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64.5.5-一人でもできることを-〔後編〕


 ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※



 その頃リーウィンはと言うと──。



「うわぁ──っ! いててて……。えっ、ちょっと待って! 待ってて!」



 僕はネコ型のメテオリットに、玩具みたく翻弄されていた。



 やっぱり僕は、一人ではなにもできないのかな……?



 あの時、体が勝手に動いてカルマンの正気を戻した。だけど、あれは僕の力じゃなくて知らない誰かの意思。そんな気がする……。



 あれから一度も、あの時の武器を出せていないのがなによりの証拠。



 どうする? 逃げる?



 逃げればカルマンが行くだけじゃない?



 今のカルマンが行けば十中八九、死ぬ。



 カルマンが死ぬのは嫌だ。僕に任せて良かった。そう思って貰いたい! ならどうする? 頑張るしかないよね、今はそれだけを考えよう。



 僕は自問自答を繰り返した末、ギュッ、と強くロザルトの鞭を握り覚悟を決める。



「えいっ!」



 そしてネコ型のメテオリットと、ある程度の間合いを取りながら鞭を無心で振るい続けた。



 だけどこの時、ネコ型のメテオリットに必死になりすぎて周りが見えていなかった。



 徐々に後退させられ、逃げ道のない場所へと誘導されているなんて気づきもせずに──。



 ヒューン──、ドーンッ。と僕の鞭が風を斬る音や、ネコ型のメテオリットが地面を叩く音が響く。



 そこには他の音は存在せず、それが一層、僕の不安や恐怖なんかを募らせる要因となっていた。



 何度も鞭はネコ型のメテオリットの(コア)に当たるけど、回復力があるのかもしれない。



 少し傷を入れても、すぐに修復して埒があかない。



 どうしたらいいんだろ……。こんな時カルマンならどうするんだろ──。



 僕は、そんな思考を繰り返し、必死に打開策を講じる。



〔ぬわ〜〜!!!!〕



 ドンッ──。



 考えすぎていたせいで周りが見えていなかった。いや、そもそも誘導されていることなんて気づいていなかった。



 いつの間にか僕の後ろには、大きな木の幹が立ちはだかり、その時になって逃げ場が塞がれ、たらりと背中に冷ややかな汗が垂れる。



 本当に逃げ道はない? 探さなきゃ。



 目の前はメテオリット。後ろは木、左右も一撃を避けるくらいの広さはあっても、袋のねずみに戻るだけ。



 あー。これは、何度目かの絶対絶命な状況だ。



 どうする? どうすればいい?



 僕は自問自答を繰り返す。



 そんな僕を見て一瞬、ネコ型のメテオリットはニヤリと怪しげな笑みを浮かべ、鋭い爪がついた前足を振り上げる。



 どうにもできない現状に、僕はとっさに目を瞑り、顔を両手で覆うように隠す。



 ごめんカルマン……。



 あんなに強く啖呵を切ったのに……。僕はまだまだ、ダメダメだったよ……。



 そして、今日はかなり不運に見舞われる日らしい。



 どこからか、キュウウウ──。という別のメテオリットらしき鳴き声が微かに耳に届き、僕は慚愧の念にかられながら死を覚悟した──。

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