-不法侵入と怪しい影-8P
良い香りね。なんて茶畑から漂う若草のような、花のような香りにうっとりとした表情を見せる。
「あまり長居をするつもりはない。さっさと下見を終わらせて、他の場所も見に行くぞ」
カルマンはそんなヘレナにこれだから女は。そう言いたげに横目で睨み、そして先に進んでいく。
「あなたにはセレンディブの素晴らしさが解らないのね! 可哀想に」
そんなカルマンの発言に、これでもかと嫌味を放つヘレナだけど、ヘレナはヘレナで、なんか違うって肩を落としていたよね。なんてことを考えながらも、それを言ってもなにも良いことなんてない。そんなこと理解しているからグッと飲み込んだ。
「それにしても広すぎない!?」
そう。そんなことよりもこのセレンディブは国が一つあるんじゃないかと言われるほど広い。
色んな茶畑が存在するけど、みんな同じようなものばかりだから目新しいものや目移りするようなものはどこにもない。
ただ悠々と広がる茶畑がそこにはあるだけ。
歩いても歩いてもそんな感じだから、僕は疲れを覚えてそう口にする。
「そうは言っても全然歩いていないんじゃないかしら?」
「こいつが言う通りだ」
そして