-不法侵入と怪しい影-11P
茶の木が揺れていたせいで掻き消されただけかも……。
急に僕の耳元で、誰かが覚えたての言葉を使うような不自然さでそう呟く。
僕はその声に全身をビクリと揺らし、硬直する。
それを良しとしたのか、僕の耳元で魂を喰わせろと囁いたナニカが僕の体に触れようと、手を伸ばす気配を感じ取る。
いや、実際には触れようとしているのかなんて判らなかった。だけどそんな予感がして、僕はとっさに、
「嫌ァァァァァァァァ!」
なんて叫び、それと同時に激しい衝撃波が産まれ、そのナニカを吹き飛ばす。
「なにがあった!?」
「どうしたの!?」
そんな僕の金切り声に驚いたカルマンとヘレナは、同時に振り返り僕の安否を確認する。
ドーンッ
その声から少し時間を置くように、かなり遠いところでなにかが衝突するような音が。
さっきの衝撃波のようなものはなんだったんだろ? カルマンやヘレナがやってくれたものではないと思う。
だって、二人とも気づいていそうになかったから。
ならばさっきのは? そんなことを考えても判らない。
先に伝えるべきことは、なにかが僕の耳元で、
『その魂を喰わせろ』
そう呟いたこと。
僕はそれを二人に共有したあと、ここがアーム・ド・リーパーの住処になっているかもしれない。という仮説を立てる。
そして、その仮説を裏付けるように、よく目を凝らして見ると、そこら中に形の定まらない黒いモヤのような影が、あちらこちらに存在していることに気づいた。