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065-助けに来てあげたわよ!-



 キュウッッッッ!!!!



 その声がもう一度、聞こえてきたと思うと、なにかが空から降ってきたのかな?



 ドスンッと凄まじい音を立て、地面に軽く衝撃が走る。



 あ〜、本当に死んじゃうんだな。なんて僕は弱気になりながらも、偉そうなことを言ってごめんね。僕はやっぱりなにもできない、誰かに守られてしか生きることができない軟弱者だ。なんて、カルマンへの懺悔(ざんげ)を胸に落とす。



「えいっ!」



 そんな懺悔をしていると、人間の声に近いナニカの鳴き声が聞こえた気がする……。



 いや、そんなことないよね……。こんなところに人間がいるはずもない──。



 でもどこか聞き覚えがあるような──。



 ううん、期待を持つのは辞めよう。そんな思考を頭が痛くなるくらい繰り返す。



 だけどそれと同時に、ズドーンと凄まじい音をさせながらネコ型のメテオリットの声が遠退いていく──気がする。



 これは恐怖……ううん。そんな願いから来る妄想かもしれない。僕はいつ殺されるの? こんなところで死にたくはない……だけど──。



 未だに生存するネコ型のメテオリットに新たな敵の襲来。



 それだけで僕が死ぬのはもう、確定事項も同然じゃないか。



 カルマン……ヘレナ……ううん、そんな弱音は良くないよね。



 そんな弱音と葛藤しながらも、戦意を消失していく僕に対し、ネコ型のメテオリットは僕に攻撃を仕掛けることはない。



〔ぬ? ぬわわわ〜ん!〕



 それどころか、僕と闘っている時は発さなかったであろう、雄叫びに近い声を上げながら、なにか別のモノと闘っているのが音だけで伝わってくる。



 僕は、そんな不可解な現状に疑問を持ち、恐る恐る手を下ろし、目を開けた。



 地面には放射状のヒビが刻まれ、数人の人間となんだろ……。神話に出てくる様な、龍と思わしき影が僕の目に映る。



 あっ……やっぱりこれ死ぬやつだ。



 僕は反射的に殺られる。そう理解しビクッと、身体を震わせ、最後の懺悔をしようと手を胸の前に組む。



「リーウィン! 弱虫なくせに一人でなに、突っ走てるのよ!?」



 だけど、そんな僕をみてか偶然か、誰かが荒らげた声を投げつける。



 そこには無茶しないでなんていう心配の色や弱いくせに! という苛立ちなんかも含まれている気がするけど、その声で僕は安堵した。



「ヘレナっ!」



 僕の願いが届いたのか? それとも奇跡に近いモノなのか──。それは判らないけど、ヘレナは助けに来てあげたわよ! なんて誇らしげな顔をしながら、誰かさんにでも感化されたのかしら? と、口を酸っぱくする。



「立てる?」



 そして大きな龍の背中から、ルフーラが飛び降り、僕に手を差し出してくれた。



「う、うん……ありがとう……」



 僕は、小刻みに震える手を必死に抑え、ルフーラの手を握る。



「ルーにゃん! 降りれないにゃ!!!!」



 どうやらヘレナとルフーラだけではなく、クルトもいたらしい。



 クルトはそう言いながら、龍の首元をギュッ。と力強く締めながら「怖いにゃ!」と騒ぎ立て、ルフーラに助けを求める。



「はぁ──。ルーンどうにかしてあげて」



 ルフーラは呆れ顔で溜め息をつき、ルーン……? に指示を出す。



 ルーンって誰? いや、一人だけ頭には浮かんでいるんだけど……えっと、ルーンってあの……?



