50.入学式と佐渡島スタンピード⑤
ショタ形態の零士の呼び方ですが、守は「零士くん」と呼んでます。守の思考内イメージで「くん」としております。「君」は作者の誤記です、すみません。
夕方、迎えのヘリが来る時間になるので現地へ行く俺、京香さん、Aチームが集合する。
寺でスタンピードに備えるのは瀬奈さん+ツンドラちゃんが司令塔、零士くん、京子ちゃん、美奈子ちゃん、葉子ちゃん、ポニーの4人になんでか浦河姉弟も加わった。浦河姉弟は強いので頼もしくもあるけど、申し訳ない思いでいっぱいだ。
「みんな、寺を頼むね」
「任せとけ」
「だいじょーぶよー」
「智は入学式、よろしくね」
「さっさと終わらせて戻ってくるわよ!」
見送られて一路近くの小学校へハイエースで向かう。このハイエースはオレが向こうまで持って行っちゃうやつ。そのほかにもポーションとかいろいろ持っていく。
すでに自衛隊の人がいて、校庭に大きなHの文字を描いていた。
ものすごい爆音がして、ヘリが降りてきた。
「でけーヘリだ」
「なんだっけあれ、犬みたいなヘリ」
小学校の校庭に降りてきたのはプロペラがふたつあるワンコみたいな形の大きなヘリだ。風圧がすごいので京香さんを抱えて乗り込む。音がうるさいのでイヤーマフをもらった。
校庭では自衛隊の人が敬礼してるなか、ヘリが上昇していく。ヘリは初体験だけど、別なドキドキで胸がいっぱいだ。不安ともいうかな。
「行く以外の選択肢はない」
自分に言い聞かせた。
俺たちが乗ったヘリは茜色から藍色に代わっていく空を北に向かった。百里基地という、茨城空港と同じ場所へ行って、そこから飛行機に乗り換えて新潟へ向かう。
基地に着陸してすぐにヘリを下りる。と同時に近くに止めてある飛行機へ案内された。この飛行機はU-125Aという名前らしい。海難救助用で、今日は用途外での使用とのこと。いろいろ例外を作りまくってる作戦なんだとか。静かに運ばれてようと思った。
「気圧調整されているのでイヤーマフなしはありがたいですね」
京香さんもほっとした顔だ。オレが不安なら京香さんやAチームはもっと不安だろう。5人はどうかと顔を見たら「ヘリ初体験!」「敬礼された!」「見る人見る人マッチョだったな!」と興奮してた。 うむ、いいことだとしておこう。
百里基地からは準備ができたらすぐに飛んだ。茨城空港を一時的でも止めて最優先で離陸したらしい。後でいろいろ問題にならなければいいけど。
機内で夕食を食べたら着陸態勢に入って新潟空港へ着陸した。早すぎる。寺を出てから1時間ちょいしかたってない気がする。
飛行機を降りた。すでに真っ暗で星も見える。空気は千葉よりもひんやりしていて、こっちはまだまだ冬の気配が濃い。
「新発田駐屯地指令の三条です。移動の連続で申し訳ありませんが、あの車で駐屯地まで移動をお願いします」
迷彩服のマッチョおじさんに敬礼されながらそう言われた。車を見てみれば、マットグリーンに塗られた救急車があった。
「サイレンを鳴らして最速で駐屯地へ向かいます」
わーお。
「まじかよッ!」
「人生初救急車がこれか!」
「自慢できそうだ!」
そこのAチーム諸君。聞こえておるぞ?
