48.最新の配信機材②
配信機材を買うよってメールした2日後。銀髪をポニテにした浦和ちゃんがハイエースで配信機材を運んできた。信号機の3人が一緒だけどさ、初心者マークの車に積んでいいものじゃないでしょ。
「ちゃーっす、毎度おせわになりまーす」
すっかり慣れた様子の浦和ちゃん。だいぶ砕けてきた。
今日はスーツでなくて作業着だ。こっちも似合ってるね。
にしてもだね。
「すっごく早いというか早すぎるんだけど? 絶対にうちが買うって見込まれてたよね? もしくは間違って買っちゃったとか?」
「えっと、上野お姉さまの先見の明っす! 間違ってもアタシの誤発注とかじゃねーです!」
浦和ちゃんが視線を逃がしてあははと笑ってる。信号機の人が苦笑いしてるあたり、したんだね?
「あの、マジ買ってくれてありがとうございます!」
がばっと頭を下げられた。
「貸しだよー?」
「えっ……か、体は勘弁してほしいっす。彼氏いるんで」
「それはすごっく間に合ってるから大丈夫!」
3人もいるしさ。
まあいいや。さっそく運んじゃおう。ハイエースに積んであったもの一切を収納した。
「うわー、積むのすっげー苦労したんだけどー。相変わらずすげースキルだー、です。あ、代金はうちが購入する分と相殺するって聞いてます!」
「その辺は京香さんと話してね」
俺じゃわからんのよ。
もろもろの書類にサインをして、さっそく試すのじゃ。ということレッツ試運転!
食堂に集まったのは俺、京香さん、葉介さん。取説が英語なのでまず和訳からなんよ。
葉介さんが英語の取説を読んで和訳をしゃべってそれを京香さんがパソコンに入力していく流れ作業。非常にスピーディー。
あれ、俺って必要ない感じ?
俺以外が有能すぎて困っちゃう。負けないように頑張らねば。
「ビッチさん、うちが和訳したのを日本語版取説にしそうだよね」
「それも狙いでしょう」
「だよねー」
油断も隙もありゃしない。
京香さんは俺と会話しながらも高速タッピングで入力していく。10分ほどで和訳が終わった。
うちの職員さんがすごすぎる件。
さてやるか。
さっそく墓地ダンジョンで試してみる。獄楽寺ギルド公式で試験配信することにした。
ダンジョンに入るのは俺と智。ダンジョン入り口のビニールハウスの棚に地上ユニットを設置して無線でギルドのサーバに接続。食堂のモニターで京香さんが配信を確認する。
収納してあった母機と子機ドローンを取り出す。母機は薄い灰色で俺の身長よりも長い飛行船だ。風船みたいな部分は硬い金属な感触。触れたくらいじゃ壊れないね。
実際の飛行船の人間が乗る部分に下向きのアンテナが生えてて、そこで地上と通信するようだ。
付属のリモコンもある。レバーが2本ある、ラジコンのリモコンみたいなやつ。
「電源スイッチは、これか」
母機のアンテナの近くにPOWERって書いてある赤いボタンがあった。スイッチオンするとひゅーんと軽いうなり音がして母機が浮き上がった。リモコンのレバーを動かすと母機がゆっくり動く。
「へー、飛行船のラジコンみたい」
楽しい。
「高さは自動調整するみたいだけどリモコンで変えられるって」
智が和訳された取説を読む。
「ちょうどいい高さなんてわからないし、自動にしとこうか」
「それが無難ね」
母機はふわふわ上がっていき、10メートルくらいの高さで止まった。
「こんどは子機だ」
「こっちは自動追尾方式だって」
子機はブルーの機体でプロペラが4つついてる、よく見かけるタイプだ。子機2台の電源をオンすればぶいーんとプロペラが回転してひゅんと浮かび上がる。1台が俺の頭の上50センチくらいでホバリングしてる。この距離は変更可能だ。近すぎたらプロペラ音がうるさいし、戦闘に巻き込まれて壊れちゃう。お高いから大事に使わないと。
「食堂の京香さん、見えますかー?」
ドローンのカメラは正面についてるからそこに向けて手を振る。
『見えてます。音もクリアです』
子機のドローンから京香さんの声が聞こえた。スピーカーも内臓で、システムに組み込んだパソコンとは音声通話が可能だ。ちなみに、配信で書き込まれた文字は見えない。インチキとかいうやつはいるから見えない方がいい。
「これから2階へいくね」
『気を付けてください』
智が自分の子機に向かって話しかけてる。地上の画面はどうなってるんだろ。
「じゃあ俺はこのまま1階で待機だ」
子機が階が分かれても動作するかチェック開始ー。
2階へ降りた智美は墓地の真ん中あたりに歩いていく。邪魔する骨は見骨成仏だ。
「階段近くだとつながってもそれは階段に近いからってなりそうだよね」
ここかな、というあたりで止まってドローンに振り返って手を振る。
「京香おねーちゃん見えてるー?」
『見えてます。音声もクリアーです』
「おー、2階でも配信できた!」
『ついでなので3階まで試しましょうか』
「おっけー」
智美はドローンを引き連れて墓地を歩いて階段へ。狭い墓地ダンジョンならすぐについてしまう。
躊躇なく降り、3階に到着。見骨成仏でお掃除は忘れない。輪廻に導くにも(暴)力は必要だ。
「どおー、見えるー?」
『見えてますね。音も変わらずクリアです』
「すごーい!」
拍手して心底感心する智美。近づいてきてたコケケケを足でけって魔石に変えた。
「うちにある他のダンジョンでも行けるかな?」
『試す価値はありますね。ちょっとみなに手伝ってもらいましょう』
そうなった。




