064-一人でも出来ることを-
教会から飛び出し、無我夢中で声のする方へ走る。
カルマンに啖呵をきった手前、おまえは役立たずだな。なんて言われるわけにはいかない。
何分経ったかは解らないけど、徐々に大きなネコの様な姿の生き物が見えてくる。
十中八九、メテオリット又はそれに準ずるモノ。
多分あれが鳴き声の正体で、カルマンが倒そうとした敵。なんて思いながらも僕は、そのネコの様な生き物に近づいた。
ぬわ〜ん。
大きなネコはそう鳴きながら、周りにある木々などを鋭い爪で、片っ端から薙ぎ倒していく。
「うぅ……。あんなに強く啖呵を切ったけど、いざメテオリットを目の前にすると……恐怖を感じちゃうな……」
僕の足はガクガクと震えて、寸前で止まる。
だけどここで逃げ腰になっても意味がない。僕は深呼吸をしたあと、魂をロザルトの鞭に具現化させ、攻撃の準備をする。
「ヒッヒッフー」
攻撃する前、僕は目を閉じ大きく息を吸い込み、母さんから教えて貰ったおまじないを一度し、全力でネコのバケモノに鞭を振るう。
〔ぬわ〜んっ?〕
鞭は強烈な一撃をバケモノにお見舞する。だけど、バケモノはそんな攻撃、屁でもない。そう言いたげに振り返り、僕の存在に気づくや否や、鋭い爪を振り上げ攻撃を仕掛けてくる。
「うわっ! ちょっ、ちょっと待って!?」
僕は、本能的に横へ飛び退き、覚束ない動作でかろうじて攻撃をかわす。
が、攻撃をかわされた鋭い爪を覗かせる前足は、地面に突き刺さり土煙を立たせ、視界を遮った。
〔ぬわ〜!!!!!〕
攻撃をかわされたバケモノは、怒り狂う様な態度で、鋭利な爪を覗かせる前足で連撃する。
僕はそんな攻撃を後退しながらも必死にかわし、両者一歩も引かぬ攻防を続ける。
※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※
(あれ……?)
僕はバケモノと対戦しながらも、弱点がないか必死に観察し続けていた。
その結果、メテオリットの特徴である、赤く吐出した核を見つけ、それに向かって無我夢中で鞭を振り下ろす。
ピシャッ──。
鞭は核にヒットし、ネコ型のメテオリットは一瞬、体制を崩しかける。
「ダメか……」
核にヒットしたのは良い。だけどかなり丈夫なのか? 致命傷を与えるほどの傷をつけることはできなかった。
僕はどうするか? 鞭を振るいながら、必死に考えた。