-ヘレナの意外な趣味-〔後編〕1P
「あ、リーウィン。念の為、百メートル程離れて貰えるかしら?」
ヘレナは慣れた手つきで、ロケットランチャーに付いているピンを外し、コッキングレバーを引いたあと、安全バーを解除しながら僕に言う。
「どうして?」
僕は理解が追いつかず首を斜めにした。
「え? 理由を知ってて昨日逃げたんじゃないの?!」
そんな僕の態度にヘレナは、目をぱちくりさせ口をあんぐりとする。
「いや……。なんというか嫌な予感がしただけっていうか……」
あの時は確か──。なにか嫌な予感が胸の内でかすめ、とっさに体が動いただけなんだよね。そう思いながら僕は、ケロッとした顔をしたあと、ニコリと微笑んだ。
「はぁ──。撃った時の衝撃に巻き込まれて転んでおいて、よくどうして? なんて聞けるわね」
ヘレナは、盛大に溜め息をつきながら、「通常、ミサイルの後ろ三十メートル内にいると、巻き込まれて死ぬわよ!? 運良く死ななくても重症確定ね」とかなんとか言って僕を脅す。
「そ、そんなに怖いものを撃ちこんだの!?」
僕は驚愕すると同時に、ならなぜそんなに威力が強いものを撃ち込んだのに、タナストシアには効いていなかったんだろう? そんな疑問を覚えてしまった。
銃を無効化できるとか? いや、最初と最後にヘレナが撃ったタナストシアはしっかりと血を流していた。だから効かない。ということはまずないだろう。ならどうして、吹っ飛んだだけで、動けていたのか?