-ヘレナの意外な趣味-〔後編〕8P
僕がヘレナに聞いたと同時に、どこからともなく悲鳴に似た野太い叫び声が木霊する。
「え、どうしましょう……」
ヘレナはその声を聞き、びっくりした表情で、様子を見に行きましょう! なんて僕の手を引く。
「どうしたの? そんなに焦って!?」
「さっきの声、人間の声に似ていなかったかしら?」
「あんな大きな叫び声を発する人間なんているかな?」
僕とヘレナはそんな会話をしながら弾丸を追いかける。
弾丸が通った跡は、とてもミサイルランチャーよりも小さな弾だったとは思えない程の痕跡を残し、真っ直ぐに道を切り開いていた。
「ちなみに普通の対物ライフルでもここまでの威力はないわよ!?」
ヘレナは自分でも驚いたのよと言いながら僕に言い訳をする。
「そうなんだ? 火薬? を積めすぎたの?」
「いえ……そんなことないと思うけど……」
ヘレナはそう言いながら「あと、魂で具現化しているから正確には火薬なんて積めてないわよ!?」と反論してきた。
でもそれならばさっき〝火薬〟が云々と言ったのはどうしてなのか? と思ったけど、聞いてもどうせまたバカにされそうだし……。と思い僕は、別のことを聞いた。
「魂の具現化でも火薬はできないってことかな?」
「解らないけど……火薬に具現化したところでなんの意味もないし……」
そんな会話をしていると、微かに人影のようなものが見えてきた。
「生きていればいいのだけど……」
ヘレナは不安そうにそう呟く。
「あの弾が人間に当たってたらどうなるの?」
「木っ端微塵ね……」
そんな恐ろしいことを口にした。
だけど見る感じ、人影は木っ端微塵になっていないし大丈夫そうかな? なんて思いながら、僕たちは人影の元へ急いだ。