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-懐かしい場所-4P
そして水面が次に現れた。
「俺は──だ」
そして、黒を吸い込んだ魂に似たナニカは徐々に姿を人型に変え、なにかを口にする。
だけど、肝心の部分が何度聞いても聞こえない。
そこだけは聞いてはいけない。そう無意識に拒絶しているように、無音に変わっていく。
そして、人型に変わっても姿・形はよくわからない。
黒いモヤをまとった不気味さのみを放ち、僕の前に立つ。
そして沈黙が漂い始めた。
水面に波紋が描かれるがお互い、動きを見せない。
これは僕だ。そう言いたげに、目の前のナニカは動こうとしなかった。
「……」
「はぁ──。おまえを迎えに来た」
僕が沈黙を貫いていると、堪えきれなくなったように、目の前のナニカがそう口を開き、そして僕に一歩、近づき始めた。
ナニカがゆっくりと歩むたび、