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062-カルマンのお見舞い-


「ヘレナ、一人ですぐ倒せたじゃん! どうして手伝ってくれなかったのさ!」



 僕はヘレナに文句を垂れながら、不満げに理由を聞く。



「だって、私が居ても居なくても倒せたはずだもの」



 そう言いヘレナは涼し気な顔をし、紅茶がなくなってしまったわ。なんてマイペースな様子でで悲しげな表情に変える。



「紅茶ならまた淹れるにゃ! って言いたいところだけど……」



 そんなヘレナにクルトは、励まそうと考えたんだと思う。だけど現状は──。そう言いたげに辺りを見渡した。



 テラスは壊滅的状態で、バケモノや僕たちのせいで、デッキは大破寸前。



 こんな状況では外観も削ぐなうし、二次被害を被る。クルトはそれを理解しているからか、お店を続けられない。そう寂しげに言った。



 これで、そんなの知らない! なんて言えるだけの度胸を僕たちは誰も持ち合わせていない。



 まぁ、ヘレナならそんなこと関係ないわ! なんて言いそうだけど、少しは空気が読める。だからどうするか? そんな雰囲気を漂わせ、一定の間に無が漂う。



「じゃあ、今日は終わりってことで」



 そんな無を平然と壊すように、ルフーラはそそくさと店内へ戻ってしまった。



 本当はもう少し話をしたり、会を続けたい気持ちはある。だけど、自分たちが要因でもある。



 だから誰もそんなルフーラを止めることなんてできず、僕は店内へ消える背中をただ見つめた。



「ルフーラの言う通りね……」



 ヘレナも渋々といった様子で寂しげに、そうポツリと零す。



 そして、僕たちもルフーラに続き、大破してしまったテラスを、あとにした。



 そのあとは誰も一言も喋らず、重たい空気のままムーステオで解散した。



 ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※※ ※ ※



 元々予定していた時間よりも、かなり早めに切りあがった仲良くなった会。



現在の時刻は、おやつの時間になるか否か──。



「はぁ──」



 僕は重めな空気を吐き出しつつ、このあとどうするか思案する。



 そういえば、カルマンは目を覚ましたのかな? お見舞いに行くべき……? いや、でも──。



 そんなことを考えていると、僕の悲観的な感情とは裏腹に、無意識に足が勝手にとある場所へ進んでいた。



 そして十五分後──。



 とある場所……。教会に着いたのは良いものの、僕は勇気がなくて、一旦、教会をあとにし、露店なんかをウロウロと物色し、色んなことを考えていた。



 そのほとんどはカルマンのこと。



 多分だけど、カルマンは教会にいると思う。それは誰かに教えてもらったわけじゃない。だけどそんな気がして仕方ない。



 でも本当にいると思う? そんなの解るわけないじゃん。そんな無意味な自問自答を繰り返し、いくら払拭しようとしてもカルマンのことが脳裏から離れない。



 これは見舞いに行かない限り、ずっと脳裏に付きまとうやつだ。僕はそう確信し、重たい腰をあげた。



 だけどここで気がかりなことが。



 お見舞いに行くんだし、なにかお見舞いの品を持っていくべきでは!?



 そんなことを考える僕と、いや、カルマンに笑われるかも……? なんて悲観する僕が脳裏で揺れ動く。



「うーん」



 こういう時、どうするのが最善なのか判らない。



 そんなことを考え唸りつつ、一応、お見舞いの品も買っておこう。そんな結論を出した。



 見舞いの品は、花は定番だとして──。



 そう思いながら辺りを見渡すと、教会の近くだからか? それとも人通りの多い大通りだからか? 花屋が幾つか点々とあった。



 僕は最初に目に留まった花屋でに入る。



「いらっしゃいませ〜」



 そう言い僕に声をかけてきたのはまだ五……いや六歳? それくらいの年齢の少女だった。



「えっと……フラワースタンドが欲しくて──」



 僕は、花屋なんかも滅多なことでは行かない。だからどう伝えれば良いのか全然解らない。



「フラワースタンドの用途はなんですか?」



 子供特有の活発さを残しつつも、かなりしっかりとした態度で僕に接客する少女。



「えっと──友達のお見舞いの品……って言うのかな? そんな感じで……」



 そんな少女とは対照的に、しどろもどろしながら手振り身振りでなにに使うか? どういう用途で使うかを説明する。



「その人は病気でにゅーいんしてるの?」



「えっ? うん、まぁ……そんな感じかな?」



「ふ〜ん。ならね〜!」



 僕の返事に少女はそう言うとクリザンテーモ(菊)や、リーリエ(百合)、カメリア(椿)なんかは見舞いには向かないことを僕に教えつつ、気になる花を見つけたら声をかけてと言ってくれた。



 僕はそんな少女の言葉に甘え、店内に飾られた花々を見回していると、現実では初めて見る、青いロザルトに目が行った。



 青いロザルトって本当に存在するんだ。そんなことを考えつつもふと、そう言えば以前、占いに連れていかれた時、青いロザルトは〔奇跡〕ってあの人──確か、ヴァールさんが言っていたっけ?



「あのぉ……」



 僕はそんなことを考えながら少女に声をかけ、青いロザルトを指さした。



「あ〜。青のロザルトは、夢が叶う・奇跡・神の祝福っていう花言葉があるけど……。青っていう色が死を連想させるんだよね〜」



 少し困惑気味に眉を下げ、花言葉はとても素敵なのに、色味で損しているよね。なんて苦笑する、



「そう……なんだ、ね」



 僕が歯切れ悪くそう言ったからか、少女は慌てて



「でも花言葉はとても素敵だよね! うん! 色味なんて関係ないと思う! おにーさんがその人を思って選んだ花なんだし!」



 そう後押しするようににこやかな笑みに変え、青いロザルトに合いそうな花々を選んで、小さなフラワースタンドにしてくれた。



 そのあとは、そう言えばクルトからミルクと合う。なんて以前オススメされた紅茶セットをお見舞いの品として購入し、会えるといいな〜。なんて希望を胸に、再度教会へと向かった。

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