同じ男の子だから気持ちはわかるけどさ。
救急車に詰め込まれ、サイレンと一緒に駐屯地まで運ばれた。
「出荷よー」の逆で「納品よー」なのかしら。
駐屯地について降ろされて、食堂っぽい空間に案内される。そこには筋骨隆々なマッシブ男子がぎっしり詰め込まれてた。いや、座っていた。
むさい。すっごくむさいぞ。
食堂には大きなモニターが置いてあって、そこを正面にしてマッシブ男子が座ってる。モニターわきに、彼らと向かい合う形で一列に座る。基地司令の三条さんは俺たちとは反対側に座った。
「火急な事態への協力、誠に感謝する。新発田駐屯地指令及び第30普通科連隊長の三条です」
「獄楽寺ギルドの坂場です。こちらは職員の京香で交渉役兼【鑑定】スキル所持、配信機材の管理、行方不明のギルド職員の捜索に当たる予定です。並んでいる5人はダンジョン野郎Aチームというパーティでうちのクランのハンターです。卒業したばかりですがその辺のハンターより強いです。魔物のせん滅及び京香さんの護衛が主です」
「一宮です」「野田っす」「千葉です」「館山です」「市原っす」
自己紹介を終えた。マッチョ男子たちからは探るような視線が来るけど、割と興味津々な目をしてる気もする。邪険さは感じない。逆に妊婦でメイドな京香さんには「大丈夫なのか」と心配するような視線になってた。
「お疲れのところ申し訳ないが、作戦の概要と確認をしたい」
「お願いします」
「まず、今夜はこの駐屯地で夜を明かしていただく。明け方にここからCH-47JAチヌークで佐渡島上空へ。
高度500を保っていればドラゴスライムがこないのは調査済みです。ホバリング中に【飛翔】魔法で降下する作戦とのことですが、ヘリから魔法で飛ぶなど可能なのですか?」
「それは問題ないですね。うちのハンターの子で【飛翔】の魔法で高度100メートルくらいまで飛んだらしいですし」
寒くて戻ってきたから、もっと高くまで行けるんだろうけど。
「なるほど。我々は送ることしかできませんが、よろしくお願いします」
「京香です。質問よろしいでしょうか」
「うむ、なんなりと」
「まず、降下後の最優先はダンジョンの踏破でしょうか。制空権の奪取でしょうか。それによってこちらも行動が変わります」
「どちらかというのは難しい問題ですな。まずはスライムを何とかしたいのは確かですが、空を飛ぶドラゴスライムをなんとかできれば我々もヘリボーンで戦力を投射できます」
本当は両方同時にできればいいんだろうなぁ。
「うーん、降下中にドラゴスライムを何とかしちゃう? ドラゴスライムってどれ位いるんですか?」
「……また無茶を言いますねうちの旦那様は。脳筋な作戦は素敵ですけども」
「【鎮魂の鐘】で墜落させて地上で倒しちゃうとかできそうだけど? 日比谷ダンジョンのワイバーンは落ちたからね」
「佐渡島全体に広まりつつあるので一度に叩くのは厳しいでしょうな」
三条さんの答えだ。
そっか、空を飛べるからどこへでも行っちゃうのか。こりゃ早くなんとかしないと火災が広まるばかりだな。
「だとすると、踏破優先ですね」
「我々の力不足のしりぬぐいをしてもらうことになり、誠に申し訳なく思っております。佐渡を何とかお願いいたします」
三条さんに頭を下げられてしまった。頑張らねば。
「自分、質問よろしいでしょうか!」
マッチョ男子のひとりが挙手する。俺と同じくらいの年齢かな。三条さんが俺を見てきたんので頷いといた。
「いいぞ」
「その、【飛翔】の魔法というのはどのようなものなのでしょうか。できれば見せていただけると嬉しいです!」
なるほど、男の子だった。気になるよね。
「そうですね。市原君見せられる?」
「うっす!」
大柄マッチョの市原君が立ち上がる。自衛隊のマッチョ男子にも負けてない。
Aチームの5人には必要と思われる魔法とスキルは覚えてもらってる。強くなりすぎちゃうけど緊急事態だもの、仕方ないよね。
「【飛翔】!」
魔法が発動すると市原君の体が浮き上がり、天井ぎりぎりを泳ぎ始めた。クロールで縦横無尽に泳いで席に戻ってきた。
「「「「おおお!!」」」」
「「マジだぜ!」」
「「すげぇぇぇ!」」
大うけだった。




