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067.5-カルマンの心配性-




「俺がおまえに、いつ悪さを働いた? 一度もないはずだが」



 だけどカルマンは、あの時のことをすっかり忘れているらしい。おまえの命を何度救ってやったか。と嫌味を言いながらカルマンは誇らしげな態度を見せる。



 なんだろ。どことなく|フェル(誰かさん)を彷彿させるそのドヤ顔は……。



「はぁ……。もういいよ。僕が悪かったよ……」



 僕はそう感じながらも溜め息をつき、絶対カルマンとフェルはなにかしらの関わりがあるはずなんだよね……。借金とかじゃない部分で……。なんて内に落とし飲み込んだ。



「あぁ」



 カルマンは僕が悪いと認めるとそれで満足し、また鼻で笑う。



「そう言えば、いつ退院……? できるの?」



 そんなカルマンに呆れなんかを覚えながらも僕は、そう確認する。



「さぁな? 今すぐにでも、こんなクソみたいなところからおさらばしたいもんだ」



 カルマンは、そう言いながら右の手首に付けられた、頑丈そうな手枷を僕に見せる。



「それ、カルマンの力で引きちぎれないの?」



「これはクソジジイが、ロリババアに頼んで作らせたお手製の枷だ。だから、魂力では壊すことが出来ない。素手で壊せる奴がいるならば、それは化け物だろうな」



 カルマンは、ジャランと手枷に着いた鎖を揺らしながら僕に説明する。



 僕はそんなカルマンとは裏腹に、ヘレナなら引きちぎれちゃうんじゃないかな……。なんて考えが脳裏に過る。まぁ、それは口にしないけど。



「自由に動けるようになったら、今度二人(・・)でムーステオに行かない?」



「なぜ、おまえと行く必要がある?」



 カルマンは未だに僕と距離を置きたいのか、違うのか正直、解らないけど、僕と二人で行く場所でもないだろうと言う。



「カルマンって紅茶好きでしょ? 快気祝いにどうかなな? って!」



 僕はムーステオの紅茶はどれも美味しいし、迷ってもクルトがおすすめの紅茶を出してくれるから! とカルマンを押してみる。



「フッ……。おまえ、楽しそうだな」



 そんな僕の楽しげな様子をみてカルマンは、鼻で笑いながらもどこか寂しそうな顔をする。



「うん! クルトも良い人だし、とても楽しいよ! カルマンも一緒に行こ! 絶対、楽しめると思う!」



 そんなカルマンを見ていると、やっぱりなにかやりたいな。なんて思いが浮かび、これでもか! というほどグイグイ押す。



 押してもダメなら引いてみろ。とは言うけど、今のカルマンは押せばなんとかなる気がするし!



「…………仕方ないな。機会があれば着いて行ってやる」



 カルマンは少し間を開け、面倒くさそうだけど、どこか嬉しそうな様子で僕にそう言ってくれた。



「約束だからね!」



 僕は今日、一番の笑顔でカルマンに約束と念を押す。



 カルマンは面倒くさそうに「あぁ。約束、約束」とぶっきらぼうに答えながら顔を背けた。



「じゃあ、またお見舞い来る──あっ! ねぇ!? ロザルトの蔓っていつ消えたの!?」



 カルマンの病室から出ようとドアに手をかけながらも、僕はふとロザルトの蔓のことを思い出し、カルマンの元へ戻り、椅子に腰かけながら確認した。



「あ? あー。あれは数時間もすれば勝手に消えたぞ? それよりもおまえ、あんな危ないもので俺を拘束するのは辞めろ!」



 カルマンはそう言いながら今、思い出したかのように怖い顔をして僕を殴ったあと、危うく喰われるかと思ったと言う。



「喰われる……?」



 僕はなぜ、ロザルトが人を食べるの? なんて思いながら小首を傾げた。



「おまえ……。もしかしてなにも知らないのか?」



「なにが?」



「はぁ……。まぁ良いか……。気にするな」



 カルマンは顔に手を当て、呆れた様に大きな溜め息をつく。



「……?」



 だけどカルマンがなにを言いたかったのか? 僕にはなにも判らない。僕は再度小首を傾げながら、数秒固まった。



「おまえそろそろ帰らないとまた、母親に怒られるんじゃないのか?」



 カルマンはそんな僕を見て、面倒くさそうに声を発する。



「ハッ! えっ!? 今、何時!?」



「もうすぐ十六時半頃だな」



「えっ、カルマンごめんね! 僕、そろそろ帰らなきゃ!」



 僕はそう言いながら慌てて病室の扉に手をかける。



「あぁ」



 カルマンはどこか僕は間抜けだと言いたそうな顔をしながら「忘れ物はないか?」なんて母さんみたいなことを言いはじめる。



「大丈夫だよ! 僕、子供じゃないんだから忘れ物なんてしないよ!」



 なんで急に|カルマン(この人)は、そんなことを言い始めたんだろう? やっぱり僕のことを子供だって思ってるんだな! ほんと、カルマンそういうの良くないと思う!



