51.佐渡島ダンジョン踏破の影響②
零士くんが美奈子ちゃんを抱きかかえて戻ってきたところ羅さんにばったりエンカウントして何でか羅さんまで倒れてしまって大騒ぎになってる最中にAチームが戻って来てムキムキの零士くんを見てなぜか「うぉぉぉ!」と雄たけびを上げてそれにびっくりした京子ちゃんが「騒ぐんじゃねぇぇ!」ってわわわんって吼えるぐらいカオスな朝が終わった。
朝食を終え、母屋には、俺、父さん、零士くん、瀬奈さん、京香さん、智、美奈子ちゃんが集まった。よくわからないけどハイテンションが止まらないAチームはポニーの4人を誘ってダンジョンに向かった。ケガしなきゃいいけど。
葉子ちゃんと京子ちゃんの金髪コンビは墓地ダンジョンでラビットテールの検証をしてる。羅さんは気を失ったままだけど顔がだらけきってて臼さんが「なんで?」って首を傾げながら介抱してる。葉介さんは零士くんのマッチョを見て自分のお腹を触ってはうなだれてた。
過去一番のカオスな状況で、その原因だろう零士くんを囲んでいるわけで。
「俺にもさっぱりわからん」
腕を組んで困った顔の零士くん。心当たりはないらしい。
「前に兜が粉々になったときは俺と美奈子ちゃんがいたんだけど、今回は美奈子ちゃんだけかー」
「わたしも瞑想してたのでわからないですけど、師匠の筋肉はすごいです!」
普段は冷静な美奈子ちゃんも支離滅裂だ。何かがトリガーになってる気はするけど、それが何かはわからないし、俺の考えがあってるとも言えない。
「ふむ、零士君、体に異常というか違和感はあるかね?」
「これと言ってとくには……痛覚はありますな」
父さんに問われた零士くんがむき出しになった腹をつついた。日比谷ダンジョンでツンドラちゃんのブレスがかすったときは鎧の一部が溶けたけど痛みはなかったって言ってたし。
もしかしたら少し生命体になった?
「肌の色は白いままだけどー、ちょっと色がついたかしらー?」
「アルビノよりちょっと白いくらいでしょうか」
瀬奈さんと京香さんは肌に着目した。けっして筋肉を見ているわけではない、と思う。俺も鍛えねば。
確かに、零士くんは白いマッチョマンなので彫刻のようで美しい。なお、零士くんが着れるような服がないのでまだ裸である。俺の服はもうとっくに捨ててるし。後で買いに行かねば。
「様子見しかないんじゃない? 師匠の存在事態が前例ないんだし」
智の意見が最終見解となった。今後、足の鎧が砕けたとき、おちんちんがこんにちはしてしまうので何か対策をした方が良いかな。
朝の騒ぎも落ち着いた午後。俺と京香さん、北国分さんの3人で佐渡のドロップ品を鑑定することにした。北国分さんを入れたのは、京香さんを楽にする意味もある。あと、ドロップ品を見せないとすねる時もあるのだ。自分の意思を出してきてて嬉しいんだけど、うひーうひーする姿はあまり見せてよいものではないと思うんだけどなぁ。
「というわけで、第1回佐渡島ドロップ品鑑定会を開催します」
「え、次もあるの?」
京香さんに突っ込んでしまった。
「ワクワクしますぅ」
さっとよだれを拭く北国分さん。さっさと開始しよう。
まずはリスト化のために収納してあるドロップ品を読み上げて京香さんがPC に入力していく。
どれくらいあるかというと。
【スライムゼリー】×421
【強酸】×154
【猛毒】×137
【火炎瓶】×57
【飛翔】の魔法書×4
【俊足の玉】×1
【スライムキングの欠片】×14376トン
【化身のスキル書×1】
【無限なる体力のスキル書×1】
【佐渡島ダンジョンマスターのスキル書×1】
「【飛翔】の魔法がありますね。聞いたことがないものも多いです」
「あ・あ・あ・あ……いぃ……いぃ……」
うん、北国分さんが戦力にならないっぽい。有能ではあるんだけどね。
「とりあえず1個ずつ出していくね」
テーブルの上に載せていく。しょっぱなから「うひゃー」と北国分さんが暴走してる。
まぁ、暴れなければヨシ!
「ブルースライムのドロップ品の【スライムゼリー】は潤滑材として利用されていますね。アレルギーの心配がないようで、医療用にも使われています。高齢者の夜のお供にもばっちりですね」
「高齢者て」
「人生100年時代では60歳なんて壮年です。夜もお盛んらしいですよ?」
意味深な流し目をいただきました。うーん、そうなんだ。父さんの年齢でもってことかな。
父さんは再婚とか考えてるのかなぁ。
「ブラックスライムのドロップ品【強酸】は鉄のみを溶かす特殊な酸で、いろいろな金属が混ざっているスクラップから鉄を抽出するのに使用されているそうです。溶けた鉄は集めて乾燥させると粗鉄になるので、スクラップからのリサイクルが進んでいるようですね」
「役に立ってるんだったら需要がありそうだね。佐渡で入手できなくなったのは痛いんじゃないかな」
うちで流通させるかだなぁ。間違ってもうちがスクラップから鉄を作ろうとかは考えないけど。
「グリーンスライムの【猛毒】は、希釈すると麻酔の代わりになる毒液ですね」
「麻酔だけど毒なんだ」
「原液ではモルヒネなみの劇薬とのことです」
んーー、流通させちゃダメな気がするぞ?
でも医療には役に立つんだろうなぁ。これも使う人間によって変わっちゃうパターンだ。
慎重に決めないとだけど、いままでの流通ルートから話があったら考えよう。
「レッドスライムは【火炎瓶】ですね。使い捨てで、投げると半径5メートルの範囲で燃え上がるそうです。スライムにはよく効くみたいですね」
「物騒な名前だなぁ。でもスライムダンジョンでしか使えないじゃん」
「中身が無水エタノールなので医療用に使われているようです」
「役に立つんじゃん」
なんか役に立つものしかなくない?
「ドラゴスライムは【飛翔】の魔法書でした」
「空を飛ぶ魔物のドロップはこれになりがちだね」
ワイバーンとどっちが倒しやすいか。どっちもどっちかな。
「メタルスライムは【俊足の玉】でした」
「親指くらいの黄色いきれいな石だね」
「持っていると俊敏さが倍になるそうです。宝石としての価値はないようですね」
「かなり有用じゃない? 誰に渡そうか?」
俺は【師走】があるから要らないし。そもそも戦闘が得意なわけでもやりたいわけでもないから。
ド素人でサーセン。
「さてこれからはスライムキングのドロップ品ですね。まずは【スライムキングの欠片】ですが、ゼリー状で植物の種から苗にするのにちょうどよい培養土になるようです。ひとかけらが1メートル四方、つまり在庫は1万4千トン。畑にまいてもよい肥料になるそうです。農家でも始めましょうか?」
「やる余裕がないってば」
檀家の人に農家さんは多くて農業の大切さはわかるけど、うちはもう手一杯よ!




