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-見えない力、自分を信じて-13P
あれ? そういえばカルマンは!? カルマンの存在を思い出したと同時に、視線を走らせる。
カルマンは思ったよりはやく見つけることができたけど、どこか様子が可笑しい……。
理由は解らないけど、宙に舞う大量の花びらと格闘していた。どうしてそんな不毛なことを? 一瞬だけそんな疑問が脳裏を掠める。
だけど、カルマンの鎌の振るい方は、明らかになにかを殺そうとしているように思える。それはまるで、人を切り刻むような動き……。
それに、いくらカルマンが正気じゃないとは言え、花びらを切り刻むなんてそんな効率が悪く、疲弊する方法を選ばないと思う。
考えられるのは、カルマンにしかみえない幻──
幻覚が見える。そんなところかな……?
そう考えると、途端にカルマンが滑稽に見えてきた。
だけどまぁ、目の前にいる敵を攻撃するのは、人間の……野生の本能なのかもしれない。
そんなカルマンを横目に、ふと視界の端に目をやると、黒い獣はいつの間にか飽きたらしい。