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-カルマンの生還、そして新たな問題-2P
「…………ん? ここは……?」
なにがあったのかまるで覚えていないと言わんばかりにか弱い声でつぶやく。
「カル…………マン!? カルマン!!」
僕はカルマンが目を覚ましてくれたことが嬉しくて、胸に込上げる安堵感と共に、涙を浮かべながら抱きつく。
だけど、カルマンは病人でもある。僕はそれを思い出したと同時にハッとし、教会まで一緒に運んでくれる人がいないか探した。
でも、夜の静寂の中に人影なんてない。多分だけど、時間的に二十時は優に超えているはず……。
あ……れ?
そう思いながらもふと空を見上げ僕は驚く。
さっきまで真っ赤に染まっていた月はいつの間にか消えていて、空にはあけぼののようにぼんやりとした、白く寂しげな月だけが浮かんでいた。
あの赤き月はなんだったの? そんな疑問が頭をよぎるけど、答えは見つからない。
僕はなんとも言えない気持ちのまま、もう一度カルマンを見つめ──一瞬だけ、邪念を過ぎらせる。