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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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44.行って(1月)逃げて(2月)去ってしまう(3月)⑧  ヒグマ襲来⑥

 人の姿をしたクマににらまれた零士は視線を窓に移した。

 俺の過去を探るとはやべー奴だな。クマは狙った獲物に執着すると聞いたことがあるが、スキルでもそうなのか? それともコイツがそもそもそんな性質(たち)だったのか?


「師匠、少しこの人とふたりで話をしたいんですが」

「む……」


 四街道に提案された零士は彼女の真意を測りかねた。

 ふたりになって喧嘩をする、わけじゃなさそうだが。碌なことでもない気配もある。だが話し合って解決するのならそれが一番望ましい。


「そうだな、話をすべきだ」


 先に羅が同意してしまった。先制を許してしまった零士は苦い顔をする。


「わかった。だが、喧嘩だけはするなよ」


 釘を刺すことしかできなかった。

 零士が出て行き、部屋にはふたりが残された。決まずい空気が場を支配する。


「……話とは、なんだ?」


 羅は探るような眼で四街道を見る。また殴り合いなら受けて立つつもりだった。


「あなた()長篠零士のファンなの?」


 四街道の言葉は存外のものだった。


「も、とは、お前もか?」


 羅も応じる。

 長篠零士は人気があった。一般的ではなくハンター業界ではだったが、それでも少年少女に与えた影響は大きかった。ダンジョンという理解不能な存在に挑んでは踏破し帰ってくる。彼を目指してハンターの道に入った者も多い。特に、羅や黄金騎士団の那覇、アイアンビューティーの信号機の騎士などの世代では絶大だ。


「師匠について、地獄に落ちる覚悟があれば、話すこともできるのだけど」

「地獄?」

「えぇ、間違いなく、仏様のご慈悲があっても、地獄にしか行けそうにないし」


 そう言い切った四街道の顔は無表情だ。とっくに覚悟は完了している。零士についていくなら地獄でも奈落でもあとを追いかけていくつもりだった。


 羅は顔には出さずに思考を巡らせる。それほどまでの代償を払うモノとはなんだと。

 だが、こいつの目は嘘じゃねえと言ってる。

 羅も判断をつきかねていた。


「よし、いいだろう。地獄でもどこでも行ってやろうじゃねえか」


 決め手は、やはり零士の少年期によく似た師匠の存在だった。

 羅がドンを胸をたたいた。ぶるんと胸も揺れる。男なら視線が吸い寄せられるだろうが四街道も持ってるものなので一切動じない。


「そう。じゃあこれを見て」


 とスマホを操作した四街道が画面を見せた。


「こここここれは!!!」


 羅が絶句した。


「これとか」

「な、なんだ、と!?」

「これもいいかな」

「どどどどど、どういうことだ!」


 羅は四街道の胸倉を掴んで食って掛かる。


「それは、これからお話ししますけど、内緒にできますよね?」


 四街道は『しないと斬るぞ?』という笑みを浮かべた。






 四街道と羅が話し合いをしている間、零士は食堂のすみっこで草餅を食べていた。すでに5人分は食べている。

 多少イライラしているからか周囲には誰もいない。無意識に圧をばらまいていたのだ。


「む、終わったか」


 ふたりが下りてくる音を聞いてそちらに視線を投げる。歩いてくるふたりには会話こそないがとげとげしい空気も感じられない。四街道と羅が向かいに座った。妙な行動に零士が腕を組んで首をかしげる。   

 羅が「グハッ」とむせったが、零士はスルーした。


「話はつきました」

「……つつつついたぞ」


 自信たっぷりの四街道に対し、挙動不審の羅。人見知りという情報はあったが、ではさっきは違ったぞ?と疑問も出る。


「羅さんは大丈夫です」

「だだだいじょうぶだ」


 そう言い切った羅が視線を逃がしまくっている。

 どの辺が大丈夫なんだ?と零士が首を傾げれば羅がまたむせる。わからん。


「慣れが必要ですので、羅さんも鍛錬に加えたいんですが」

「慣れ?」

「鍛錬に加えたく」


 四街道が『そっちではない』と軌道修正した。

 零士は顎に手を当て思案する。すでに強くなってるこいつを鍛える意味とは。

 まぁ死ににくくはなるな。だが、俺が教えられるのは武器を使った戦闘で、素手は手に余る。


「たたたた滞在は延長する。だだだから、是非!」

「わたしからもお願いします!」


 返事を待ちきれなかった羅が身を乗り出し、それにつられて四街道も前傾姿勢で迫った。羅はゆるゆるの胸元が大きく開いてブラが丸見えで、なんならへそまで見えた。四街道も揃ってぶるんと揺れる。

 だが今の零士には通じない。


「お前らは鍛錬以前に慎みを身に着けろ」


 ふたりの額にデコピンが炸裂した。






「坂場君、ちょっといいかな」


 幼稚園の手伝いから戻ったら臼さんにつかまった。食堂で話を聞く。


「予定では3泊だったけど、変更して4月いっぱいまで延長で」

「4月いっぱいまで延長!?」


 ずいぶんな延長だ。


「えっと、それはあの喧嘩のせいで?」

「原因はそれっちゃそれっぽいんだけど。突然姉さんが言い出したんだよ」

「羅さんが? うちは全然大丈夫ですけど、北海道に戻らなくて平気なんですか?」


 今までは忙しかったけど卒業を控えてくる子も減ったし、卒業すればそれぞれ活動するから暇になるって予想はしてる。いつまでも満員御礼だとこっちももたないしさ。

 それに、自宅を開けっ放しは防犯上よろしくないでしょ。


「それもあって、()()()戻って着替えとかこっちに送ってからまた来るつもり。あ、部屋はあそこでいいから。プライバシーがあって姉さんも落ち着けるって言ってるし」

「臼さんだけ戻るってことは、羅さんはこっちに残るってこと?」

「四街道ちゃんと一緒に師匠の鍛錬を受けるんだって」

「は?」


 いや意味わかんねー。羅さんは強いじゃん。5階でも暴れまくてったし。

 羅さんの戦い方は見てるけど、零士くんとは全然違うぞ?

 素人の俺にはわからない何かが参考になるのかな?


「ここにいたほうが儲かるし、別なダンジョンもあるし、車で日帰りできる距離にダンジョンもあるし、可愛い女の子も多いしで損はないからいいかなーって」


 最後が本音っぽいね。


「うち以外にも船橋、勝浦、土浦あたりは車で行けちゃうし、電車でもいいなら池袋もありですね」

「ってことで延長よろしく。振り込みでいいのかな?」

「担当が瀬奈さんなんで、相談して伝えますよ」

「あの綺麗な妊婦さんだね。わかった。明日朝いちで北海道に戻るから、そのあとでもいい?」

「いつでもオッケーです」


 「じゃ!」と言って臼さんが席を立つ。


 なんだかわからないけど解決したらしい。ヨシ。

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― 新着の感想 ―
今頃になって姉弟の名前で羅臼で羅臼町、知床のヒグマだったのか気が付かなかった。
零士くんが現世で幽鬼を脱することが出来たのは、坂場くんが持つスキルで仏の慈悲を下したからだと思います。 恋する乙女の為に何か良い手立てがあれば良いのですが。
転生を願う乙女の数が増えたら 仏様が助けてくれたりするんですかね 魔界転生とか?
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