「えっ、ちょっと待って!? もしかして、あれって、ファルファルーン神なの!?」



 僕は目を見開きながらルフーラに確認する。



「耳元で叫ばないでくれる? うるさいんだけど。それに、今は魂を守護するモノ(ツカイマ)の姿をしてるから、神なんて付けなくていいから」



 ルフーラは片耳を指で塞ぎ、僕の声がうるさいと視覚からでも判る様に大袈裟にアピールをしてくる。



「あっ、えっとごめん……ていうか、そういうものなの?」



 僕は謝罪しつつもキョトりと小首を傾げた。



「別にルーンも、神って崇められたい訳じゃないみたいだし、好きに呼んでいいと思うよ」



 魂を守護するモノ(ツカイマ)は契約主に似る。なんて、よく聞くけど、ここまで似るモノなのかと、僕はフェルを思い浮かべる。



 いや……、ないかな……。なんて僕は臭いナニカを投げてくるフェルを思い浮かべながら首を全力で横に振った。



「なに考えてたかは解んないけど、そんな暇ないんじゃないの?」



 そんな僕を見てルフーラは、現状を把握しろ。そう言いたげにヘレナがいる方向を指さす。



 ルフーラの言葉通り、僕たちの前には攻撃体勢が整っている。そう言わんばかりの様子で、ネコ型のメテオリットが片足で地面をかいている。



「皆さん、魂を具現化できるかしら?」



 そんな現状の中、ヘレナはなにを思ったのか? 突拍子もなく二人に確認し始めた。



「具現化ってこれのこと?」



 クルトはよく解らない。そう言いたげに、首を傾げていたけど、ルフーラは以前、ムーステオで僕たちの武器を見たからか、飲み込みが早かった。



 僕が持っているロザルトの鞭を指さしてヘレナに聞く。



「そうよ!」



「やり方が解れば出来るかも」



「解んにゃいけど、やり方教えて欲しいにゃ!」



 ルフーラは一か八か。やってみようと思ったんだと思う。ヘレナを見る真剣な眼差しからは、力になれるなら。そんな感情が篭っている様な気がした。



 一方、クルトの方は面白そう! なんて幻聴が聴こえてきそうなほど目を輝かせている。



 こうも性格が出るのか。そう思うけどこの流れは……。そんな思考を脳裏で掠めていると、



「リーウィン! 少しの間、気を引いててもらえるかしら!?」



 まぁ、そうくるよね。



 僕の予想通りの反応を示し、ヘレナは二人にやり方を説明し始めた。



「わっ、解った!」



 僕は不安げを含む声色で頷きながらも、大丈夫。僕ならできるそう信じ、ネコ型のメテオリットの気を引きつけるために鞭を振るった。



〔ぬわぁ──〕



 ネコ型のメテオリットは、またおまえか、つまらない。人間で言えば溜め息をつくような声を発したあと、かかってこい。そう言いたげに煽り始める。



 えっ、僕なんか……見下されてない? そう思うけど、それも仕方ないことかもしれない。だってカルマンやヘレナみたいな戦闘センスなんて皆無だし、敵に翻弄されてたし……!



 でも、僕だってできるもん! 僕はネコに見下されたのが少し気に食わなくなり、ついそんな挑発に乗ってしまった。



 僕は鞭を握りしめ、力を込め振り下ろす。



 振り下ろした瞬間、鞭は空気を切り裂くような音を響かせ、砂埃を立たせていく。



 それは僕の視界を奪うと同時に、ネコ型のメテオリットの視界をも塞ぐ。だけど相手はネコだ。猫の髭は第三の目とも言われ、空気の動きなんかを察知し、敵の気配なんかを察知するという。



 だからこんな土煙なんてなんの役にも立たない。



 が、メテオリットは本物のネコとはまた違うらしい。その音に一瞬反応し、鋭い爪を見せて向かってきた。



 僕は必死に後退りしながら鞭を振り続ける。ネコ型のメテオリットは素早く動き、その爪が何度も僕の顔すれすれを掠める。冷や汗が滲み、心臓が激しく鼓動する。



 まぁ最初から結果は見えていて、僕は押される状況なのは判りきっていた。なんなのこのメテオリット! もう少し僕の力に合わせてくれないかな!? そんな苛立ちを覚えながらも、僕は僕の役割を果たすことができていたらしい。



 その間にルフーラもクルトも、僕なんかよりかなり飲み込みが早かったらしく、直ぐに魂の具現化に成功したらしい。



 クルトは、猫の顔が描かれた大きなハンマーを。ルフーラは……本……? を具現化していた。



「えっ……。本って武器なの?」



 クルトの方は見た限り、武器に見える。だけどルフーラの方は、一見、武器には見えない。



 こんな時にも本なのか。そんな呆れは無意識に声として出てしまっていた。



「うるさい。まぁみていなよ」



 だけど困惑する僕を横目にルフーラは、大きな溜め息をつき、なにか策でもあるかの様な態度で、僕を諌める。



「じゃあ僕、試し打ちするにゃん♪」



 どこか楽し気な様子でクルトは、軽快に飛び跳ね、具現化したハンマーでネコ型のメテオリットを頭上からズドーンッと鈍い音を立たせ叩きつける。



〔ぬおおおお〜〜ん!!!〕



 そんなクルトの攻撃は、脳天を直撃し、ネコ型のメテオリットは凄まじい威力で地面に打ち付けられ、苦しむような奇声を上げる。



「うわぉ♪ たっのし〜ぃにゃん♪」



 そしてクルトは興奮した様子で、感情と連動する尻尾をピンッと立てながらピョンピョン跳ねる。



 が、それでもネコ型のメテオリットは攻撃する手を辞めず、再び鋭利な爪を覗かせる前足を大きく振り上げる。



「じゃあ、次は僕ね」



 そう言いながらルフーラは、具現化した本を開き、



「──。その身を炎に変えし彼のモノを業火の如く灰に染めよ」



 なにかの呪文を唱えると、ルフーラの後ろから見慣れない炎の陣が複数現れ、ネコ型のメテオリットに向かって放たれていく。



 その炎はネコ型のメテオリットを焼き尽くす勢いでまとわりつき、メテオリットは〔ぬわ……、ぬわーん……!〕と苦しそうな声でジタバタと藻掻く。



「じゃあ、最後は私ね!」



 ヘレナも二人に続き、具現化したリボルバー式のショットガンを両手で構え、照準を合わせ、メテオリットの(コア)が見えた瞬間、なんの迷いもなくトリガーを引いた。



 バーンッ──。



〔なぁ〜!〕



 ヘレナの放った弾丸は、華麗にメテオリットの(コア)を撃ち抜き、赤い液体を吹き上げながら最後に一声鳴くと、パタリと倒れ徐々に灰になり消えていった。



 その赤い液体は、戦闘センス抜群なヘレナを彩るロザルトのように美しく散り、僕は流石だな。なんてこの三人の中で、僕が一番弱いことに気づかず見惚れてしまった。



「ふう……、助かった……」



 一時期はどうなるかと思ったけど、なんとか死なずに済んだみたいだ。



 気を張りつめていたからか、僕は安堵でその場にヘナヘナと座り込む。



「あんた、ほんとだらしいないよね」



 ルフーラはそう言いながらも、僕も疲れたと言い、木の根元に座る。



「楽しかったにゃ♪」



 クルトは、僕たちとは対照的ににこやかな笑みを浮かべ、ルフーラの元へ走り寄り、自然な流れでルフーラの横に座った。

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