-エグル・アードラーとは?-2P
昔、ここではない遠い遠い異国に、容姿端麗で、どんな女性よりも美しい少年がいました。
少年の名はガニメド。
栗色の髪に黒い瞳、ロザルト色の唇をしており、その容姿は男女関係なく虜にするほどでした。
それは種族を超え、神をも虜にするほど。
ガニメドの美しさに惚れた全知全能の神は、エグル・アードラーに変化し、ガニメドへ会いに行くことを決意しました。
その頃ガニメドは、山でシャーフ(羊)の世話をしていました。
が、突如空が夜のように陰り、なにごとかと不穏な空気を感じたガニメドは、空を見て驚愕します。
空──いいえ、ガニメドの上空には通常よりも大きな──。それは想像を遥かに超える大きさのエグル・アードラーがいたのですから。
ガニメドは驚き困惑し、とっさに逃げようと足を一方前に踏み出しました。
ですがエグル・アードラーはそんなガニメドに、逃げる暇など与えずさらい、それを見た人々も助ける術など持ち合わせておらず、その間に天高く連れ去られてしまいました。
かなり高い高い空。通常ならば凍死するであろう高さまで登っているのに、なぜかガニメドは寒さを感じません。
(どうして寒さを感じないのか? 天空は寒いと言う噂は嘘だったのか?)
そんなことを考えていました。
が、それを問いかけても答えてくれる人間など、どこにもいません。
ガニメドはそんな疑問を抱えつつも、呑み込みどこに連れていかれるのだろうか? そんな恐怖や不安を抱えながらも、暴れることはしませんでした。
もし暴れて上空から落とされてしまえば、一溜りもありませんから。
やがて、神々が住むとされる山の山頂へ降り立ち、そこでガニメドは解放されました。
が、解放されたのは良いものの、帰ることは不可能です。
(どうすれば良いのか……)
途方に暮れるガニメド。