42.狂犬(わん)ちゃんがやってきた①
智たちが札幌に出発する前日から、Aチームが資金稼ぎで泊まり込みの鍛錬をしている。最初は5人だけだったけど、翌日には男子が7人、女子が5人増えた。
市船の生徒で桜前線3人ポニー4人Aチーム4人の12人はすでに来ていた。寄居ちゃんら3人はビッチさんが面倒見てるはず。計15人。
現在ハンターコースは27人で残りが12人。つまり、市船ハンターコースの残りの生徒全員がうちに来たことになる。
「葉介さん対応お願い!」
「えっと、ダンジョンは4つあるんだけど、君たちはどこのダンジョンに入りたい?」
葉介さんも動員しておおわらわだ。
智らは札幌に。ポニーの4人は池袋に行ってるけど部屋が足りない。彼女たちが帰ってくるとさらに足りない。東金か大網にホテルを探さないとダメかな。
「まさか全員来るとは諸葛孔明だって予想つかないでしょ」
急遽ベッドは撤去して布団に変更。相部屋とした。寝るだけだから我慢してもらう代わりに1000円にした。ゴブリン骨の魔石2個でペイできる。頑張って倒した分はお小遣いだ。
「それよりも食材が足りない!」
近くのスーパーとJAの直売所をはしごした。
「私の見積もりが甘かったようです」
京香さんがしょんぼりしてる。これを見越して寮にしたはずが、まさかハンターコース全員が来る事態は予想してなかったらしい。
「悪いこと、いえありがたいことに日比谷の学生もうちに興味を示していて、旅費稼ぎに来る可能性が高いです」
三島さんと由比ヶ浜君が学校でうちを宣伝したようだ。三島さんと由比ヶ浜くんも来たがってるけど部屋に空きがない状況で待ってもらっている。
「2月3月も、もしかしたらそれ以降も来る可能性はありますが手続きや建設に時間がかかります。ですので、おしゃれなトレーラハウスを5台と仮設としてトイレトレーラーも手配しました。前もってコンクリートを打ってあった駐車場予定地に置きます。布団で雑魚寝タイプですがパーティ専用として休憩も可能です」
5人を超えるパーティは少ないので40フィートサイズのトレーラハウスなら余裕とのこと。テーブルなどの家具を用意すれば数泊なら問題ないでしょうと。トイレと風呂は寮までいかないとないけど、食事付きで1000円なんだからそこは我慢してねってこと。合宿みたいで楽しいでしょ、と。
「それと、洗濯機と乾燥機の増設も急務です。女子が下着を洗濯するのにも必要です」
京香さんがぎゅっとこぶしを握ってプレゼンする。今でも洗濯機と乾燥機セットは4台ある。でもこれだけの人数になると不足する可能性があるんだとか。
今のところ3泊を上限にしているけど、突然の生理とかで下着の予備が使い切っちゃうとか。俺にはあまり理解できない分野なので京香さんの言うとおりにするつもりだ。
「金は出すんで、必要なものはガンガン買ってください。あ、食堂に自動販売機があるといいかもですね」
個人的にアイスの自販機が欲しいと追加した。冬に食べるモナカアイスは美味しんだぞ!
「水道工事と排水工事は寮をお願いした工務店さんに相談中です。水量が足りなくなる可能性があるので、寺ではなく購入した土地の水道を使うそうです」
「判断が速い。というか速すぎ」
「敷地内に移動型コインランドリーの設置も検討しています。近所の方々も使用できるようにしますので」
「梅雨時とか助かるね」
地域のためになるなら投資は厭わない。土地は余ってるのでこっちもガンガン使って欲しい。
幼稚園には洗濯乾燥機があるのでご安心だ。
「建物の拡張は様子を見ながら考えましょう」
無駄になっても仕方ないしね。
「守さん、いってきます!」
Aチームとクラスメイトがぞろぞろダンジョンへ向かう。
「こいつらには俺らがつくんで」
Aチームが彼ら彼女らと一緒にダンジョンに行ってくれるので助かってる。その代わり彼らの旅費稼ぎが減ってしまうのでバイト代として補填するのと零士くんの鍛錬を付けた。師匠の鍛錬はプライスレスなので収支は大幅にプラスなはず
「ケガをしたら隠さないことー。ちゃんと治すからねー」
「「はい!」」
瀬奈さんは顔をよく知られているので注意とかをお願いしてる。おかげで俺は家事に専念できる。ありがたい大好きです。
昼前にヒヨコ軍団は帰ってきたけど、疲れ果てて食堂で突っ伏してる子が多い。Aチームがこうだったなーと思いだしてふふっとなった。
「お昼は食べられそうかい?」
と聞けば、ゆるゆる手が挙がる。食欲はありそうだ。なら大丈夫でしょ。
お昼も終えた片付けでバタバタしてる午後2時。母屋のインターホンが鳴った。
『ちーっす。仙台から来た多賀城っていーまーす』
ちょっと幼女っぽい可愛らしく高い声が聞こえる。
インターホンを覗けば金髪ロングのJKが映ってる。ブレザーの制服でプリーツスカートだけど足首まである。スケバンか、はたまたメイド風か判断つかないな。
「仙台と言うと、ハンターコースの子かなぁ。でも後ろに人影はないし、もしかして単独で来た?」
ともかく玄関に向かう。みな忙しいから俺が話を聞こう。
玄関の先にいたのは、中学生並みの身長で、金髪が腰まである女の子だった。この子の身長は俺の胸までしかない。学校のデイバッグらしきものしか持ってない。
可愛いというかちょっと幼い顔つきに三白眼って感じで俺を睨み上げてる。
迫力あるけど背が低いので、なんだかほほえましい感じ。
「ここだと話ができないから寮に案内するよ」
寮の食堂に案内して適当な場所に座ってもらう。
「獄楽寺ギルドの坂場守です。えっと今日はどんな用事で?」
「オレは多賀城 京子。仙台第一ハンターコース3年。オレ、【祈り】スキル持ってて。で、佐倉の配信見てここに来た!」
「【祈り】!?」
三島さんに続いてふたりめだ。やっぱり【祈り】スキルはいるんだな。
ってか、一人称がオレ?
まあいい、話を聞こう。
「そっか、智の配信を見てきてくれたんだ。ちなみに多賀城さんのレベルっていくつ?」
「レべル4だぜ!」
「意外に高い!?」
「ここに来るまでで有り金みんな使っちまったんで、追い出されると辛いんだ。バッチリ働くんでそれで勘弁してください!」
うわぁ、智以上に行動力あり過ぎだし、先を考えてない子だ。




