-フェルの異変-3P
そんな僕と母さんのすれ違いは続き、
「なに、言ってるのかしら? もしかして、頭でも打ったの……?」
なんて母さんが再度、心配そうに僕を見つめながら頭を撫でてきた。
きっと、僕のことを信じていないのかも……。
僕はそう思いながらも、
「えっ……、だってほら……」
必死に説明を試みる。だけど、母さんは
「普段のフェルちゃんじゃない? リーウィンちゃん、本当にどうしたの? 教会の前で倒れていた。なんて聞いたし、かなり体調が悪いのかしら? お医者様を呼んだほうがいいのかしら……?」
そう言いながら、哀れみを含む瞳で僕を見つめるだけ。
なんで? どうして普通のフェルだって言えるの? そんな疑問を抱き続け──ようやく、僕はなにかがおかしいことに気づいた。
話を整理して見た感じ、もしかすると、母さんには普段通りのフェルにしか見えていないのかもしれない。
可能性として考えられるのは、カルマンの両手に渦巻く禍々しい靄か……脳裏に響いたあの言葉──
だけど、前者じゃない気がする。十中八九、カルマンに宿る神がモルストリアナなのは理解できた。モルストリアナは『死』を象徴する神として忌み嫌われている。
かたや、僕についているのはクトロケシス神……。クトロケシス神は『生』を象徴とし、崇め祭られている。
だから、僕がカルマンの手を握って弾けたのは、その生と死の力が相殺されて……。ということは……。
『そなたの覚悟を受け取った。魂は次の領域へ』
この言葉が僕になんらかの影響を与えてしまったんだと思う。
魂は次の領域へ? それはどういうこと? そう思うけど、全く判らない。
一旦、ここは母さんにさりげなく探りを入れてみるしかない……。僕はそんな結論を出し、母さんにフェルのことをさり気なく聞いてみた。
その答えは、僕の予想通りのもので、
「普段通りのフェルちゃんにしか見えないし、よく解らないわ〜」