 僕はそう思いながらも、笑顔で言い切った。



「なら良いんだがな」



 そう言いながらカルマンは、僕が念のため持ち歩いている、家の鍵がついた黒猫のホルダーをクルクルと指で回しながら「ならこれはなんだ?」といつ拾ったのか? 盗んだのかは判らないけど嫌味な笑みを見せ聞いてきた。



「え!? なんでカルマンが持ってるの!?」



 カルマンが盗んだ……? いや、流石のカルマンもそこまで手癖は悪くないでしょ。それに、盗むなら(セクト)



 でも僕はカルマンに借金している立場だし、カルマンがそんなことをするわけもない。



 かといって、僕が落とす? そんな間抜けなことしないよ。もう僕は大人だし!



 そんなことを考えても答えは解らない。



 いつも服のポケットに入れてるはずなんだけど……? そう思いカルマンに確認した。



「おまえが、最初に来た時に落としたから拾ってやった」



「え!? 今日の話だよね!? 家は基本開いてるんだけど、たまに母さんが鍵をかけて家を出ちゃうから、念の為、持ってるんだ!」



 僕はカルマンから鍵を受け取り、服のポケットに無造作につっこみながらも、どのタイミングで落としたんだろ? なんて考える。



 そんな僕にカルマンは、



「いや……。鍵はちゃんとかけろ」



 と、これまた変なことを言い始める。



 だけど僕はそんな面倒なことをしたくない。



「だって、面倒臭いじゃん?」



 そう言いながら眉尻を落としていると、



「おまえなぁ……。はぁ──。危機感をちゃんと持て」



 カルマンは引き気味に呆れ、溜め息までつく始末。



「大丈夫だよ! 僕の家の周りは、優しい人ばかりだし!」



「それがダメなんだ。他人を直ぐに信用するな」



 僕がそう言うと、カルマンは少しだけ語気を強め僕に注意を促す。



「なんで?」



「他人は誰も信用しない方がいいぞ?」



 どうしてそんなことを言うんだろ? 僕はカルマンが言うその言葉に少し寂しさを抱えつつも、冗談のつもりで、



「……カルマンのことも信用しちゃダメなの?」



 そう口にした。



「……あぁ」



 カルマンはその言葉を聞き少し俯きながら、静かに答える。



「ヤダよ! 僕はカルマンのこと、信用してるしカルマンも僕のこと、信用して欲しい!」



 そんなカルマンを見て僕は、少し寂しくなったけど、首を横に振り、真顔で詰寄りながら他人を信用するのも大人なんだ。なんて意味の解らないことを力説した。



「おまえ……。フッ。ほんとガキだな」



 カルマンはそう言いながら、早く帰れ。と、シッシと追い払うようなジェスチャーのあと、気をつけてな。なんてそんな言葉を連ねた。



「じゃあ帰るね! あと僕は、子供じゃないから!」



 僕は二、三時間ほどカルマンの病室に滞在し、そんなたわいもない会話をしたあと、教会をあとにした。



 僕が病室を出る時カルマンは、「ありがとうな」とよく解らない感謝をしてきた。



 僕はどうして急に、感謝なんかしてきたんだろう? なんて思ったものの、カルマンの気まぐれなんだろうな。とその意味なんて一切、考えず流した。



 カルマンが退院──。と言うより、拘束を解いて貰ったと、報告を受けたのはそれから三日後のことで、僕はカルマンに、「この日にムーステオで快気祝いをしよう」と約束を取り付けた。



 約束を取り付けたのは良いけど……。まさか、あんなことが起こるなんて、この時の僕は知る由もなかった──。



未完のゼーレ(仮)にお時間を下さりありがとうございますっ!



少しでも面白い、続きが気になるな。と思って貰えましたら〔ブックマーク〕や、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてもらったりGoodボタンを押して貰えると嬉しいです。



それだけで励みとなり、月末も頑張れます。



応援のほど、よろしくお願い致します!



また、次回から2章箸休めが始まります。



3章からは徐々にまた伏線が多くなるため、急速でリーウィン達のとある一日を覗いてあげてください!


読んで頂き、ありがとうございます!


次回は2章箸休めになります。2章の箸休めは、元々4章の緩和剤目的で新しく執筆した作品になるので、少し時系列がぶっ飛んでいるかもしれませんが、そんなもんなんだとお読み頂けると!


少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけましたらブクマや評価(広告下の☆☆☆☆☆▶︎★★★★★など)して頂けるととても励みになります!


また、感想やレビュー、いいねでの応援も大変嬉しかったりします!


今後も応援のほどよろしくお願いいたします!

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