出す。
今日はビッチさんと浦和ちゃんだけ。信号機の3人と寄居ちゃん熊谷ちゃんは茨城県内のダンジョンを掃除しに行ってるらしい。このクランはまじめだよ。
うちは俺と京香さんと智だ。
「……佐渡は大変だったようですわね」
「いろいろありましたね。Aチームの5人はだいぶショックを受けてましたけど、何とか立ち直ってくれました」
「卒業したてのハンターを送るなんて、なかなか鬼ですわね」
ギロッと睨まれてしまった。
「佐倉、あいつら大丈夫なん?」
「帰ってきた直後は泣いてたけど、翌朝はケロッとしててなんかヒャッハーしてたわよ」
「あにそれ?」
「わかんない。浦和、どうでもよくないけどあたしは『坂場』になってるから」
「おっと坂場様だった」
「……きもいから佐倉でいいわよ」
卒業生同士なので、まぁ気安い、のかな。今後は智も上野商会とのやり取りには参加してもらう。瀬奈さんに続いて京香さんも出産育児が中心になるからね。
「世間話も終わりましたので本題に移りたいと思います」
京香さんが仕切る。智もいつまでも食べてないで話をする態勢になってね。
「佐渡のドロップ品ですわね。耳聡い企業から探りが来てますわよ」
「医療関係ですか?」
「ご名答」
ビッチさんがずずっとお茶をすすった。




